無責任賛歌
日記の表紙へ昨日の日記明日の日記




ホームページプロフィール掲示板「トーキング・ヘッド」メール
藤原敬之(ふじわら・けいし)

↑エンピツ投票ボタン(押すとコメントが変わります)
My追加


2003年03月02日(日) 東京遁走曲/『明日のナージャ』第5話

 ホテルの朝は早い。
 本当は、昼近くまでたっぷり眠るつもりではあったのである。何たって、今日はオフ会に、更には舞台観劇も控えている。体力を温存しておかねば、途中でぶっ倒れかねない。
 ところが、夕べエレベーターに乗ったときに、このホテルの朝食がバイキング形式だと書いてあるポスターを見て気が変わった。ホテルの醍醐味はバイキングである。誰もそんなこと決めちゃいないだろうが、我々夫婦の間ではそうなっているのだ。
 7時に合わせておいた枕もとの時計のベルが鳴ると同時に飛び起きる。
 いつもはこんな朝早くだと、布団にくるまったまま「ふにゃふにゃ、まだ○□♪×▽♯○@☆※♂♀∞¥とよ」とか、ワケの分らぬことを呟くしげが、シャキーン!と目を覚ます。今日食うメシにも事欠く生活から脱却してもう10年以上が経つだろうに、未だに「メシだぞ!」のヒトコトに釣られてしまうというのは滑稽だけれど悲しいよなあ。昔のテレビコントやギャグマンガじゃ、頻繁にこのギャグが使われてたものだけれど、今はとんと見かけなくなった。ギャグ自体が古くなったってこともあるだろうけれど、生活習慣が変わっちゃったってことも理由として大きいよなって思う。
 未だにこういうギャグを体現しているしげは、生ける化石のような存在かもしれない(^o^)。

 バイキングと言っても、朝食だから大して種類は多くないかも、と思ったらさにあらず。パンやらご飯やら卵焼きやらハムやら味噌汁やらスープやら、普通の朝食だけじゃなく、ピラフにスパゲティにカレーライス、なんだか殆ど昼食メニューと言ってもいいくらい、種類がある。皿に一通り取っていったら溢れそうだ。
 しげに、「昼はたっぷり食べることになると思うから控えようよ」と声をかけ、二人で頷きあったのだが、気がついたら二人ともふた皿目を取りに回っている。今し方、相談したのは何だったんだ。
 考えてみたら、朝食を控え目にするつもりなら、最初からバイキングになど来なければよいのである。ホテルなんかに泊まりつけていない庶民なものだから、ついつい、「ホテルにあるものは全部経験しよう」とか考えちゃうのだな。

 部屋に戻って、朝風呂。
 風呂を一回使うだけじゃもったいないなんて考えるのも貧乏症な証拠である。
 昨日、コンビニで買ってきたお茶を飲みながら、テレビで『アバレンジャー』
『仮面ライダー555』『明日のナージャ』などを立て続けに見る。
 『ナージャ』は第5話「星の夜・二人だけのワルツ」。ストーリーについては、1話を見て、シリーズ構成が金春智子さんと知った段階でゲンナリしちゃってるので、もうツッコミを入れる気もない。まあ、オトメのひとりよがりな夢物語しか書かないヒトである。
 細田守演出がその他愛ない物語をどれだけカバーするかってところが興味のポイントだったが、特に誉めたたえるほどではない。
 屋外で踊るナージャとフランシスを、乱舞する花の流れに乗せ、一気に舞踏会場に雪崩れこませて宙を舞わせる演出はハデだが、こういう演出、最近はさんざん『プリンセスチュチュ』で見てるから、それほどインパクトは強くない。踊るはずのないものが踊る、宙を行くはずのないものが飛ぶ、というファンタジックな演出は、実は『赤毛のアン』『セロ弾きのゴーシュ』『じゃりん子チエ』『おもひでぽろぽろ』などで高畑勲が得意としていた手法だ。そういうことも思い合わせると、細田演出もやや意外性に乏しい。まあ、脚本が陳腐だと、演出でなんとかするって言っても限界があるってことだろう。
 作画についても、当初はできるだけ『どれみ』と差別化しようとしていたように見えていたが、なんだか脇キャラの表情の動かし方なんかが、段々とどれみっぽくなってきている。「どれみもどき」じゃしゃあないよなあ。ダンスのCGは動きが機械的過ぎて見苦しいばかり。早いうちにテコ入れしないと、1年間続けるのって苦しくないだろうか。

