世田谷日記 〜 「ハトマメ。」改称☆不定期更新
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ずっと本を読まない、買わない生活だったけれど、久しぶりに書店で本を 買った。 黒田夏子「abさんご」と、吉田健一「思い出すままに」。
「abさんご」は受賞報道のなかで紹介される内容がとても興味深くて。 だって、ガチなんだもん。こんなガッチガチの純文学めずらしいよ。
「abさんご」には初期短編、三篇が併録されていて、これらはいずれも タミエという名前の少女が主人公の連作。 ところが、このタミエが可愛くないのよ。少なくとも私は好きになれない。 書かれたキャラクター云々じゃなくて、自分の嫌いなところを見せられて いるような気がして。
で、そういう気持ちにさせられること自体が、作者の力の証明みたいなもの だとは思うのだけど、いかんせん読んでいて楽しくないの。 感心はしても、こころは躍らない。うーーーん。
そしてその「うーーーん」という感じが「abさんご」を読んでいても 付き纏うのですね、困ったことに。 文体の玲瓏さに対して書かれている内容がちと恨みがましいんじゃないのか、 みたいな。読んでいてつらくなるんだな。心がふくらまないのだ。 まだ半分くらい残っているから、最後まで読まないと断言はできないのだけ れど…
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吉田健一の方は講談社文芸文庫の復刊(生誕百年だそうだ)五冊のうちの 一冊。
字面を眺めただけで紛れもない吉田健一ぶりに安心感を抱くのだが、 さりとて、スラスラ読み進められるわけもなく。 ましてやしばらく読書から遠ざかっていて初心者返りしている身では一頁を 二度も三度も読みながら、いつの間にやら座席で居眠り、という体たらくで ある。
まあ、上等でしょう。居眠りも「吉田健一」なら。
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