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「陰の功労者になりたくて~能力差の孤独~」 - 2025年04月05日(土) 陰の功労者になりたくて~能力差の孤独~ 目を覚ますと、そこは見知らぬ森だった。 頭に響く声が「異世界へようこそ」と告げ、ステータス画面が浮かぶ。 名前は「リナ」、職業は「支援者」、能力値は「知能120」「共感155」。 剣士や魔法使いみたいな派手な役割じゃない。 転生前の記憶が蘇る―― 私は、効率を愛し、家族を支え、陰で動くのが好きだった女だ。 「まあ、70点でいいか」と呟きつつ、状況を把握する。 森の奥から聞こえる喧騒。覗くと、勇者パーティが魔物と戦闘中だ。 勇者は剣を振り、魔法使いは炎を放つ。でも、動きがバラバラ。連携がない。 「効率悪いな」と分析し、ステータス画面の「支援スキル」を確認。 「効率強化」「感情調整」「戦略提示」。使える。 私が楽で皆も楽になればと決意し、木陰から声をかける。 「そこの勇者、右に3歩動いて。魔法使いは詠唱を2秒遅らせて」 彼らは驚くが、従う。戦闘が一瞬で終わる。 「誰だ?」 と聞かれ、 「ただの支援者」 と答える。名前も名乗らず、パーティの後ろに付く。 日々が過ぎ、彼らは強くなる。 私は 「次はこう動いて」「ここで休んで」 と指示を出し、物資を管理し、仲間同士の諍いを調整する。 勇者は「俺が強いから勝てる」と豪語し、魔法使いは「私の炎が決め手」 と自慢する。でも、私が「効率強化」で彼らの動きを1.3倍速くし、 「感情調整」で衝突を抑えてることは誰も気づかない。 「陰の功労者でいい」と割り切る。 ある日、魔王城の手前で危機が訪れる。罠にかかり、勇者が動けない。 私は「戦略提示」で脱出ルートを即座に示す。知能120がフル回転し、 全員を救う。 でも、魔法使いが呟く。 「お前、何でいつも後ろにいるだけなんだ?」 勇者が笑う。 「戦えない奴は黙ってろよ」 その言葉に、胸が締め付けられる。 夜、焚き火を囲む仲間たち。私は離れて座り、ステータス画面を見つめる。 「能力差の孤独」ってこれか、と気づく。 私の「速さ」と「調整」がなければ、彼らはここまで来れなかった。 でも、彼らの「強さ」や「魔法」は目立つ。私は「効率」を武器に動くけど、 誰もそれを「すごい」とは思わない。「70点でいい」って思ってたのに、 心が揺れる。 翌朝、魔王戦だ。 私は 「勇者は左から、魔法使いは右から」「私が中央で囮になる」 と指示を出す。 彼らは 「囮?」 と怪訝がるが、従う。 戦闘中、私の「共感155」が魔王の動きを読み、仲間を導く。 魔王が倒れ、皆が歓喜する。 「俺がやった!」 「私の魔法だ!」 と叫ぶ声。私は血まみれで立ち尽くす。誰も私の傷を見ない。 戦後、王国で祝賀会が開かれる。 私は隅で酒を飲む。勇者が王に褒められ、魔法使いが称賛される。 私は「支援者」として記録にも残らない。 「陰の功労者になりたくて」って願ったのは私だ。 でも、心のどこかで「ありがとう」を待ってたのかもしれない。 森に戻り、一人空を見上げる。 ステータス画面に新スキル「孤独耐性」が追加されてる。笑みが漏れる。 「まあ、これでいいか。70点バンザイだ」 そう呟き、目を閉じる。 次に転生するなら、もう少し目立つ役割がいいな、と思う。 ***** 想像以上に面白いんだが。 でもこれ面白いの、きっと私だけ(笑) ...
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