気まぐれ日記
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なんてこった。一週間のうちに三回早番。人がいないとはいえ酷い。疲れた。というか、疲れる。それでも明日には新しい人が入る。もってくれればいいんですが……。
「やあ、部下が失礼しました。多少の無礼はお許しください」 社長を名乗る男は立ち上がって、夏目を招きいれた。 「僕は尾崎。夏目君の話は聞いているよ。あの小さな会社で作っているドールがこれだね」 セリナが夏目の後ろに隠れる。夏目もセリナをかばうようにした。 「そのドールを少し貸してくれないかな」 「いやだといっても……」 「力づくで、ね。嫌な世の中になったね。権利もプライバシーもない。昔騒いでいたなんてうそのようだ」 「セリナをセリナのままで返してくれるんだよな」 「もちろん、それは約束する」 夏目が少し黙った。 「セリナ、起動停止」 「え、トーマ様。それは……」 「そうだ、それでは意味が……」 「いいから、セリナ、起動停止」 セリナが目を閉じて、ばったりと倒れた。マスターの声のみでドールはすべての行動を停止させることができる。平たく言うと電源をオフにした状態である。 「これで、セリナは大丈夫だな」 「君は、大丈夫じゃないよ」 尾崎が静かに言った。 「これが、君の答えだね」 「ああ、そうさ。セリナをいじられるくらいなら、ね」 後は井上のプロテクトを信じて、勝手にプログラムを変えられないようにすればいい。 「わかったよ。ならこちらは少々手荒なことさせてもらうよ」 夏目が身構える前に、尾崎が腕を振り上げた。拳が頬に入る。夏目がよろめいてしりもちをつく。 「女の顔を殴れるなんて、久しぶりだね」 「あんた、本当の女も殴るのか?」 夏目は立ち上がった。たいした痛くはないが、腫れるだろう。 「そうだねえ、僕にはどっちも同じだから。さ、痛い目会いたくなかったらセリナを再起動させるんだ」 「やだ。あんたの思い通りになるのも面白くない」 「ふーん、じゃあ、痛い目を見るかい?」 「痛い目ね。俺はたいがいの痛いのには慣れているから……」 その言葉に尾崎が笑った。いじめがいがあると言って、夏目に向かった。
2003年07月30日(水) |
はい、ちゃっちゃっと |
すすみましょう。
階段を下ったら地下通路。その後、上がる階段。夏目とセリナと菊池はクイーンという会社のロビーにいた。 「こちらへどうぞ」 エレベーターで最上階へ。これで、逃げ場はなくなったと夏目は思った。セリナは少しぼうっとしていた。ドールにはありえないのだが。 「トーマ様、下に何かあります」 「でも、俺たちは上に行かなきゃならないようだ」 「心配しなくていいよ。殺すなんてことはしないから」 ということは、殺す以外のことはするんだな、と夏目は覚悟する。 「ところで、何で俺が、夏目だと?」 そうだ、自分で忘れていたが女だった。 「個人の情報は守られているわけじゃないんですよ、夏目さん。まあ、最初は疑いましたけど」 「……」 「でも、このドールが一緒だったからね、すぐわかった」 エレベーターが止まる。かなり地上が遠い。 「さて、まず社長に会ってください」 「いきなり社長か」 「ええ、直接社長と会ってお話を聞いてください」 菊池は一段と大きいドアを開けた。広い室内の奥に広いディスクがある。そこに、まだ若い社長とやらがいる。
って、世界名作劇場にて一番可愛そうな…つーか、悲劇ですよね。だって、最期天に召されるって、子供大ショックですよね。死ぬんですよ、主人公。いくら安らかな死に顔だからってさ。それに、一番報われてない。けなげに一生懸命生きている割には。んで、周りは敵だらけ。いやになる話だ。 というのが、昨日、家族とした会話です。ちなみに、他のは一応、みんな無事というか、ハッピーエンドですよね。死にもしないし。
