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■ 澁澤龍彦の娘
連れて行っていただいたことがある。 (そのとき、連れて行ってくれたひとがかみさまにみえた)。 観念の宇宙がひろがる、夢にまで見ていた幸福な書斎。 できることならいますぐ、息をしないオブジェにメタモルフォーゼして ここに住みついてしまいたい! とそのときは心のなかで叫んだのでした。 うっとりうっとり。
そこに彳んでいる素敵な紫水晶の耳飾をつけている少女のそばにいてもいいですか? わたしも息をとめてしまいますから。 それとも、そこかしこに飾られている鉱物のひとつに封印してくださいますか? あなたのためだけに存在しますから。
虚空に向かって、いまはいないその人へ尋ねてみる。 あなたの娘にしてください。
観念を愛するそのひとにとって、 生身の女の子は興味ないに違いないもの。 そのひとのエロティシズムや快楽が向かうところは、 ご自分の分身である娘や、観念やオブジェなのでしょう?
それはわたしの欲望と一致してしまう、だからそのひとのオブジェ嗜好は崇拝してしまう。 人形になりたくなると、わたしの胡桃の中の世界と外がひとつになっていた、 世にも稀なるあの日を、あの午後を、あの書斎の赤いソファでの語らいを夢に見ます (でも、リアルに生きているわたしは現実社会でオブジェになるわけにはいかないのだった。こういう欲望を現実に晒けだしたりしない程度には、猾く賢くなりました)。
あなたの娘にしてください。 虚空から呼ばれるのを待っています。
2005年09月13日(火)
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