オミズの花道
old day    days list    new day

『羨望と嫉妬・蓮を描く先人へ』
2002年12月16日(月)


知り合いのライターが近しい人物を描いている。
もうそれは随分前からになるのだけれど・・・・。


ライターは彼を文中において、 
『 蓮は泥水の中に美しい花を咲かせる 』
そう表現した。

この時涙が出るほど嬉しかったのを覚えている。


あの時私は何に対して嬉しかったのだろう。
書いた人間にか?
書かれた人間にか?
今でもそれは良く解らないままだ。




彼がその人生を商業誌に描かれる、と聞いたとき、
あんなデカイ素材を書ける奴なんているだろうか、そんな風に思った。

それほどに大きい要素を持つこの人物は、
物書きの立場から言うと諸刃の剣になりかねない。


私自身いつか描いてみたい素材ではあるのだが、
彼の人生の深さに触れるたび自信が無くなって気後れしてしまう。



だが、連載ももうすぐ二年目を迎える。

当初は1年程で終了の予定だったのだが、
やはり素材の大きさか(笑)終了は延ばし延ばしになってしまったらしい。


『もうね、削る言葉が見つからないんですよ。
 余りにも人生が濃くて、人間が深すぎて。
 編集に泣き付いて無理やり書かせて貰ってるんです。』
人懐こい笑顔でライターの彼は私に言う。


・・・・いや、違うな。やはり素材の良さと腕だろう。

商業ベースに載るものは、そんなに甘い物では通らないと云う事を、
同じフィールドに置かれている立場で、私が、私こそが、身に染みている。
泣き付いて書かせて貰えるなど、この世界には存在しない。




とても羨ましく思う。
同じ素材を目にしながら、書ける彼と、書ききれない私。

いつか私も書けるだろうか・・・・。



そう思いながら、心からおめでとうを呟いて今月号を閉じる。




面と向かって言うのはまだ先のこと。


本当のおめでとうは、
彼が蓮の男を描ききったその時なのだから。
old day    days list    new day

mail    home    photodiary







Design by shie*DeliEro
Photo by*Cinnamon


88652+