【Realistic Pillow】
秋野京



 サルボ。

触れたら壊れてしまうんじゃないかと思った。
だってずっと俺が欲しかった輝きが突然目の前に現れて。
…夢かと思ったんだ。
でも夢じゃなくて。

俺が確かに自由を手に入れた瞬間。
今もこの手に残る感触。
もう一度触れたくて。いや、一度と言わず何度でも。
だから俺なりに作戦を練ってみた…けど結果は見えている。

「この馬鹿猿!」→ハリセン→終了

あ〜あ。八戒だったらこういうの得意そうだよな。

「何らしくもない溜め息なんか吐いてんだ?」
顔を上げると黄金の輝きが目に飛び込んでくる。
「三蔵!」
自然と顔の筋肉が緩むのがよくわかる。
「ホラ、行くぞ」
さり気なく差し出された手。
一瞬よみがえるあの光景。

…どうしていつも三蔵は俺が欲しい物を与えてくれるんだろう。
いつだって。いつだって。
あの時も。あの時も。

「三蔵、大好き」
そっと、聞こえない位小さな声で呟いて
三蔵の手をしっかり握り締める。
俺が求めたモノ。…そう、三蔵が俺の全て。

2001年03月16日(金)
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