夏目はセリナを連れて私立図書館へ。こじんまりとしているが中は、趣味の書でいっぱいだった。それは、夏目もよく目にする本。妖精関係の本だった。 「なんで、ドールの会社が……」 「トーマ様、こっちです」 「え?」 立ち入り禁止と書かれたドアだった。しかしセリナはお構いなしに腕を引っ張った。 「セリナ……」 「入れませんか?」 「うん、立ち入り禁止だって」 立ち入り禁止。昔は、入っても叱られるだけだが、今は撃ち殺されても文句は言えない。とは言え、ここは図書館だ。このドアの先にあるのは事務所かなんかだろう。 夏目は、そっとドアノブに手をかけた。 「!」 手は、そっと離れる。 「トーマ様!」 「静かに。いいんだよ。そっと、入って」 後ろから声がした。夏目は振り向かずに、またドアノブに手をかけた。背中に何か硬いものがあった。それが何なのかはよくわかる。 「でも、まさか、君たちから来るとは思わなかったよ」 「……罠だった?」 セリナが気になったのは、ここからドールだけが感じる何かがもれるからだろう。 「そうかもね」 「あんたは?」 「これは失礼。ドール製作会社クイーンの菊池と申します」 「で、俺たちはどうすればいい?」 「とりあえず、中へどうぞ。夏目十真さん」 他の来館者は何も気にしていない。だからそっとドアを開け、そっと閉めた。 「俺たちに何か、用ですか?」 夏目は手を上げて、男のほうを、菊池の方を向いた。中年の、人のよさそうな男だ。 「いいですよ、手は下ろして。どうせ武器らしいものは持ってないでしょ」 菊池と名乗る男は、部屋の明かりをつけた。そこは、下に下る長い階段があるだけの部屋だった。 「どうぞ、ここから本社に向かうことができますよ」 夏目は、黙って従った。セリナは、何かに引き込まれるように階段を下りる。
「フェアリードール」の再開です。セリナ編ですね……何も考えてないかもしれない。どんな話になるかまだあいまいですが。
セリナが来てからというもの、夏目はいろいろ大変だった。大変とはいってもそれほど困るわけではなかった。逆に言えば、楽しかった。家事なども一つ一つ教えると、後は全部セリナがやってくれる。たまに失敗するが。 井上は、やはり一週間に一度来ている。たまに遊びに行って子供たちの相手をセリナにさせた。 バイトはバイトでこなしていた。必要な分とちょっとの貯金があればそれでよかった。 ただ、問題なのは日に日に女になるのが早くなっている。 「原因は、不明だね」 森はそう言った。 「そうですか……」 「一つは、薬に体が慣れてしまったんだ。それしか思いつかないね」 「……」 「薬を新しくするか……しばらく薬をやめるか、だね。ただ、新しい薬なんてないから、しばらく薬を飲まないことだね」 そんなわけで薬は飲んでない。当然しばらく女のままで過ごす。それでも不自由はしていない。確かに精神的な面では負担はあるが、もうすでに慣れていた。 「トーマ様、大丈夫ですか?」 「なんで?」 「いいえ、ただ、なんとなく元気がないから」 「うん、大丈夫だよ。ちょっと疲れているだけだから」 「なら、いいんですけど。私の前では、無理しないでくださいね」 先ほど美幸が来て、話をした。もちろん彼女は夏目を紀代と思っているのだが。その度に、夏目は後ろめたさを感じている。 「セリナの前だと楽だよ、ありがとう」 「……あの、トーマ様」 「何?」 「行きたいところがあるんですけど」 「行きたいところ?」 「はい、実は、私、そこがとても気になって、仕方がないんです」 ドールに、そういうことがあるんだろうか、と思いつつ夏目はどこに行きたいのか聞いた。 「私立図書館です」 「私立図書館?」 個人で運営されている図書館。やっていることは市立などと変わらない。しかし、私立というだけあってかなり偏った本が並んでいる。更にそこは大手のドール製作会社の系列の図書館。 「まあ、いいか」 特に問題はないだろうと、夏目は思う。空いている日を記憶とカレンダーでチェックし、あさってに予定を立てた。
先週のまとめです。ちゃっちゃっといきましょう。明日もお仕事。八日間ハード出勤なのだ。
