雪など降るのだろうか。 昔は雪の降るところにすんでいた。 とっても寒かった。 でも寒いところに長くいると、 寒いなどと考えなくなる。
犬がいる。 迷い犬だ。 白くて、毛むくじゃら。 どこからか抜け出して来たのだろう。 何かの種や草や泥がいっぱい付いている。 吠えたりはしない。 よほど人間になれているのだろう。 利口な犬だ。 エサが欲しくてすり寄ってくる。 決して吠えたり、警戒したり、威嚇の態度をとらない。 ただエサが欲しくて、飼い主にねだるようにすり寄ってくる。
人間死にたくなる時もある。 時にはそのような時もある。 いつもは、多くの人はそうでないときがあるように。 時には、いつものようではなく。 多くのみんなのようでない時もある。
逃げ出したい。 放棄したい。 面倒くさい。 その延長にそのようなものがあるのかもしれない。
あの犬のように。 迷った時。 生きるすべをなくしたとき。 じたばたせず、吠えたりせず、憎んだり、やけになったりせず。 いつもそうであったかのように。 静かに。 誰かまわず。 助けを求めてみる。 そんなことができるだろうか。
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