沈んで、沈んで、堪らなかった。 お風呂に入りながら、駄目だ、帰ろう、と思ってた。 地元に。 お風呂から上がったら支度をして、明日の夕方にでも帰ろう。 そう思って臑に出来た傷を嘗めた。 髪を洗っている時に、メールの着信音が聴こえた。 何時もならシャワーの音に掻き消されて聴こえない癖に。 お風呂から上がってメール見たら。 「うたってる?」 って書いてた。 本当はうたってなかったし、寧ろひとつ声さえ発していない癖に。 「うたってる」 と、答えた。 うそつき。 それと。 「僕の曲をうたって」 と書いてあって、少し嬉しくて返事をした。 それから三時間経ったけれど、まだあたしはハミングさえしていない。 うたう約束をした。 元気がでた。 電話が来て、話をしたら、言葉の隅に元気を見付けた。 その一言で、いまのあたしのひとつの部分が報われた気がした。
うたうことに意味をあてがって、ずっとうたえなかった。 やめたほうがいっそ、と思っても、毎晩。 日課になっていた腹筋とストレッチは無意識に続けていた。 それは全部、うたうために。 身体の中がぜんぶ出て逝けるように、振り絞る為ならなんでもする。
うたおう。 明日は、ひとことでも。
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