月曜日……草の世界の最強キャラ、運命神の日記。あのう、まあ運命の神様なんですよ。どんなに運命に抗って生きようが、みんなこの方が仕組んだことなんです、はい。ケセラセラと生きましょう。そんなキャラなんです。ただこいつはいるだけで成り立つので、自身ほとんど何もやっていないんです。会話しているのはカルストラです。こいつも基本的に死なないので、「実は生きてます」というのは十分ありえます。気分的に消えたいだけで、実際消えてないのかもしれないし。 火曜日……セアレ。魔族です。初出は書き直しでふやしたキャラで、船上にて支給人のバイトをしていました。名前はありませんでした。書いたとき適当につけました。飄々としたところがミソです。人間の感情を食ってます。他の魔族にとったら変人かも。 水曜日……えーと、マルアニアは文章に表してないです。伝説上、聖女であり悪女だった、で説明されているだけです。つまり本当のところは誰も知らないというだけです。いつか話しにしたいなあと思う。 木曜日……カシスの話。結構心配性ですね。いままで兄ばかりを相手にしていたので、同じ歳のベグゼッドはいい友達なのです。彼にとっては。ベグゼッドもまた、同じくそうなのです。 金曜日……ティママン。変な名前と言われた覚えがあります。実はビールの名前。でも改めて見るとディママンって書いてあったり。これを読んで、死んだ一国の王がベグゼッドであることが気づいたと思いますが……。 土曜日……お間抜け話。カーナリアスはカルストラの母です。軽めの兄さんが、あの大間抜けな話のブロード(兄)というのはお気づきでしょう。知らない方は、過去から読んでください。こんな間抜けな話なのに、妖精主の正体ばらしてますね。(自爆)
って、いうか来週からまた「フェアリードール」再開です。一週間早いよ、本当に。日曜日、一週間の総まとめするから「何モンだよーおめー」などと思われるところは黙って読んでください。特に月曜日は日記自体、誰がかいているか不明だし。 今日は、カーナリアスの日記。元生命の女神です。
人間……元人間二人が私の前にいる。一人は固そうな軍人さん、ひとりは軽そうなお兄さん。二人とも私をナンパした。 「お姉さん、俺と一緒にケーキでもくわねえ? もちろん、俺のおごりで。どこかにおいしいショートケーキがあれば最高なんだけど」 「お嬢さん、私と一緒に食事でもいかがですか?」 ……なんなのだろう、この人間たちは? でも誘われて悪い気はしない。 「まあ、どうしましょう。私はこれでも大きな子供が二人もいるのよ」 「え、そうなの? お姉さん、若いねえ。俺のかあさ……じゃなかった。俺、年下かとおもっちゃった」 「失礼しました。お嬢さんなどと。では、奥方。今宵は私めにお付き合い願いますか」 思わず、ふき出してしまった。 「貴方たち、なんなの? 私の取り合い?」 「この場合……」 「両方玉砕だな」 どうやら、ナンパ合戦だったようだ。私は二人を誘って喫茶店に入った。魔界でも少ない、まともなものを出してくれる店に。 「ふーん、不死の人間って貴方たちのことなのね」 蘇生魔法の失敗によって不死となった軍人さん。 自分の魔力と他人の魔法で不死となった軽めのお兄さん。 「そういうこと。たまにこうやって魔界に来ているんだ」 「そういう約束があるのです」 この二人は、元は人間同士だということで、引き合わせられたらしい。が、お互いに名乗ることもなく、こうやって自分の興味で動いている。 「こいつにさあ、名乗ろうと思ったら「野郎の名前は覚えない」っていったんだ。だから俺も、名乗んなくていいっていったんだ」 「同じ不死者とはいえ、赤の他人だからな」 この二人は、性格は違えど、似たもの同士なのだ。それも、かなり似ている。 「魔界は美人のお姉さんが多いから楽しいけど、うっとうしいのも多いよな」 「そうだな。たのんだ」 そう、この二人はもうわかっている。この二人を狙う魔族の一人が近くに来た。 「奥方は……大丈夫なようですね」 「ええ、これでも。前魔帝の妻ですから」 今は、息子が魔帝の座にいる。魔界には魔帝が支配しきれない魔族もたくさんいる。 軽めのお兄さんは立ち上がって、その魔族を見た。 「いやだね。美人のお姉さんがいるのにお話を邪魔されるなんて」 「人間風情がなんでここにいる?」 「なんでって。俺は許可を受けてここにいるんだよっと」 お兄さんの魔法は、もう発動している。なるほど、かなり癖のある魔力だから、何かのほつれで不死となったのだろう。その魔族は、空間に飲み込まれた。 「邪魔なんだよ、まったく」 「野蛮だな」 「おめえは何にもしねえけどな」 「お見事ね。