 こうたろう君から電話が入って、「ゆっくり寝られたかい」と気遣ってくれたのはいいのだが、次のセリフが「『ナージャ』は見たかい。細田演出はどうだった?」。重度だなあ(^_^;)。
 待ち合わせは11時だけれど、早めに来てくれるとのこと。場所は実はハチ公前なのだが、なにしろ私が渋谷に来るのも20年ぶりである。しげは確か、何年か前に来ていたはずだが、一度来たきりの街の様子など、あのしげが覚えているはずがない。念のため、こうたろう君に案内してもらったほうが安心である。
 と思っていたら、こうたろう君も「渋谷になんかもう何年も来てねえよ」とのこと。うーん、ちゃんとすれ違わずにヨナさんたちと会えるのだろうか。

 11時ぴったりにハチ公前に。
 忠犬ハチ公のエピソードを知らない若い人も今どきゃゴマンといるが、さすがにこんなことの解説までする気はないので、自分で調べなさい。
 私がハチ公を見ながら考えていたのは、「そうかそうか、『ガメラ3』の炎はこの角度で来たんだな」ということだけである。いや、ツイやっちゃうってのがやっぱり重度なのであるよ。
 しかし、なんとまあ、待ち合わせの人間の多いことか。こうたろう君が、「大学のころも一度だけ渋谷のハチ公前で待ち合わせたよなあ。あれ、なんで集まったんだっけ?」と聞いてくるけれど、待ち会わせしたこと自体は覚えていても、目的はもう記憶のはるか彼方である。でもどうせ、映画を見るとか映画を見るとか映画を見るとかだったに違いない。アウトドアなことは一切しなかったし、レジャーとかナンパとか合コンとかカメラ小僧とかアイドルの追っかけとか、全然そんなものに縁のない大学生活だったのである。
 でも、本と映画と芝居さえあれば、ほかに何も要らないよな。

 こちらがヨナさんたちを見つける前に、ヨナさんがこちらを見つけてくれる。
 久しぶりの邂逅だけれど、こないだとヨナさん、ちょっと印象が違うな、と思ったのは、前回はヨナさん、無精ヒゲを生やしていたのだった。
 今日、ツルンとしたお顔を拝見していると、ヨナさん、何となくゆうきまさみに似ているように見える。と言っても、顔立ちというよりは、どこかスンナリとしている雰囲気がであるが。もっとも生のゆうきさんもトークショーなんかで二回ほどしか見たことがないので、ウロオボエの記憶の印象でしかない。
 あやめさんはチャットでお話していた通り、和服でのご推参である。勝手に振袖か何かを想像していたのだが、考えてみたらそんなことがあるわけないのであった。「ここに来るまでにいろんな人に振り返られちゃったんですよ」と恥ずかしげに仰るが、ここでつい、「それは着物のせいじゃなくて、あやめさん御本人にじゃないですか」と口走りそうになって、慌てて口を抑える。
 いくら私が物怖じしないタイプ(←要するに「厚かましい」ということだな)だとは言え、さすがにヨナさんとしげの目の前でそんなことを口走って、生きて帰れる保障はないということに気づいたのであった(^_^;)。
 こんなことを書いてるからと言って、私が手当たり次第だなどと思わないで頂きたい。こう見えても私は、昔からシャイで引っ込み思案で通ってるのである。誰に通ってるのかは不明だが。

 まずは、腹ごしらえ、ということで、ヨナさんの案内で しゃぶしゃぶの食べ放題の店に向かう。
 街中を歩いていると、何となく既視感を覚える。
 実は前世で私は「渋谷のプリンス」と呼ばれた雀卓の騎士であった、などということは全くなくて、街並みが博多の中洲によく似ているのである。妙に道が蛇行しているのに、建ってるビルは道から張り出さずに整然と並んでいる。一見、行儀よく見えるけれども何だか居心地の悪い繁華街、という矛盾した感じが中洲っぽいのだ。あまり誉めてる表現ではないから渋谷の人は気に入らないかもしれないが。しげにも「中洲に似てない?」と聞いたら、「ああ、似てる」と納得してたから、私だけの感覚ではないようだ。

