読書日記

2002年03月02日(土) 松岡圭佑「千里眼 運命の暗示」(小学館文庫)を読み始める。

 松岡圭佑「千里眼 運命の暗示」(小学館文庫)を読み始める。
岬美由紀の「千里眼」シリーズ第3作目であると同時に嵯峨敏也の「催眠」シリーズでもあるといういわば松岡ファミリーによるオールスターものに進化を遂げた作品である。
1作目の「千里眼」はきちんとした結末があって文句なしの面白さだったが、2作目の「千里眼 ミドリの猿」は最後に岬美由紀が敵に捕まって「続く」となり、欲求不満のつのる腑に落ちない作品になっていた。その待望の続編が「運命の暗示」である。「千里眼」で活躍した刑事、蒲生誠と嵯峨敏也が相棒となりヒロイン岬美由紀の救出に向かう。
まだ、100ページほどのところ。蒲生と嵯峨の二人は遂に岬のもとにたどりつく。しかし、二人が見た岬は正常な状態からはほど遠かった。そして気がつくとそこは・・・。
今のところ「千里眼」や「催眠」のように意表をつく抜群のストーリー・テラーぶりはそれほど見られない平凡な展開でじれったくなるが、やはりこの後あの場所でどう物語が動くのかが気になる。



2002年03月01日(金) 小林泰三「ΑΩ(アルファオメガ)」(角川書店2001.5.30)を一気に読了。

小林泰三「ΑΩ(アルファオメガ)」(角川書店2001.5.30)を一気に読了。
密度の濃いプロローグと第一部をゆったりとしたペースで進むとその後は一気呵成に結末まで行ってしまうしかない、スローボールが突然豪速球に変身するようなホラー的SFである。
題名から内容も文章も想像すらできないまま、すこし難解かもしれない、読みにくいかもしれないという予想で読み始めて驚いた。
プロローグでゾンビ系の話かと考え第一部の扉を開くとそこはまるでハード宇宙SFの世界だった。
場面が再び地球の日本に戻ったら、ジュラシック・パークとガメラと小林泰三ワールドの合体世界だった。
今まで作者が発表してきた作品の擬似総集編となる物語は今までになくアクションシーンが多くこちらを夢中にさせた。
魅力的なヒロインになりそうな女性たちをいずれもいいところで退場させるところに作者一流の手腕を感じた。
ホラー的SFなので心臓の弱い人や残酷シーンが苦手な人は回避した方がいいだろうが、抜群に面白いことは間違いない。予想以上に面白かった。
「SFが読みたい!2002年版」国内編二位の傑作である。



2002年02月28日(木) 小林泰三「ΑΩ(アルファオメガ)」(角川書店)を快調に113ページまで読む。

小林泰三「ΑΩ(アルファオメガ)」(角川書店)を快調に113ページまで読む。いろいろと間に用事が挟まった割りには調子よく読めた。
冒頭は山崎豊子の「沈まぬ太陽」の墜落事故現場を思い出すようななまなましくも悲惨な場面である。信じられぬような出来事が起こって、次の場面に変わるとそこは日常的な場所ではなかった。デヴィッド・ブリンやクラークもかくやという宇宙空間の怪しげな宇宙生物が次々に登場してくるのである。
主人公の名前は諸星隼人という。
この聞く人が聞けばにやっとするような童話作家志望者が核となって物凄い話になっていきそうな予感がする。
売り文句はハードSFホラー超大作である。
今のところ、B級のSFホラー映画といった趣であの有名な「ヒドィン」に似ているかもしれない。



2002年02月27日(水) 人間不信の書「エンプティ・チェア」(文藝春秋2001.10.15)を読了、物思う。

人間不信の書「エンプティ・チェア」(文藝春秋2001.10.15)を読了、物思う。
予想通りというか期待通りというか、昨日まで読んだ部分の直後に大きな衝撃が走る事件が勃発する。登場人物たちにとっても読んでいるこちらにとっても意表を突かれた格好になった。ヒェーッである。そこでさっと幕が降り、第四部ハチの巣のタイトルマークが映し出される。残り115ページ程度。
その後の展開は剛腕による力業の連続である。人物を動かす心は繊細かもしれないが事件の展開は豪快である。読んでいる1時間あまりは文字通り息継ぐ暇もないと言う風ですっかり疲れてしまった。中心点目指して急速にその輪を縮めながら螺旋状に飛んでゆくような高い緊密度に読んだ後は茫然自失状態に陥ってしまった。
次第に奔流と化してゆく凶暴な物語。結末の静けさも記憶に残らない。
怒濤の面白さ。
読了後に「このミステリーがすごい!2002年版」の35ページを読んだ。
やはりこの本は危険である。内容をうまくほとんど要約している。事前に読んでいたら全く面白くなかった。この本を買う人は全員既に読んでいるという前提で書かれているのか。危なかった。


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