ちょっと驚いたわ」 本当に。空間を操る人間の魔法使いは絶滅していると思った。 「なんの」 「あなたは妖精主の大陸の出身ね。あそこにはまだ人間の魔法使いが残っているかしら」 「さあな、俺は六百年ばかし寝ていたから」 「今は、ほんの数人の人間の魔法使いが存在してますよ」 人間は、魔法を必要としていないのが良くわかる。 「私は、妖精主に一度あったことがある。確か、魔力にはサイクルがあって人間が魔力を持つ時期と、持たない時期があるって」 それを管理するのが妖精主。 「妖精主ですか? 一度お会いしたいとおもってます」 「すごく美人で……。今の妖精主も美人かしら」 「ああ、美人さ。俺の弟だし」 軍人さんが少し拍子抜けしている。たぶん。驚いたのは、この軽めのお兄さん。まさかこの人がとは思わなかった。 息子と、対等に渡り合った人間。
「母さん」 カルストラ……中身こそ、運命神に作られたが、私の息子の一部。そして、やっぱり私の子。 「どうしたの? かなり薄くなっているけど」 「やられたよ。人間だと思って手を抜いたつもりはなかったんだけど……相手はとんでもない魔力の持ち主だから。なんとか意地で勝って平然を装ってたけど、もうだめ」 そのまま、息子はしばらく眠っていた。そしてしばらくすると起きた。 「もういいの?」 「うん。妖精主に謝られた」 「妖精主に?」 「兄がご迷惑かけましたって」
2003年07月25日(金) |
ガートルードのレシピ |
最終巻がおいてあった。即購入。少女漫画はあまり読みませんが、うちの数少ない少女漫画の一冊です。悪魔物とか弱いかも。 今日は、ティママンという魔族です。伝説の英雄などど歌われてますが、どうってことないです。
ずうっと昔を振り返る。千年以上いや、その倍だったか。 この世界に取り残されて、魔物と戦い体を失って、しゃーないからあらかじめ自分にあう体を作ったまではいい。それから千年以上もたってそれが生まれたが、そいつの我の強さといったら、もう。入り込めたはいいが、ぜんぜんコントロールが効かない。 そのコントロールが効くようになった。かなり後味が悪い。こいつが自殺をしたからだ。自分の剣で自分の胸を刺した。必ず死ねるところを。 俺はすぐに傷を治して姿を消した。もちろん大騒ぎになった。なぜならこいつは騎士で、主人を、一国の王を死なせたからだ。遺体が消えて見せしめがなくなった。 「ふう」 俺はとりあえず人の入りそうもない森に潜んだ。 「お久しぶり」 「オフィーリスか」 「まんまと体を手に入れたわね」 「ああ、このまま人間として年食って死んじまうところだった」 「ティママン、しばらく魔界に帰るといいわ」 「そうだな」 「その剣は、おいていかないの?」 ビアソーイダの紋章が彫られた剣を指していった。 「ああ、もらっておく。俺の剣は預けたままだからな」 「幽霊って信じる?」 「はあ、信じるも何も、存在するだろ」 「そうね。じゃあ彼に会って」 切り株に腰掛けた男がいる。死に装束の赤い髪の男。そう、奴が一国の王であり、こいつの、元この体の持ち主の主だ。 「ありがと。もし、あのまま遺体があったら、きっと彼は……酷い事になっていたかもしれない。だから……俺の騎士になるのなんかやめろって言ったんだ……」 奴は消えた。そして切り株には誰もいない。ただ、涙が一滴切り株を濡らした。 「オフィーリス」 「何?」 「幽霊でも、何か残すことができるんだな」 「そうね」
なのに、あまりうれしくないのは何故だ? なんだか憂鬱なのは、抜けた人の代わりが入ってこないから。ちゃっちゃっと行きましょう。今日は、カシス。何度か名前は出ているね。こいつ、書きやすそうだから。
