My life as a cat DiaryINDEX|past|will
歯医者はさっさと終わり、ブーランジェリーで一切れのピッツァを買って公園へ。フランスは外出制限中だが、沢山の人がごろごろと寝転んで、日光浴を楽しんでる。3ヶ月前までお腹の中にいたロクちゃんの目には、太陽の光が強すぎるんではないかと、わたし達はオリーブの木の下の半日陰にブランケットを広げた。おっぱいをあげながらピッツァを食べ、一緒に寝転んで沢山会話した。 「おぉ!おん!」 「お?」 「おぉん!」 隣に寝転んでるロクちゃんが着てるのは、母が編んでくれたベスト。眼鏡をかけて、目をしょぼしょぼさせながら、触れたことのない孫を思って編んでくれたのだと思ったら胸が熱くなった。母がわたしにしてくれたことを真似てロクちゃんを育てていこう、寝転びながらそんなことを思った。春風が頬に優しく吹付け、日差しが肌にやわらかく当たる。最高に甘い春の午後だった。
今日でロクちゃん生誕3ヶ月となった。フランスは3度目の外出制限中だが、歯医者の予約があり、ニースへ出かけた。母子だけではじめて電車に乗ってのお出かけ。 電車はガラガラで、一両貸し切り状態。トイレに行きたくなってもロクちゃんを中まで連れていかずにすんだ。母が送ってくれたケープをかけて授乳する。こちらにはこういうのないのか、公園なんかで使ってると、人々の視線を感じる。中で何かがモゾモゾいってるから、不思議なのだろう。 ニースの街も人通りが少なく静か。外出中には声ひとつ発しないロクちゃんが、今日は珍しく歯医者で治療中に泣き始めた。助手のお姉さんがカートを揺すったりしてあやしていてくれる。治療が終わり、おむつを見たら沢山ウンチをしてた。不快だったんだろう。許可を得て、歯医者の待合室でまた授乳。今度は助手のお兄さんが”水飲む?”などと聞いてくれる。フランス人の犬好きは有名だが、彼らは赤ちゃんも本当に大好き。見ず知らずの人もベイビーカートの中のロクちゃんを見たがったりする。そして”なんて可愛い赤ちゃんなんでしょ!!”と目をきらきらさせて言うのだ。妊娠中も公共の場で席を譲ってくれたり、レジで先に通してくれたり、みんな本当に妊婦や子供連れの人に親切。この後も買い物に行ったら、大きなカートに商品を積んで運んでたお兄さんが、 「ショッピングカートならどいてっていうけど、赤ちゃんにはどいてとは言えないなぁ。どうぞお通りください」 と自分がどいてくれたりした。段差があればすぐに近くの人がよっこらしょっとベイビーカートの端を持ち上げてくれたり。いつも文句も沢山言ってるけど、フランス人のこういう人間性は本当に素晴らしいと思う。 帰りの電車は朝より少しだけ混んでた。同じ町に住んでて、電車でよく会う顔見知りのお姉さんとはじめて話した。彼女は腕が片腕しかないのだが、いつも小さな女の子をベイビーカートに乗せて押していて、更にその腕にリードを引っ掛けて、大きな犬まで連れてる。 「ニースで働いてるんですか?」 と話しかけた。 「いいえ。この娘が気管支に問題があって、医者に通ってるの」 片腕しかないと自分の面倒すら大変そうなのに、病気の娘と犬と面倒見るとなると・・・両腕あってもロクゃんでいっぱいいっぱいのわたしには想像のつかないことだった。電車の中でトイレに行く時は彼女がロクちゃんを見ていてくた。 こうして親切な人々に助けられ、なんとか母子だけのはじめてのお出かけから無事に帰宅することができた。
ロクちゃんと散歩中、運動場に"隣のインディアン・ガール"を見つけた。この運動場はいつもちょっと躾のワルいティーネイジャー達が屯して、サッカーやバスケットをして遊ぶ傍ら、お菓子を食い散らかしたり、喫煙したりしてる。今日もいつもと変わらない光景があった。違うのはインディアン・ガールがいるということだけ。彼女は正確にはデンマーク人あるいはフランス人だが見た目はインド人、そして今度引っ越すにあたって隣人になる。名前を一度聞いたが忘れてしまったので影でそう呼んでる。彼女はダウン症で、言動が少しおかしい。自分が黒髪でデンマークやフランスで育っているためアジア系の見た目になにか愛着を感じるのか、とにかくわたしは彼女に好かれていて、電話もしょっちゅうかかってくるし、会えば"I love you!!!"と抱きつかれたりする。コロナが心配で、最近は"やめてねっ"ときっぱり断っているのだが。彼女がロクちゃんの最初のお友達になるかもしれないと思うとちょっと不安になる。彼女はお祖母ちゃんと二人暮し。彼女の家は少しだけ複雑だ。お祖母ちゃんはデンマーク人(白人)なのだが、子供ができなくて、二人の子供をインドから養子として迎え入れた。そのうちのひとりの息子がインド系の顔の女性と結婚し、彼女が生まれた。だが、母親はダウン症の娘を見るなり逃げるように去っていってしまった。こうして父親とお兄ちゃんと三人でデンマークで暮らしてた彼女だが、父親は仕事が忙しく面倒を見ていられないため、彼女だけがフランスに移住したお祖母ちゃんの元にやってきたのだ。父親は休暇のたびにここに彼女に会いにきてる。
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