縁側日記 林帯刀 |
2005年06月11日(土) 制動手。 | ||||
君は車を走らせている。 幹線道路は車が多いけれど、 渋滞はしていない。 君は白い軽自動車を追い越す。 右側をバイクがすり抜けていく。 交差点で左に曲がり、 少し走ったところでスピードががくんと落ちる。 車は止まってしまう。 ブレーキをかけたわけでもないのに。 君は眉をしかめる。 あるいは舌打ちをする。 ガソリンの針はEMPTY。 給油を促すランプが点いている。 気がつかないのなら、 いっそ誰かが教えてくれればよかったのだ。 そうすれば迷わずガソリンスタンドに入っていた。 こんなところで、ガス欠になるまで、 どうして気がつかなかったんだろう。 走りすぎた君にブレーキをかける誰か。 あるいはブレーキそのもの。 君は携帯電話を取り出す。 とりあえず連絡をいれなければ。 遅れます、ええ、ちょっと渋滞してまして。 「ガス欠で」なんて言わない。 * 走りすぎた私にブレーキをかける誰か。 あるいはブレーキそのもの。 それが必要かもしれない。 いつも走りすぎてしまう私の、 体と思考に「待った」をかける誰かが。 * 柿の花が落ちる。 雨のような音がする。 * 書きたいことがいくつもあって、 そのときは覚えているんだけど、 これでもかってぐらい覚えておくんだけど、 送信ボタンを押した後、 ちょっとぼんやりすると忘れ物を思い出す。 抜け落ちた手紙はもうきみのところに届いている。 いつもそうだ。 でも、完全な手紙は手紙とは言わない。 ちゃんと「あそび」があったほうがいい。 * 梅雨入りしたね。 季節感が重要事項の縁側日記としては、 ぜひ昨日書きたかった。 でもほら、システム担当ですから。 * 美空ひばりはやっぱり歌がうまい。 * たとえば、桐の木は花を咲かせるということ。 栗の花のにおい。 スズメが歩道に落ちているわけ。 胡桃の実が青いこと。 そういうことを知っているだろうか。 |
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