僕が小さかったころ。 父と初めて遊園地に行った。 どこの遊園地だったか覚えていない。 最初で最後の父と二人での外出だった。 父の後につき、地下鉄に乗った。 人でいっぱい混んでいた。 迷わないように父の後にぴたりと付き、 離れないように、父の背広の裾を握った。 小さな僕には地下鉄の揺れは大きかった。 まわりは僕より背の高い人ばかり。 服以外まわりは何も見えなかった。 1駅、2駅・・・。 ようやく目的地に着いた。 意外と大勢の人が降りた。 遅れないように、父についていった。 でも、なぜか少し離れた。 二人連れの女子学生が怪訝そうに僕の顔をのぞき込んだ。 同じ色、同じ生地。 そう見えた裾は、その女子学生の制服の裾だった。 恥ずかしくなり、謝りもせず急いで逃げた。
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