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ZS日記 「 海 」-7・・・・・kisaragi - 2003年10月15日(水)

独り善がりの努力は、いつだって裏切られることになる。

慎重に慎重に、細心の注意を払って、極力ゾロと顔を合わせなくて済むように、
顔を合わせるにしても、決して二人きりにはならないように。
忙しい日常の仕事の中で、無理にやり接点を消すことに、
どれほどの努力を費やしただろう?

なのにそれは、一瞬の偶然で、いとも容易く瓦解してしまうのだ。


いきなり捕まれた腕の痛みより、その直ぐ後の信じられない言葉が胸に刺さる。

「とう・・・さん・・・??」

何を見るでもなく、休日の暇つぶしと気晴らしに出かけたショッピングモールで、
ぶつかりかけてバランスを崩した自分を支える力強い腕。
久しぶりにちゃんと見たゾロは、驚いたような、どこか困った顔をしていた。

駆け寄って来たぱたぱたという足音と、子供特有の高い声が紡いだ言葉に耳を疑う。
振り返ったそこには、大きな明るい瞳の少年がいた。

一人前の思案顔で、ゾロに向かって3つのカーテンを差し出して見せた彼は、
ゾロが掴んだままの腕と、そこに流れる一種の緊迫した空気に気付くと不思議そうに眉を顰めた。

「どうしたの?とうさん?」
「いや・・・なんでもない。ちょっと知り合いにぶつかりそうになってな・・・」
少年の目を見て話すゾロの瞳は、悲しいほどに優しかった。
安心したように見返す茶色の瞳が、きらきらと輝く。
「なんだ、とうさんの知ってる人?はじめまして。僕、かいです。海って書くんだよ」
ゾロの知り合いと知って、急速に親密度を増していく表情が、
人懐こく笑いかけてくる。
小学校中学年くらいの外見に比べて、少しばかり大人びた口調と、
はきはきした物言い。
全身から溢れてくる親愛の情は、無碍に踏みにじれる性質のものではなくて、
サンジは自然と腰を屈めて、目線の高さを合わせていた。

「俺はサンジ。ゾロの会社の・・・・・友達だ。よろしく」
差し出した手に、小さな掌が合わさった。






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Cartoon ★ Panic-4・・・・・tako - 2003年10月05日(日)


は……

なんとかケリはついたか……



虫じゃねぇし…

クモ男だっつーの…





大爆笑と、同情半分の拍手に送られ、
不届きなヒーロー野郎の首根っこを掴んで控え室に戻る。
後手にドアを閉め、そいつに向き直る。
「さあ、説明してみろ。俺の役、奪ってまで演りたかったんじゃねぇのか?
あぁ?」
被り物を脱ぎ、背中のジッパーを下ろしてもらいながら、
声がつい尖っちまうのは仕方ねぇだろ…


でも、それっきり先が続かなくなったのは、
そいつの金色に輝く髪を見たから…
海みてぇな蒼い瞳を見たから…

ってわけじゃねぇ…と思いたい…





いま腕の中でふんにゃりしているこいつが、
着ぐるみショーを、勝手にクマとかネズミとかに限定解釈してて、
でも与えられた役がクモ男で、その衣装がどうしても着れずに
相手役、つまりSUPER MANなら出来るだろうとタカ括ったものの、
極度の虫嫌いのこいつは、動いてるクモ男役の俺を見ただけで、
拒絶反応で舞台袖で固まっちまって…

それでも必死に務めた役を、いつの間にか俺より上手く演るようになりやがって
夏休みが終って大学の後期が始まった初日に、偶然学食で出会ったとき、
子どもに夢を与える、そんな仕事がしたいと、瞳を輝かせて語る姿に
胸の奥に穏やかじゃないものが蠢いたのを、
気付かぬ振りをして遣り過すことができなかったこと、
否定するつもりもない。


クモは虫じゃねぇって、未だに納得してないこいつが叶える夢が
たとえこの先、どんな形に変わっていこうとも、
一緒に見ていたいと思うのが、俺の「夢」でもあると、
こいつが気付くのはまだ先の話。






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リーマンZS日記
『世界で一つだけの…』

Ⅰ「タックル」1~8
Ⅱ「25時」 1~12
Ⅲ「 海 」 1~14
Ⅳ..writing now..
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たまに海賊
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