縁側日記  林帯刀





2005年06月11日(土)  制動手。


君は車を走らせている。
幹線道路は車が多いけれど、
渋滞はしていない。
君は白い軽自動車を追い越す。
右側をバイクがすり抜けていく。
交差点で左に曲がり、
少し走ったところでスピードががくんと落ちる。
車は止まってしまう。
ブレーキをかけたわけでもないのに。
君は眉をしかめる。
あるいは舌打ちをする。
ガソリンの針はEMPTY。
給油を促すランプが点いている。

気がつかないのなら、
いっそ誰かが教えてくれればよかったのだ。
そうすれば迷わずガソリンスタンドに入っていた。
こんなところで、ガス欠になるまで、
どうして気がつかなかったんだろう。
走りすぎた君にブレーキをかける誰か。
あるいはブレーキそのもの。
君は携帯電話を取り出す。
とりあえず連絡をいれなければ。
遅れます、ええ、ちょっと渋滞してまして。
「ガス欠で」なんて言わない。





走りすぎた私にブレーキをかける誰か。
あるいはブレーキそのもの。
それが必要かもしれない。
いつも走りすぎてしまう私の、
体と思考に「待った」をかける誰かが。





柿の花が落ちる。
雨のような音がする。





書きたいことがいくつもあって、
そのときは覚えているんだけど、
これでもかってぐらい覚えておくんだけど、
送信ボタンを押した後、
ちょっとぼんやりすると忘れ物を思い出す。
抜け落ちた手紙はもうきみのところに届いている。
いつもそうだ。

でも、完全な手紙は手紙とは言わない。
ちゃんと「あそび」があったほうがいい。





梅雨入りしたね。
季節感が重要事項の縁側日記としては、
ぜひ昨日書きたかった。
でもほら、システム担当ですから。





美空ひばりはやっぱり歌がうまい。





たとえば、桐の木は花を咲かせるということ。
栗の花のにおい。
スズメが歩道に落ちているわけ。
胡桃の実が青いこと。
そういうことを知っているだろうか。




<< >>




My追加
[HOME] [MAIL]