俺がベグゼッドに頼んだものは一振りのナイフだった。なぜなら、モーサビット兄貴の短剣を一本駄目にしたから。その後、俺の顔を見るたびにしつこく弁償しろと言う。ベグゼッドが知っている店でいいものがあるというので、それで任せた。 が、二時間以上たっても戻ってこない。近くだからそんなにかからないと言っていたのだが。 「ベグゼッドが帰ってこない?」 グオンに言ったら、思いっきり不審な目で見られた。 「なんだよ」 「何を頼んだ?」 「なにって……」 俺は手短に説明したが、それを聞くとグオンは拍子抜けしたように仕事に戻った。 「おい、いいのか?」 「いつものことだ。気にするな」 「はあ?」 「まったく」 グオンは再び俺の方向いて言う。 「お前は、ベグゼッドに一時の自由をやったんだ」 「だから?」 グオンはお決まりのため息をついた。口には出さないが、「この馬鹿が」と言っている。 「ベグゼッドはお前のようにいつも外に出ているわけでないんだ。そのうち帰ってくる」 俺はグオンの部屋を出た。そして、ベグゼッドの部屋に戻ると奴は帰ってきていた。 「ただいま」 「おう。遅かったな」 「まあ、いろいろな」 約束のナイフは皮布に包まれている。解くと確かに立派なナイフだった。 「俺が使いたいくらいだよ」 「それはよかった。ところで、今日は街の露店日でついでにいろいろ見て回っていたんだ」 それで、遅かったようだ。まったく、人の心配をよそに……。 「食いものもたくさん売っててね、これ食べる?」 怪しげな丸く焼いたものを差し出した。 「たこやきだって。東の国アンギルスの料理だってさ」 「……ベグゼッド、楽しかったか?」 「うん」 ベグゼッドはうれしそうにうなずいた。
キノの旅のスペシャルブックⅡが届きました。結構どうでもいいですね、んなのは。今日はマルアニアという女の話です。でも、シトロという男が語ってます。
金持ち貴族の馬車を狙ったら、特上の女が乗っていた。その女は俺の剣をご信用のナイフではじいた。女だと、しかも貴族の女だと思い脅しつもりでの振るった剣だったから本気ではないが、それでも気の強い女だった。 「おとなしくしなよ。俺は命までとるつもりはねえ。ただ、お前さんのお宝を頂戴したいだけさ」 俺は言った。 「では、この方を帰してあげてください」 女と一緒に馬車に乗っていた中年の貴族を指して言った。 「私の宝を見せましょう。だから、この方を帰してあげてください」 「へえ、お前さんの宝ねえ」 それはなんだ、といったら、 「このドレスです。物は古いけれどそれなりの価値はあります」 「じゃあ、そのドレスと装飾品すべて今、いただこうか?」 「わかりました」 女はまず、装飾品をすべてはずす。箱にそれを収めた。そしてドレスに、首の後ろのホックに手をかけた。 「待ちなさい、マルアニア」 もう一人の男、貴族らしい中年がそれをとめた。 「やれやれ。あまりの艶やかさに目を奪われるところだった。盗賊ももう冗談はいいだろう?」 「俺はもう少し見たかったな。で、商売を始めるつもりか、おっさん」 「この辺の盗賊の若頭シトロだな。私たちの買いたい物は「見逃してもらう」だ、さて、お前は何がほしい」 「そうだな、その女だ」 「私を?」 「うん。ただ、俺も情報通なんだ。知っている。王がお前を妃にしたいと言っていることも、そこにいるおっさんもまた、お前を妻にしたいということも。どうだろう、お前が俺と結婚するといったらこの場は何も盗らずに去るが?」 「わかりました。貴方の妻になりましょう」 本気で言っているのか、この女。 「ああ、そうかい。じゃあ、お前のうちに行くからな」 「ええ」 そして、この女は言った。 「こんな面白そうなこと、逃すことないわ」 俺は笑いながら去った。中年貴族が慌てているが、女、マルアニアはにっこりと俺を見送った。
仕事上、切ることがありますが、右人差し指と親指切りました。キー打つの大変です。やっぱり今の仕事、向いてないかも。 今日は、セアレという魔族の話です。
「あーあ、やっかいな」 仕事中だった。今はボーイのバイトをしている。白シャツに黒のベスト、リボンタイに黒のエプロン。 「頼むわよ、いいわね」 「オフィーリスに頼まれたら、断れませんよ」 彼女はいつでも厄介なことを他人に押し付ける。 「僕は仕事中なんですよ」 「なに言っての? ここに巣くっている馬鹿に一喝すればいい話。仕事中でも十分よ」 なんでも、馬鹿がこのレストラン内に巣くっているらしい。まったく気づかなかったが。彼女は相手のことを教えることなく消え去った。
