a fish called datsu -だつという名の魚-
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小倉千加子の『結婚の条件』を読んだ。休み休み読もうと思ったが、アッという間に全部読了してしまった。読んですぐは色んな感想が頭に浮かんだけど、読んで5時間ぐらいした今では何だか印象が薄れたような気がする。昔はこういう社会心理学を勉強したくて、これ系の本を沢山読んでたんだがなあ。それ故にこういったネタをどっかで読んだなあと思うのかも知れないけど。
この本は雑誌や芸能人の事例を使って、少子化や晩婚化がよく分からない人にも大体分かり易く書いてある。倉田真由美の女性うけと男性うけの間での板挟みの話とか、面白い女性がなぜ受けないかなど、よく見ているなあと思った。
しかし、「娘の結婚は父親と国で決まる」という章は本の中で最も凄味を感じた。父のトラウマが娘の教育や男性観・結婚観に強い影響を与えるという内容なのだが、それは先の戦争で悲惨な思いをした父の世代が金と土地しか信じられなくなり、娘たちを並の男と結婚するのは損だとたき付けて来たということなのだ。
少子化は東アジア、南欧、東欧で進んでいるわけだが、特に第二次大戦で負けた枢軸国(日・独・伊三国同盟)が最も進んでいるという。戦争に負けたことで貧しくなった分、父たちの世代はお金に対する執着が強くなったらしい。そして娘にたくさんの投資をした分、『損をするような「交換」』を怖れるようになった。
文中で、40代の主婦のカウンセリングで、父への憎悪が激しいというケースの場合、父が昭和8年から12年の生まれに集中していたらしい。父もほぼ同世代だが、「誰に育ててもらってると思ってるんだ」とか、「誰のお陰で大学まで出してもらったと思ってるんだ」とよく言う。昔はそれで傷ついていたが、そういう啖呵をものすごい恩着せがましいと思うのも確かだ。
父に子どもたちへの愛情がないわけではないのだろうが、遊んでやることより、家庭を疎かにしてまで稼いだ金を使うことが愛情表現みたいな考え方はあの世代の父親の共通認識だと、この本を読んでよく分かったよ。ひざを打つって、まさにこの事だ。
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