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『20世紀美術』高階秀爾
最近、なんか美術の本が多い。意図しているわけではなく、ほんのたまたま。本のサイズや溜めて買い込んだ中から拾っているうちにそうなってしまっただけ。
で、今日は『20世紀美術』by高階秀爾(ちくま学芸文庫)。内容についての妥当性を論評する立場にはなく、ひたすら面白く読みました。読み終えてから、主要部分は33歳の著と知って、ぎょぎょぎょ!
この人、鬼才だわ・・・仮に語られる言説の8割が欧米の美術評論誌などに出ていたものの翻訳に過ぎないとしても(そんなことはないだろうが)、日本語に置き換えてこれほど明晰に展開できるのは並みの人間に出来ることではない。はぁ~たいしたもんだ。
美術理論(美学というのだろうか)は作品と並行して進化するのかしらん。画家や彫刻家が理論の実践として制作に向かうとは思えないんだけど、制作の方法を選ぶときに、その根底に理論の影響があるのだろうか。明確に言語化されているかどうかは別として。
オブジェとイマージュの問題なんて、ちょっと美術に関心のある人なら常識なんだろうが、私には感動的だった。構成と表現の章で、マチス、レジェが取り上げられるあたりも、うなづきながら読んだ。新しい潮流の誕生も大変納得ができる。美術史というと、年表形式みたいなものしか思い浮かばないのだけれど、全然違うのね。芸術家の相克の過程なんだ。
初版刊行後、25年以上たってから付け加えられた部分は、前半、やや羅列と説明に終始しているように思われるが、後半の「芸術が分化していく」問題にはいろいろ考えさせられた。身辺に芸術があふれている現代、私たちは個々の意味を問わないまま消費している、あるいは、消費する危険にさらされているようだ。人間と芸術の熱い関係をたとえ瞬間的にでも取り戻す必要がありそう。
ねえ、美大生ってこんな難しいこと勉強するの?
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