マユミの日記
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2006年05月11日(木) S先生との日々⑥

S先生と逢ったらずっとあたしはS先生の膝の上に座り、抱き合う形でずっとキスをしていた。
キスだけだったのがいつからかS先生は胸や体に触れる事が多くなっていった。
抱きしめあってキスをしていると突然S先生はあたしから離れて
『これ以上はダメだ』
と言って背を向けてしまう日が2週間ほど続いた。
あたしはS先生に嫌われたんだと思って1日S先生の元へ行かなかった。
次の日の昼休み、S先生はあたしに近づいて小さな声で『今日は大事な話しがあるから必ずおいで』って言った。

塾が終わって教科室に行ったらS先生はいつもの様に膝の上に手を置いて
『ここにおいで』ってした。
あたしはそこに乗りかかるか否や『S先生はあたしの事好きじゃなくなったの?』と聞いた。
S先生はびっくりした顔で硬直していた。
膝の上に座ったあたしを一人できちんと椅子に座り直させてS先生は入り口へ向かった。
『あたしはもっと先生にキスして欲しい。もっともっと先生に抱きしめて欲しいよ!』
そう叫んだ時部屋の電気がパチっと音を立てて消えた。


2006年05月10日(水) S先生との日々⑤

中学校最後の夏休みが終わる8月31日。
相変わらずな日々が過ぎていた。
部活が終わって先生を待っていた。
いつもなら笑って近づいてくるS先生が今日は何故か真剣な顔だった。
誰もいない学校の階段でいつもの様に腰を下ろして話しを始めた。
他愛のない話しが続いた。

沈黙の後、
『ボクはマユミの事が好きなんだよ・・・』

『・・・・じゃあ・・あたしもです。あたしもS先生が好きです。』

S先生は手を強く握った。
『良かった。でもこれから色々と大変だよ。マユミは耐えられるか分からないけれどボクが守ってあげますから。』
『うん』
そして初めてキスをした。
抱きしめられるだけで気持ち良くてずっとこのままでいたいと思った。

それから間もなくあたしは高校受験の為、部活を引退する事になった。
あたしは塾が終わるとその足で学校へ向かいS先生を訪ねる様になっていた。S先生がいる教科室は学校のちょうど裏手にあった。
いつもそこまで自転車で行き、わざと堰をしてS先生を呼び出していた。
S先生はいつも窓から顔を出して『おいで』って手招きをしてくれた。

S先生と二人きりの空間は居心地が良くて土日は父親にウソをついて一日中先生と一緒というときもあった。


2006年05月09日(火) S先生との日々④

中学3年生の夏休み。
吹奏楽部は毎日練習だった。
あたしにとってそれはとても楽しいものだった。
一日中大好きな楽器に触れていられる。そしてS先生にも毎日逢える。
その頃からあたしは自分で(S先生が好き)という事を自覚し初めていた。
相変わらず部活が終わった後は二人で会話を楽しんでいた。
近所で夏祭りが行われる。S先生は見廻りに行かないといけないらしい。
『一緒に行かない?』
あたしはその日、目一杯のおしゃれをして校門の前で待ち合わせをした。
自転車に乗ったS先生は『乗ったら?』って荷台を指差した。
『二人乗りはダメなんだよ』ってあたしが茶化すと『いいから乗りなさい』って言われた。
坂を越えて祭り会場に着いたらS先生は会場を一回りをして地域の会長さんに勧められるがままビールを飲んでいた。
あたしは入り口で待ちぼうけだった。
頬を少し赤くしたS先生は自分の仕事が終わったのであたしのとこへ帰って来て自転車を押しながら『歩いて帰ろうか』と言った。あたしは『うん』と言って後ろから付いていった。
少し経ってからS先生はあたしの後ろポケットに入っている家の鍵のキーホルダーの鈴の音を聞きながら
『最近は鈴の音が聞こえるとマユミが来たと勘違いする事がある』って言った。
『猫じゃないんだからね!』って二人は笑った。


2006年05月08日(月) S先生との日々③

あの缶ジュースを飲んだのはあれから1週間後だった。
1週間その缶ジュースを眺めては手にとって大事に飾っていた。
疑問から確信へ変わっていくのは14歳のあたしにとって1週間しか掛からなかった。この思いは誰にも言えない。父親にも兄弟にも。

あれからあたしはトランペットを離さなかった。
周りの状況は変わらなかったけれどもあたしの心は変わっていた。

何故かS先生の事がよく耳に入ってきた。
S先生の年齢があたしよりも20歳も上って事とか、子供が2人いるとか、毎日愛妻弁当持ってきてる事とか。

あたしは職員室の前に居るのが当たり前になっていた。
少し開いた窓からS先生の席が見えた。
部活が終わった後もS先生と尽きない話しで暗くなるまで色んな話しをした。

そうこうしている内にS先生と初めて出逢ってから3年が経とうとしていた。


2006年05月07日(日) S先生との日々②

毎日学校に行くのがとても嫌になっていた。
ワーキャー叫ぶ男子。
人の噂、悪口ばかりの女子。
うんざりだった。
だけどトランペットを吹いている時は夢中になって時間が過ぎていった。
あたしの毎日は朝練に出て一旦家に帰り、『笑っていいとも!』を見てから学校に行き、トランペットを吹いて帰るという日々を過ごしていた。

2年生になった春の始業式。
担任の先生の発表があった。
一人ずつ紹介されていく中で、S先生の姿を見かけた。
自分の担任の名前が呼ばれた時、S先生が立ち上がり腕を後ろに組んで少し笑っておじぎをした。

それからすぐに1年上の先輩のいじめともとれる様な行動が目に付いてきた。
譜面を隠されてゴミ箱に捨てられていたりとか、練習中ずっとに睨まれてたりとか、あたしを居ないものの様に振舞うとか・・・今考えたらくだらない些細な事を沢山された。
あたしはややこしい事が嫌いな性格なのでS先生に部活を辞めたいと告げにいった。

「相談室」という部屋に通されたあたしは何も言わずずっと黙っていた。
沈黙が続いたこの部屋で最初に口を開いたはS先生が先だった。

『ボクがいるから辞めないで欲しい・・・』

あたしは何も答えなかった。多分席を立ったのはあたしが先だったと思う。
外に出たら空は暗く、いつもの生徒が沢山いる学校ではなくなっていた。
きっと今ここにいるのはあたしとS先生だけ。
(家へ帰ろう)そう思ったあたしを先生は『ちょっと待ってて』といって暗闇の校庭で一人ぼっちにした。
息を切らしたS先生が帰ってきた時、その手には2つの缶ジュースがあった。『一緒に飲もう』って手渡してきたけれどあたしは受け取って『家で飲みます』と言って走って校門を後にした。


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