恋のさじかげん
れのん



 最悪の事態

結局の所、あたしの精神が、ついていかなかったと言うことかな。
いろんな思いを経験しながら、続けてきた不倫ではあったけれど、
あたしは、何も手にしていないのと同じような虚無感にさいなまれている。
本気になりすぎると、
言いたいことも言えなくなってしまうというのは、本当だった。
あたしは、本気になるべきではない恋愛に、本気になって、
そして、案の定、疲れ果てて、朽ちてしまっただけ。
立場が微妙だったからね、言いたいことも、したいと思うことも、わがままも、
言えなくて、それが募って、募りすぎて、あたしは壊れてしまった。
大切にしたかった。
だけど、その恋愛は、
あたしのキャパシティーの全てをいとも簡単に占めてしまうものでもあった。
壊れ物を大切にかかえて、それでもあたしは一生懸命に走ってきたけれど、
それじゃあ、全然追いつかなかったってことかな、、。
好きになりすぎると、相手の顔色ばかりうかがって、
嫌われないようにばっかり考えて、遠慮しすぎになるね。
その結果がこの最悪な事態ってことなんだろうけど。
疲れた。その一言につきるし、二年近くつきあって、
あたしの手元には、彼を匂わすものは全くといってもよいほど、残らなかった。
プレゼントをされたこともないし、したこともない。
写真一枚残らない関係って、どんなの?
言いたいことも言えないなんて、あたしらしくもなかった。
あたしらしくもない恋愛をして、結局破綻したのだから、当たり前だと言えるし、あきらめもつくだろうって思う。
彼は、あたしが思っていた以上に、優しくも、思慮深くもなくて、
あたしの空回りの愛情ばかりで、重苦しかったのではないかな、、、
って思ったり。
とりあえず、不倫はおしまい。
そして、あたしはフリーなのだけれど、もう、
男の人とつき合うような余力は残っていない。
どうせなら、一生独身でも構わないぐらい。
恋愛は疲れる。そして、不倫は身を滅ぼす。ただそのことが実証できただけ。

2000年01月03日(月)



 ひとりきり

クリスチャンじゃないから、クリスマスなんて関係ないのかもしれない。
家族のある人とつきあっているから、連絡がないことにも、
我慢しなきゃいけないのかもしれない。
だけど、あたしはどうしても割り切れなくて、思い切れなくて、
それはそれは切なくて、苦しい。
つきあい始めて、1年と10ヶ月。
二度目のクリスマスも、二度の誕生日も、
電話の一本も無いなんて、ひどくない?
普通の恋人同士なら、誰の目も気にしないで出かけられたり、
プレゼント選びに頭を悩ませたり、
デートの時の洋服選びに精を出したり、、、。
そういった普通のことが普通じゃなくて、
切なさばかり募らせていく恋愛なんて、ちっとも健康的じゃない。
普通の、恋愛がしたい。
あたしだけの恋人が欲しい。
誰にも、とがめられたり、後ろめたい思いをしなくてもいい、
恋愛がしたい。

2000年12月25日(月)



 電話

出ないつもりだった。
ビデオを見ていたし、両親も一緒だったし。
だけど、着信音が彼であることを知らせているのを耳にしたら、
昼間、あたしが悩んでいたことも、思い切ろうとしたことも、、、全部、
どうでも良くなってしまっていた。
というか、電話を取ることが当たり前の選択で、
それ以外の行動なんて無いぐらいの自然さだった。
「年始、どうしてる?」
いきなりの言葉。「メリークリスマス」ではなく、「年始の予定伺い」。
「年始は、、、特に予定はないよ。(クリスマスだって空けていたのに)」
声には、不満がいっぱいたまっていたと思う。
それを出さないように、声が聞けたうれしさを隠すように、言葉を綴った。
「どっか、行こうか。久々だし。」
その言葉が、あたしを救ったのか、単にその場だけの幸せになったのか、
ともかく、あたしの頭をもたげていた暗雲は晴れたと言うこと。。。
一緒に出かけられる。一日だけでも、独占できる。
そういう思いよりも、とっさによぎった感情は、
「忘れられていなかった」という安堵感だった。
愛されている実感がない時、自分に自信がないとき、
人は誰かにその存在を忘れずに認めていて欲しいと思うのだろう。
ほんの一瞬思いだしてもらえるだけでも、幸せだって思えるぐらいに。。。。
おわらせなきゃいけない。おしまいの音は、もう、聞こえているはずなのに。。。

2000年12月26日(火)



