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ZS日記 「 海 」-14・・・・・tako - 2005年01月04日(火)
次に来ると思った衝撃は、落下の途中で吸収され ぎゅっと瞑った眼を開いた時、目の前にはゾロの白いシャツがあった。 「危ねぇじゃねぇか」 すぐに放されると思った腕に力がこもり、頭は熱い胸に押しつけられた。 何故ココにいる? 何故俺を抱いてる? 何故… 海…そうだ、ここ海の部屋じゃん! 「離せ」身じろぎして熱い腕から離れようとすると 「…ンだよ、助けてやったのに随分な言い草だな?」 可笑しそうに喉を鳴らしながら耳元で笑うゾロ。 無理矢理身体を引き剥がし、視線をベッドの方に投げると、 少年は小さな寝息を立てていた。
ほぅ…っと身体の力が抜ける。 確かにあのまま落ちてたら捻挫か打撲か、悪けりゃ骨折… 「悪りぃ、さんきゅな」 胸を、とん と突いて照れ隠しに笑えば、 何か言いたげにゾロの口元が動いたが、やがてその視線は 宙ぶらりんになったままの、壁の絵に移っていった。 ほんの数センチ。身長はさほど変わらないのに、リーチの差か… 倒れた海の椅子を退けて腕を伸ばしたゾロが、フレームのバランスをとる。 「こんなもんだろ?」 振り返った瞳はいつもより暗い鳶色。 頷きで返した視線を捕えられて、居たたまれなくなる。 そんな眼で見るな… 何か言わなきゃ。え…っと… 「メシ、なんか作ってやる。キッチン借りるぜ?」 言い捨てて部屋を出る。 上手く言えたよな? クソッ、静まれ心臓!
海の部屋にゾロを残しキッチンへ戻ると、先刻箱から出したカップが、 ブルーとグリーン、2つのマグと一緒に洗い桶に浸かっている。 「サンジの…」海はそう言った。 何故? 2度と足を踏み入れることはないと思っていたこの家に 偶然のなりゆきで立ち寄っただけの俺、専用のカップ。 俺も、カップも、此処には要らねぇじゃん?
海が強請ったのだろう、とは思う。 子どもの考えることは突飛で、抱きしめたいほど可愛らしくもあるが、 時に残酷だ。それに同意したゾロ、俺に期待を抱かせんな。 想いを通じた女性が居るなら、その腕で俺を抱くなよ。 あんな眼で、俺を見んな…
海の部屋から携帯の着メロが微かに聞こえる。 あれはさっき聴いた、ナミさんの。 メシ食ったら帰ろう。長居は無用だ。 たくさんの「何故」を考えるのはもう止める。 全部頭から追い出した筈だったのに、また振り出しだ。
海が目覚めたのか、途切れ途切れに話し声がする。
「おい、メシ出来たぜ?」 精一杯の明るい声が出た、と思う。 テーブルに3つのマグカップが並ぶのは、これが最初で最後。 焼き付けておこう。眼に、頭に、心に。
「海」了
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..........Main Contents..........
リーマンZS日記
『世界で一つだけの…』
Ⅰ「タックル」1~8
Ⅱ「25時」 1~12
Ⅲ「 海 」 1~14
Ⅳ..writing now..
............................................
たまに海賊
雑記・SSS・SPも?
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kisaragi & tako
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