37.2℃の微熱
北端あおい



 世界の終わり

もしそれが壊れたら、その境界線を越えてしまったら世界が終わってしまうと思っていたのです、といったら、それは「少女」の考え方ですね、と言った人がいた。
それは他愛のない会話で交わされた言葉で、そのときの「少女」は、小さい子供、とか大人ではない、というほどの意味らしかった。
世界が終わってしまう、というのは、そこから先の世界は想像もできなかった、という意味です。

それからすこし時間がたって、そんなことではこの世界はびくともしないのだとわかった。そう頭で理解したとき、なぜか悲しかったことをはっきりと覚えている。
でも、わたしのなかに畏れているものはまだたしかにあって(それはとてもしあわせなこと。だから、それを失ってしまわないよう大事にはしている)、それを侵してしまえば、わたしの中の世界はやっぱり壊れてしまって終わってしまう(ような気がする)。

でももうとっくにこちら側に覚醒ていることは承知しているのです。
だから、世界が終わってしまうとおびえていた小さい女の子は、今ではこう呟きます。

世界なんて終わってしまえばいいのに。
世界なんて終わってしまえばいいのに。
世界なんて終わってしまえばいいのに……

2005年11月08日(火)
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