「ははん、このなかだな」 砂糖つぼには地神がいた。三流の小さな地神だった。 「げ、魔族」 「やあ、こんちは。おとなしく去れば何にもしません」 「おいら、なんにもしてないって」 「砂糖が急減りしてコックは怒ってるんだよ」 「そんなの、おいらは知らないよ」 「ふーん」 まったく、この手の神は少々脅さないとだめのようだ。 「僕は、神族なんか好きじゃないんですよ。でも、砂糖漬けの地神はおいしそうですね」 「食うのか」 「ええ、魔族ですから」 「うわあっ」 「逃がさないよ」 つめを伸ばし、地神を一突き。ぐったりとそれがうなだれる。そのときだった。それは正体を現した。 「ちっ、こんな魔族にやられるとは」 大きさも人間の大人サイズになったそれは、砂糖つぼを蹴飛ばした。つめは刺さったままだった。 「あーあ、もったいない」 「あんたが出てきたんなら俺は帰る。いっとくが、俺は砂糖をなめっていただけだ。このレストランにはまだ何かいる」 「そうですか。あ、帰らないでください」 「ああ?」 「血をください。あまいかもしれないから」
ほぼ、半分消えかかった地神は逃げ帰った。あれだけ血を奪われればすぐには戻ってこないだろう。 「やっぱりまずいや」 人間の感情ほど、うまいものはない。
夏目の作家名「木野由貴子」は平安時代(だっけ?)「土佐日記」を書いた紀貫之から。自分を女として書いているから……。 さて、キャラ日記、一週間だけ復帰です。何を書こうか。
奴は、滅びゆくこの世界にとどまっていた。静かだった。奴は気に入りの酒の入ったグラスを傾けて笑みを浮かべていた。 「本当にいいのか?」 「ええ、かまいませんよ」 平然としてまたグラスを傾ける。 「僕は、この世界の管理人です。僕が最期までついていなかったら。と、いうか僕はもう、魔界にも神界にも飽きたから」 「その酒も飲めんぞ。人間で言ったら死、われわれには消滅、だ。お前は自殺するつもりなのか?」 「自殺? 何を言うんですか? これこそ自然の理ですよ。この世界は、いわゆるお間抜けな終わり方でなくなるんですよ。でも、それが自然なんですから」 「そういえば、聞いてなかったな。何故、この世界は滅ぶ?」 「この世界は発展しなかった。偶然作り出した核は世界を放射能で埋め尽くした。人間の無知は世界をも滅ぼすんですよ」 「なるほど、だからお前が手を下したんだな、とどめを」 天変地異を起こし、生き残ったものものをがけっぷちに追いやった。 「いい、世界だった。環境破壊も少なかった」 「もう、なにも言わん。お前は?」 奴はグラスを置いた。 「兄に、お幸せにと。母に、さよならと。僕の本体に、すいませんと」 私は瓶に残っていた酒を奴の空のグラスについでやった。 「それから、貴方に、ありがとう」
今日はゲーム話。 スタオー3見事バトルにはまりました。とはいってもまだ序盤だし、フェイトくらいしか使ってないけど。はっきり言って、2のときは画面酔いしたし、キャラがどこにいるかわからなかったし、呪文のエフェクトが長いし、エンカウント率高いし。なんといっても知らないでラスボスのリミッター外れたものだからクリアができなくて、たまたま崩壊前のデータが残っていたから、そこから挑戦したようなしないような。10賢者って馬鹿みたいに強かったという覚えがある。(ただたんに、私が弱かったからか?) 昨日やったらちょうどスタオー記念日にあたりました。あと、ガッツですね。トライエース独特のシステム。ヴァルキリーはこれがないとクリアできません。生き残ったら、よっしゃ!と叫びます。 残念なのがアイテムクリエーション。できるところが見たかった。でも、面白い。
井上編。1ドールが売れる。2売れない。3開発に失敗してリストラ。そんなエンディング考えてました。次はセリナ編といきたいところですが、最近また、キャラ日記が書きたいので一週間ばかしそれやろうかなと。
いや、長くするつもりないし。ちょっと家庭的な雰囲気も書きたかったのよね。あ、そうそう、友人にがいうには森親子は「人間レベルの極悪人」であり、真の極悪人をかけと言っています。まだまだ草は青いです。
