⊂月蝕⊃
2002年10月21日(月)

沈んで、沈んで、堪らなかった。
お風呂に入りながら、駄目だ、帰ろう、と思ってた。
地元に。
お風呂から上がったら支度をして、明日の夕方にでも帰ろう。
そう思って臑に出来た傷を嘗めた。
髪を洗っている時に、メールの着信音が聴こえた。
何時もならシャワーの音に掻き消されて聴こえない癖に。
お風呂から上がってメール見たら。
「うたってる?」
って書いてた。
本当はうたってなかったし、寧ろひとつ声さえ発していない癖に。
「うたってる」
と、答えた。
うそつき。
それと。
「僕の曲をうたって」
と書いてあって、少し嬉しくて返事をした。
それから三時間経ったけれど、まだあたしはハミングさえしていない。
うたう約束をした。
元気がでた。
電話が来て、話をしたら、言葉の隅に元気を見付けた。
その一言で、いまのあたしのひとつの部分が報われた気がした。

うたうことに意味をあてがって、ずっとうたえなかった。
やめたほうがいっそ、と思っても、毎晩。
日課になっていた腹筋とストレッチは無意識に続けていた。
それは全部、うたうために。
身体の中がぜんぶ出て逝けるように、振り絞る為ならなんでもする。

うたおう。
明日は、ひとことでも。



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由弥 [御手紙]