改札を抜けると、いつもいろいろな人がいます。電車に乗る人や降りた人たちのことではありません。その人たちに何かしよう、あるいは何かしてもらおうと考えている人々です。
改札を抜けてすぐは、最近はあまりいないみたいだけど、怪しい宗教やエステサロンのキャッチらしき人がうろうろしていたりします。家のない人が寒さをしのぐために場所を取っている日もあります。今日は3人ほどでたむろしてタバコまで吸っていて、吸い殻はなんと床に集めていました。ありえない行為にかなりむっとしましたが、さすがに注意はできませんでした。
さて、駅を出てすぐにもいろんな人がいます。ティッシュ配りやビラ配りはかなりの確率で出会えます。ちょっと前は中越地震の募金や署名を集めている人もいたし、しばらく前から簡単なたこ焼きの露店を開いている人もいます。たこ焼きの売り上げは…あんまりないんじゃないかなと思います。 この駅はたくさんの人が行き来するので、駅の内外ではいろんな人がいろんな方法で利益を得ようとしています。慣れた今では大して珍しくも思わなくなりましたが、今日は初めて見る人が立っていました。
その人はキャップをかぶり、サングラスをかけ、遠くからでもよくわかるような赤い口紅を引いていました。服装はジャージのようでした。年は自分の母親くらいか、それより少し若いくらいに見えました。足元には移動用のトランクと小さな折りたたみ椅子があり、トランクの上には「キムチ」「キュウリ」「イカ」などと書かれたおしながきと、品物そのものが置かれていました。
次々と通り過ぎる人々を前に彼女はただ立っているだけでしたが、開きかけた口元が、今どうしたらよいかわからないでいる彼女の心境を表しているように、私には見えました。
ほんの一瞬だけ、私は彼女の近くへ寄って、その品物を見せてもらおうかという考えがよぎりました。しかし、その一瞬は本当にかすめる程度の時間で、私は彼女の横を他の人と同じようにあっけなく通り過ぎ、一度だけ振り返って彼女の後ろ姿を見ました。そして、何事もなかったようにバスターミナルへ向かいました。 何事もなかったように通り過ぎたはずなのですが、なぜか罪悪感にも似た後ろめたさが、私の後ろ髪を引きました。本当は彼女が気になって仕方がありませんでしたが、結局私は彼女に声をかけることなく家路につきました。
明日も彼女はここにいるでしょうか。それとも、一晩限りでいなくなるでしょうか。私にはなんとなくこれっきりのような気がするのですが、もしまた会えるようなら声をかけてみたいと、思うだけ思っています。
駅には毎日いろんな人がいます。
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