 大晦日と元旦

不倫の恋愛において、日曜日だとか、クリスマス、年末年始、お盆は、
あえなくて当たり前の日。
我慢するのは毒だから、考えないように一日をやり過ごすという技を覚えてから、
あたしはずいぶんと、自分を救うことができていたように思う。
けど、この大晦日と、元旦は違っていた。
彼に、会えた。
彼の妻と、子供は、妻の親元に行ってしまったのだろうと思った。
前も、そうだったから。
彼にとっては、どんなお祭りも、どんなイベントも意味がない。
彼自身に関わってくることでなければ、
彼はその存在意義を見いだそうとしないから。
昨日の大晦日、いつものようにデートした。
いつものホテルに、当たり前のように入り、抱き合う。
そして、そのまま熟睡したり、映画を見たり、おしゃべりしたり。。。
今日の元旦、彼と岡山の温泉宿に出かける。
旅館の予約も、旅行のお誘いも彼から。
うれしくてたまらない。
いずれ無くしてしまう恋だとしても、
今が良ければ良いって思ってるわけじゃないけど、
彼を愛している今、彼と一緒にいられる今を大切にしたいって思う。。。

2001年01月01日(月)



 言えなかった言葉

哀しいばかりで、泣き通し。
何が哀しいのか、分からない。
だけど、はっきりと言えるのは、
あたしは、思っていることのほんの1パーセントも言えなかったと言うこと。
例えば、旅行の最中に本に読みふける彼に、どうして、
「一緒に居る時間はそう多くないんだから、一緒に何かをしよう。」
と、言えなかったのか。
チャイルドシートが見えるところに置いてあるのを見て、
「あたしと会うときは、こういうものを見えるところに置いておかないでよ。」
とか、、、、。
寝不足で車の中で眠ってしまう彼に、
「帰れるようになるまで、待っててあげるよ。」
仕事の電話がかかってきて、早々に引き上げることになったときに、
「仕事なら、仕方ないね。気をつけて帰ってね。」とか。。。
そういう後悔ばかりが募って、嫌われてしまっただろうことを思って、
泣いてばかり。。。
彼との未来がないことだって、分かっていたし、
彼しか見てこなかったせいで、人生に取り残されつつある不安が残るし、
彼が求めて居たのは、体だけだったのかな、、、
なんて自分の存在価値を軽んじてしまったり。。。。
拒絶されることが怖くて、嫌われるのが怖くて、
あたしは、自我を通すことも、無理を言うことも無くて、
彼の望むこと、できることなら何でもかなえたいって思ってた。
結局、それがあだになってしまったのだろうけど、
あたしがしたことって、そんなにいけないことだったのだろうかって、
思ってしまう。
あたしは、ちっとも悪くないなんて言うつもりはない。
だけど、少しぐらいは、分かって欲しかった。
結局は、言葉を介さないと人間は分かり合えないのかな。。。
とても虚しくて、とてもあたしは、孤独なのです。。。

2001年01月04日(木)



 二つの選択

いろいろと、落ち込んだりもしたけれど、
まだ、落ち込んでいるけれど、
あたし自身が、意気地なしの弱虫になってしまったことは、
確かなことのよう。
これまでは、何とかして修復させていたのだろうけど、
もう、それができなくなってしまった。
一歩踏み出すことが、できなくなってしまったのだ。
電話の一本も、Qの一言も、メールの一通も、、、送れない。。。
今選択すべきは、
①この関係をどうにか続けるとして、傷つく道か、
②この関係を終わりにして、彼を失った痛みに耐える道。
このまま、終わりになってしまっても、いいのかな、、と自分に問う。
愛することは切なくて、我慢の連続で、堪え忍ぶ日々。
諦めることは切なくて、自分の思いから解放される喜びと、失意の日々。
どちらを選ぶこともできないあたしは、
まだ、彼を愛していると言うことになるのかな。。。


2001年01月07日(日)



 「さよなら」すら言えない。

一人で哀しい思いにさいなまれるのは、
もう、おしまいにしようと思う。
携帯電話の着信履歴が気になったり、
ネットを繋げては彼のICQが立ち上がるのを待ったり、
あり得ないことと知りつつも、メールチェックをしたり。
恋は終わってしまった。
それも、自分から、自分すら気がつかないうちに、
体ではなく、唇から先に、彼に別れを告げていたのだ。
キスを全くしなくなっていたわけではないけれど、
セックスに熱を上げるのに夢中で、あたし達はキスを忘れてしまっていたぐらい。
「キスは好きな人としかしない。唇には信実が宿るから、ね。」
そう信じてやまなかったあたしは、今になって自分の信念の残酷さを知る。
会いたいときに会えないと言えない人、
声を聞きたいときに、電話すらできない人、
言いたいことすら、遠慮して言えない人、
思い出になるプレゼントの一つも、
写真の一枚も、残らなかった人、
そして、あたしが一番愛した人。
どんなに、なおざりにされても、
どんなに、都合良くあしらわれていると客観視できても、
それでも、愛し続けた人。
もう、さよならと言うことすらできないぐらい、
遠くへ隔たってしまった人。
不倫は、毒のある恋愛だと言った作家がいたけれど、
その人はこうも言った。
不倫は、純愛である、と。
二年がかりの毒のある純愛は、やっぱり、、、、定石どおりに終わるようです。
あたしは、また、違う人と出会って、キスができるのだろうか、
あたしは、彼を、恨まないで生きていけるだろうか、
彼は、あたしを一瞬でも愛していたのだろうか、、、、。
答えのない問いばかりくり返して、途方に暮れるばかり。



2001年01月10日(水)
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