草原の満ち潮、豊穣の荒野 目次|前ページ|次ページ
地上にて。 ![]() ~ある思惑のこと~左の氷青 「本当ですか?!あの子供の左目が浄眼だというのは」 「司祭長殿が直々に確認されたのだ。 中央神殿から来られた数少ない浄眼者の調査ならば 間違いあるまい」 「信じられない。選りによってあの邪眼持ちに...」 「精霊招喚の呪歌など誰が7歳の子供に教える」 「はあ...」 「善き者が視えたと言うだけならともかく。 あんなにも鮮明な形で証明されては信じる以外ない」 「魔....ではありませんか」 「例の鳥がなんだか知っているか?」 「いえ、見ておりませんので」 「この目で見ておらねば私も信じ難い」 「.....と申しますと?」 「宝物殿に祀られた聖獣像そのものだ。 門外不出の秘宝が現われたとあらば....」 「....はあ.....」 「....何故、黙っていたのでしょうか...」 「殺された神官達の所行は知っているな。 邪眼を恐れての事とは言え、公に出来る話ではない。 嫌でも保身の智恵程度はつくだろう。あの全身の傷のおかげで 他の者達まで虐待に加わっていたのではと疑われる始末だ。 殺されてくれてむしろありがたい」 「責任はすべて死人ですか」 「....嫌な物言いだな」 「貴方がおっしゃった事をありのまま述べているだけですが」 「貴様の慇懃無礼さには定評があるからな」 「どちらの定評やら是非ともお教え願えましょうか」 「そこなお二方、つまらぬ揉め事はこの席に無用。 浄眼をどう扱うか、それを優先して頂きたいのだが」 「貴重な浄眼ですぞ、しかも司祭長殿でさえ 一方的に見るばかりがやっと。 ましてや善き者が呪歌を教えたなど前代未聞では ありますまいか?。邪眼さえなければ喜ばしい逸材であったものを」 「人殺しですからな....」 「人ならざるモノを視るは、迷う魂を導く事。 ものの本質を見抜く事....浄眼は女神が与えし聖なる力。 利用価値はかえって高くなるかと」 「つまり?」 「悪しき道から神の道へ。 これこそ好都合というものではありませぬか? かけ離れている程、市井の心を捉えられるかと存じます」 「ではあれを聖職者に?邪眼もまだ扱いあぐねているのでは」 「子供を導く程度も難しいと?」 「5人殺めたのですぞ」 「それが神に仕える者の言う事ですかな」 「当事者ならざる者は口だけですむ」 「臆病者の詭弁はけっこう」 「いいかげんにしろ。揉めるのは勝手だがあなどらぬ事だ。 貴殿らがあの惨劇の二の舞いにならぬ保証はない。 それだけは肝に銘じられるがよかろう。 学ばせて殺めた罪を悔いる者となるか 隙あらば己の力を行使する殺人者となるかは 導く者の器量による」 「....では本人に学ぶ意志の確認を...」 「選択の余地はあるまいがな....」 ![]() 次回の更新は2週間後を予定しています。
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