 とあるビルの中に案内されるが、そのお店、開店が11時半からであった。ほかにうろつくところとてないので、そのビルの地階のゲームコーナーを見て回る。こうたろう君からUFOキャッチャーで、ぬいぐるみを取ってくれと頼まれるが、アームを見てみるとネジが緩められているのが分る。ムリだろうなと思いながら挑戦してみるがやっぱりアウト。ゲーセンも最近はこういうセコイところが多い。
 ガチャガチャで「オデン」だの「スシ」だの、なんでこんなものを、と首を捻るようなモノをうっているが、さすがにこういうのを土産に買って帰っても、喜んでくれそうな人がいない。自分の趣味で買ったら、またしげにどやしつけられそうなので、泣く泣く諦める(欲しかったんかい)。

 ようやく開店時間、お店の人から「焼肉にするかしゃぶしゃぶにするか」と聞かれて、しげ、「しゃぶ!」と大声をあげる。それはモノが違うぞ(-_-;)。
 食べ放題と言っても、時間制限があるので、ともかく次から次へと頼まねばならない。こういうときのしげはもう、普段のトロくささがウソのように機敏になる。さりげなく時計を見て計ってみたが、ひと皿平らげて次の皿を注文するのに5分38秒しかかけなかった。それで味が分るのか。
 ウェイトレスさんが追加注文を受けながら、「ハーフサイズも注文できますが」と言うと、すかさずしげ、「あ、普通盛りで♪」とキャラリンっとした声で答える。けれど、ウェイトレスさんが下がった途端に、声のトーンを低くし、ドスの効いた声で、「今のは『これ以上食うな』ってことかな」と呟く。目も当然座っているのである。
 日記の中でさんざんしげのことを「肉食い」(レクターか)と評ししてきたが、もしかしたらそれを「誇張」と見る向きもあったかもしれない。しかし、それがカリカチュアでもなくギャグでもないことを目の当たりにされた今、ヨナさんもあやめさんもきっと感動のメエル・シュトレエムに飲み込まれたことであろう。私はウソは申しません(^o^)。
 感動ついでに、しげに、携帯に入れてある例の48センチタライチョコの画像を見せるように促す。ヨナさん、あやめさん、ともども大いに受ける。
 あやめさんなどは、「これが一番のお土産ね♪」と喜んだだけならまだしも、来年はどんなのを作ったらいいか、しげにレクチャーし始める。話の内容は、実際に来年、しげが作る可能性もあるからここでは書かずにおくが、まあ、そんなもん贈られたらすっごくや~な気分になりそうなアイデアが次から次へ。なんですかね、美人がサラリと毒吐いてる姿って、なんか横溝映画を生で見てるみたいな迫力で、何と申し上げたらよいのやら((((/*0*;)/。いやあ、戦慄戦慄。
 しげ、あやめさんの話をふんふんと頷いて聞いている。でもさあ、面白がるのはいいけどさあ、食わされるのは其ノ他君なんだけど、誰も彼に同情しないの?(^_^;)

 食い放題の時間が過ぎたので、カラオケハウスに移動。
 今回は特にアニソンシバリはなし、ということで、めいめい勝手に歌ってもいいよ、ということだったのだが、いきなりこうたろう君が『オレンジのダンシング』を歌う。ここはコケるところね(^o^)。
 「これでオレは本望だ」って、そこまでのトラウマが何かあったのか(^_^;)。
 ヨナさんが山本正之をメドレーのように歌ってくれるので、しげは上機嫌である。ヨナさん、声質もちょっと山本さんに似ているので、雰囲気が出るのだ。でも、『やあ。』がカタログの中に入ってなかったのがちょっと残念。
 あやめさんには以前『夜来香』をリクエストしていたのだが、忘れずに歌ってもらえて感動。ここで5万語ほどかけてその歌声がいかにすばらしかったかを書いてもいいのだが、明日、私が油山の林道の脇の土塊の下に埋められる危険もあるので省略。

 1時間ほどして、あぐにさんから連絡が入る。
 渋谷駅まであやめさんに迎えに行ってもらって、かけつけ3杯ならぬかけつけカラオケ(^o^)。
 事情があって朝からは合流できなかったのだが、カラオケだけにムリヤリ参加させてしまったってのもヒドイ話である。全く申し訳ない。
 ここんとこしばらく、掲示板の方であぐにさんにはSF作品をいろいろお勧めしていたのだが、こうたろう君が約束していた『SF総解説』をプレゼント。これでもう私の拙いガイドなどはもう不必要である。
 作品の書評くらい、その人の才能が現れるものはない。実のところ、その作品を貶すことはとても簡単である。欠点のない作品などはありえないし、揚げ足取りでも一応、批評という体裁は取れる。
 ところが、その作品の本質を的確に捉え、単なるストーリーの紹介に堕せず、しかも購読欲をそそるようにその魅力を語るというのは、並大抵の技量でできることではない。「これ以上は語れない、あとは作品を実際に読んでくれ」とシメることが多いのは、正直な話、逃げているのである。
 だって、その作品のすばらしさを一番伝えられるのは、その作品そのものなんだから。

