雨上がりの朝。日中は次第に晴れて25℃の夏日となった。
昨夜の雨は小雨だったおかげで花散らしの雨にはならなかったようだ。
桜はまだ残っておりその健気な姿に感動を覚える。
潔く散り急ぐことはあるまい。ゆっくりと散れば良いのだ。
朝の国道を行けば柿の木畑があり若い緑が目に眩しい。
しっとりと雨に濡れたせいだろうきらきらと輝いていた。
もう若葉の季節なのだ。あらゆる植物が芽吹き始めている。
春が匂う。なんだか天の国ではないかと思うほどに。

仕事は相も変わらず順調とは云い難い。義父はまた田んぼであった。
同僚のクレーム修理も5日目となりまだ完了の目途が立たない。
最初は2日の予定だったのでスケジュールが大幅に狂う。
来週からは毎日車検の予約が入っておりどうなることだろうか。
義父の助けがなければパニックになってしまいそうだ。
あれこれと思い悩んでも何も変わらずとにかく前へ進まねばならない。
2時過ぎに退社。義父が帰っていたがどうしても云い出せない事があった。
昨年の新米からずっと我が家のお米を貰い受けていたのだが
あまりにも虫が良すぎるのではないかと思い始めた。
娘とは云え義理の仲である。少しは遠慮も考えなくてはいけない。
お米の価格が高騰しており家計には響くが今回は買うことにした。
何だか義父の苦労をむしり取るような気がしたのだった。
3時過ぎに帰宅したが夫が珍しく出掛けており不思議に思う。
4時前には帰って来たが何と川船が売れたのだそうだ。
仲介してくれた人に3万円支払い5万円の収入がある。
借金をしてやっと手に入れた川船だったがもう惜しくはなかった。
長い歳月を共に働きその恩は言葉では言い尽くせない。
しかし廃業した以上はもう不要な船であった。
断捨離にも等しいが廃船にするよりはずっと良いだろう。
人手に渡っても四万十川は永遠に流れ続けている。
海苔の作業場は娘婿に譲りもう殆どの物を処分した。
乾燥機が残っているがこれは思うように買い手が付かない。
海苔の収穫自体が廃れてしまった今では無理もないだろう。
手放すこと。処分すること。それは別れにも等しかった。
真丸(まことまる)
その川船は「真丸」 とうとう別れの時が来た
どれ程の苦労だったことか 歳月は潮のように満ちて引く
夜明けを待ち兼ねて漕ぎ出す 朝陽が射せば川面を染めて 冷たい風が吹き抜けていく
舳先に座っていると水しぶきが 川面を切るように踊るのを見た
漁場に着くと船は大きく息をし ただひたすらに豊漁を願う
共に生きて来たのだろう かけがえのない船であった
手放せば別れの時である 歳月は宝物だったのかもしれない
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