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気になる過去形 - 2001年08月20日(月) たとえば、コンビニで肉まんと冷たいウーロン茶を買ったとき。 「袋、ご一緒でよろしかったですか?」 ・・・へ? まだ袋に入れてないのに、過去形? たとえば、レストランの入り口で、テーブルに案内されるとき。 「お食事でよろしかったですか」 ・・・む! まだ何も食べてないのに過去形? この過去形を使った問いかけは、昨年、京都ですごく気になった言い回しだった。 関西弁とか、イントネーションの違いは別に気にならないけれど、この妙な過去形だけは、どうしても引っ掛かってしまう。 京都の言葉なのかな? と思って、引っ越した当初、兵庫に住んでいる知人に尋ねてみたら、そのあたりでも使われているとのこと。 首都圏では聞いたことがなかったので、はじめのうちはいちいち気になっていたが、たぶん関西弁の一種なのだろうと、いいかげんに納得して、そのうち慣れてしまった。 そして半月ほど前、娘と2人でケンタッキーフライドチキンのドライブ・スルーを利用したときのこと。 「ご注文は****でよろしかったですか?」 むみゅう? このフレーズは・・・! 懐かしき京都の響きではないか。 かねてから、この過去形についてひそかに語ってきた私たちは、思わず顔を見合わせた。 「聞いた?」 「うん」 「過去形!」 「だったよね」 「あの子、関西出身なのかな?」 「そうかもね」 な〜んてことがあって数日前、今度も娘と2人、ケンタに入ったときのこと。 カウンターで注文を受けてくれたアルバイトさんは、娘の知り合いだった。 「以上でよろしかったですか?」 びっくり。 「ねぇ、今、“かった”って言ったよね」 「でも、あの子、中学の同級生だから、生粋の関東人だよ」 「そ、そうなの?」 「ケンタのマニュアルが過去形を採用したってことかな?」 「まさか・・・」 というわけで一昨日、都内在住・在勤の若い女性のUさんに、この過去形のことを聞いてみた。 すると、Uさんはその過去形は当たり前のことと認識されているという。 びっくり。 私が方言の一種として認知していた過去形は、もしかして“ら抜き言葉”のような、新しい日本語なのだろうか。 若い人の間では、すでに“標準語”として用いられ、徐々に定着しているのだろうか。 私は“正しい日本語”とか“日本語の乱れ”とかにこだわるタイプではないので、世につれ人につれて言葉が変わるなら、それはそれでいいのだけれど、だとすれば、この過去形の用法については、なんとなく誕生に立ち会っている気分になる。 そして、この現象を見るかぎり、流行の先端は西にあり、という仮説が立てられるかもしれない。 私の経験から類推すると、謎の過去形は、明らかに西から東へと勢力を拡大してきている。 もしかして、はじめに“ら”を抜いたのも、千年の古都、京都のワカモノだったのか?? 先日、新聞で見かけたのだが、五木寛之が日本の都市について書いた著作の広告に、「京都は前衛都市」というような見出しがついていた記憶がある。 日本語の研究をされている皆さ〜ん、もしかしたら、これで一つ論文が書けるかもしれませんよ〜。 まだ誰も書いていなかったら、早いもの勝ちですよ〜! なんちゃって、それほど騒ぐようなことじゃない。 でも・・・、ちょっと気になる過去形なんだよなぁ。 ...
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