* たいよう暦*
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交代で運転をして、目的地に到着。 車を降りると、朝5時のぴん!とした空気。 大阪では感じられない、澄んだ冷たい空気だ。 間違いなく、信州にきたのだなあ、と肌で感じた。
あせらず、あわてず、ゆっくり仮眠をとってから山の頂を目指す。 2612mまで一気につれていってくれるロープウエイに乗ると、今にも泣きそうな空に、ガスでけぶった山。 残念だけれど、それでもまだ泣き出さないだけ、まし。 登り始める前に、まずは腹ごしらえ・・・と、友人のリュックから出された朝ごはんを見て、びっくり仰天!そして大爆笑! なんと、顔の半分ほどもある大きな大きなおむすびが、二人分出てきたのだ。 きのうお見送りをわざわざしてくれた方から、友人に託されたおにぎり。 「がんばるんだよ」って励まされているみたいで、なんだか、うれしくなる。
千畳敷カールと呼ばれる、夏は一面お花畑となる道をゆく。 残念ながら、高山植物は時期が過ぎていたけれど、美しい緑が広がっている。 すぐそこの緑は見えるけれど、目指すべき山の頂は、乳白色のガスにはばまれて見えない。 一歩一歩、ゆっくり歩を進めていく。
進めど進めど、ガスはどんどんひどくなるばかり。 まわりの景色は、全然見えない。 自分の足元だけをしっかり確認しながら、歩く。 段々とガスがひどくなり、後ろを歩く友人の姿も、少し離れると見えなくなる。 人より遅くに出発したせいか、行きかう人もほとんどおらず、ただ静かに乳白色につつまれた景色の中を、歩く。 自分ひとりで、この場所に立っているような・・・白い闇。
分岐点では 「こっちかなあ」 「こっちじゃない?」 友人と相談しながら、道を選択して、進む。 今までたった一人でいるような気持ちでいたけれど、すぐ後ろには友人がいるという安心感がわいてくる。
ガスは霧になってきて、髪の毛がしっとりぬれる頃、頂上についた。 もちろん、乳白色のガスでなんにも見えない。 それでも、不思議と達成感があった。 山頂の目印の前で、ぱちり、ぱちり。 記念写真を撮る。二人とも、笑顔。 なにも見えなくたって、いい。 二人でひとつひとつを積み上げて、自分達の手で頂上にたどりついたことが、ただ嬉しい。
山頂は風がきつかったので、少し下った中岳で、塩ラーメンを作る。 朝食べ切れなかったおにぎりも用意する。 塩ラーメンは、駒ヶ根SAで、わざわざ追いかけてローソンの場所を教えてくれたお兄さんのおかげで手にいれることができた。 塩ラーメンを作るコンロは、友人の父からの借り物。 塩ラーメンを入れるコッヘルは、私の山の師匠からの借り物だ。 おにぎりは、お見送りをしてくれた方から私達への贈り物。 二人で登ってきたんだなあ、と思っていたけれど、実は二人じゃなくていろんな人に支えられての登山だったんだなあ、と湯気あがる塩ラーメンや、おいしいおにぎりを食べながら、ほわっとした気持ちがわいてきた。
今までは、つれていってもらうのが「登山」だった。 今回は、自分達の手で、そして支えてもらって、登ってきた。
アルピニスト初心者。 また、ちょっと違う山との付き合い方ができた一日だった。
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