【Realistic Pillow】
秋野京



 焔さん救済企画(焔三)

夢を、見た。

「焔…」

俺はそっと奴の名前を呼び、その左手を握り締めた。
あまりに冷え切ったそれは俺の体温全てを奪っていくかの様だ。

あの時お前も俺と同じ気分を味わったのだろうか。
冷たくなった俺の亡骸を抱いて泣いたんだろう、お前は。

霞み掛かった俺の頭の中に一瞬蘇る懐かしい声。
暖かく力強い腕に抱き締められる感触。
きっとそれは全てお前が俺に与えてくれたモノ。
今なら確信できる。
…何もかもが遅すぎたけれど。

お互いの意識がようやく通じ合えた、そんなある一夜。
それさえ幻となって消えていく。

2001年03月28日(水)
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