 それでもあぐにさん、私の拙い文章を参考に、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』を読まれたとのこと。「ああいう終わり方をするとは思ってなかったんで……」と微笑まれる。実際、掲示板で私が紹介した作品は、私のヘボな文では語り尽くせぬほどにすばらしい傑作揃いなのである。
 あれは一応、あぐにさん向けに紹介したものばかりだが、もし未読の方がおられたら、実際に手に取って読んでいただきたい。
 『火星』を楽しんでいただけたようなので、私も気持ちがウキウキしてくる。でも、次にあぐにさんが食らわしてくれたパンチが思いっきりキツかった。
 「『幼年期の終わり』も買いました♪」
 ……あああ、そんな禁句を( ̄□ ̄;)。
 そうなのである。掲示板にも書いたが、私はまだアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』を未読なままなのである。解説本を読んで中身を知ってるだけなのに、いかにも読んだことがあるような顔をしてSFファンのフリをしている薄汚い野郎なのである。
 そこから読まれてしまったら、私は泣くしかないのである(T∇T)。
 こんな若さで、人の弱点を正確に突く術をあぐにさんは身につけているのである。なんという天稟。末恐ろしいとはこのことであろう。さて、どういう末に向かってるのか(~_~;)。

 アニソンしばりをかけなかったおかげで、外国曲まで混じってくる。
 しげが、“Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)”なんてのを歌い出したものだから、こうたろう君、「オヤジ世代直撃だねえ」とビックリする。なあに、しげはダン・エイクロイド主演の『コーンヘッズ』でこの曲が使われてるから、何度も聞いて覚えちゃってるだけなのだ。
 だから、しげが聞いていたのは、オリジナルのフランキー・ヴァリ版ではなくて、a-haのモートン・ハルケット版の方。でも、そのことを抜きにしても、50年代、60年代のオールディーズ、名曲が多かったよなあ。ダンがらみであっても、こういう曲をしげが好きになってくれるのは嬉しいのである。
 だって、泣けるじゃん。

 芝居の時間が迫ってきたので、最後はヨナさんの『シビビーン・ラプソディー』でシメ。
 カラオケの様子は記念にとビデオカメラで撮ったのだが、しげがこういうのをいやがるのであまり連続しては撮れず。私を撮るのは喜んでするくせに、不公平なのである。

 カラオケハウスを出て、あぐにさんとはここでお別れ。ホントにカラオケをしに来ただけであった(~_~;)。また機会がありましたら、ゆっくりと落ちついた店などでお話しなどいたしましょう。

 ヨナさんに案内して貰って、舞台『奇跡の人』の公演のあるBunkamuraまで移動。私の大学時代にはまだなかった劇場である。NHKの劇場公演ではやたらと「Bunkamuraシアターコクーン」と表示が出るので、一度来てみたかったのである。
 でも、「村」っていうから、広大なトチにポツポツと劇場が建ってるのかなあ、と思ったら、ただのドデカイビルなのであった。いや、別に腹が立ったわけじゃないけどね。
 開場時間まで、どこか喫茶店でひと休み、と思ったのだが、残念ながら休日の渋谷はどこも満杯なのであった。名残惜しいが、ヨナさんあやめさんともここでお別れ。
 ……しまった! あやめさんのコスプレ写真、見せてもらうの忘れてた!
 次のときに頼みます(^_^;)。


 またまた枚数オーバーしたので、『奇跡の人』観劇記はまた明日。

2002年03月02日(土) イビツな職場だと思うぞ、実際/『ビートたけしドラマスペシャル 張込み』/『真・無責任艦長タイラー⑥ 凱旋編』(吉岡平)ほか
2001年03月02日(金) あっいぃ、うー、えぇおー♪/『ドラゴン株式会社』(新谷かおる)ほか



↑エンピツ投票ボタン
日記の表紙へ昨日の日記明日の日記

☆劇団メンバー日記リンク☆


藤原敬之(ふじわら・けいし)