ある日、ふと、井上が言った。 「そういえば、うちの妻がね、この小説が好きだって言うんだ」 かばんをがさごそと探り、一冊の文庫本を出した。 「ふうん」 夏目は興味なさげにそれを見た。「妖精たちの宴」とタイトルがあり、著者・木野由貴子と。 「本ってさあ、贅沢品なんだけどね」 「それをいうならうちの妻は贅沢品を作っているんだよ」 「まあ、俺も似たようなもんか」 贅沢品といっても、高いものではない。だから好きな本だけを集めるのは珍しいことではない。 「そういうこと。でね、妻がこれを漫画にしたいんだって。ところがね、この作家さんに何度かお願いしているんだけれども、編集者の方で断られるんだってさ」 「ふうん」 「これは新刊だから妻の土産」 井上は本をかばんにしまった。コーヒーを一口のみ、渋い顔を作る。 「セリナ、また間違えたんだ」 「夏目さん、自分のカップだけでも別にしたら」 「そうだな。これ以上犠牲になることもないし」 コーヒーを取り替えて夏目は、なんで気づかなかったんだろうと、ちょっと反省した。 「……あのさ、井上さん。奥さんの作家名は?」 「え、ああ、妻は本名をそのまま使ってるよ。井上美並って」 「んじゃ、これからやることは、奥さんに内緒だからね」 夏目が電話の受話器をとった。めったにかけることがない電話のダイヤルが押される。 「あ、もしもし。天藤さん? 夏目だけど」
井上が帰宅したとき、美並が上機嫌で迎えた。 「どうしたんだ?」 「それがね、あなた。さっき電話があってわたしがずっとあこがれていた小説の作家さんが、私の漫画を見て、ぜひ自分の作品を漫画にして欲しいって」 「へえ、よかったじゃないか」 「編集者さんが、イメージの問題があるから直接作家さんとは顔をあわせることはないでしょうって。それでも、よかったらだって」 「ああ、もう、天にも舞う気持ちってこんなのなんだろうなあ」 「あ、そうだ、これお土産」 「あら、新刊。由貴子さんってどんな方かしらね」 「さあ」 井上はあいまいに笑った。
2003年07月18日(金) |
わーい、やったやった |
今日、友人のメールが来て、「森医師(親父含めて)は極悪人だ」という感想を受けました。これで草も極悪人が書けるようになりました。やったー(笑) がんばって、古本で雪ちゃんみつけてね。
「不思議なんだよな、これが」 「何が?」 セリナのメンテナンスは10分もしないうちに終わった。井上が首をかしげて言う。 「セリナは、まったく普通のドールと同じなんだよ。プログラム上も問題ないし、メンテ結果も同じ。これは、本当に妖精でも憑いているかもね」 「ねえ、セリナはセリナだから、プログラムを作り直せば、普通のドールもセリナのようになるんじゃないの?」 「実験と改良がかかりそうだね。本当に夏目さんとは長い付き合いになるかもね」 「俺はかまわないよ。一人暮らしが長いからセリナがいると寂しくないし、俺が紀代の時でも変わらず接してくれる。たまに間違えてコーヒー出すけど、それも愛嬌があっていい。俺、一生かけても代金払うからセリナを正式に引き取りたい……最初はぜんぜんそう、思わなかったけどね」 「夏目さん」 井上は、まじめな顔をして夏目を見つめた。夏目が少したじろぐ。 「ありがとう。製作者冥利に尽きるよ、その言葉」 「はあ……」 「さあ、忙しくなるぞー。なんとしてもセリナのようなプログラムを製作しないとね」 井上は心中で思う。夏目は、「セリナを引き取る」と言った。「買う」という言葉を使わなかったのだ。だから、セリナのことは彼に任せてよいと改めて思った。
井上編。さっさと終わらせたいのにもかかわらず、こんなのだけ……。今日はキノの旅のゲームが出たのでそれをやります。良心的な値段だ。世界観を楽しむためのゲームも良いですね。まだやってないけど。
「すいません、夏目さん。あんな妻でして」 井上は謝りながら運転していた。 「……」 夏目は少し複雑だった。 「……まあ、いいんじゃない?」 元に戻ることなくそのままの夏目は彼よりまだ温和だった。そして、ややおっとりとしている。 「トーマ様、お薬忘れたんですね」 「最近、本当に間隔が短いんだ。効かなくなったのかもな」 「あの先生のところに相談したらどうですか?」 「ああ、そうだな」 しばらく黙っていた。そのうち車は市街地から離れたところに工場と一緒になったビルがある。 「ここです、夏目さん。僕の会社です」 車を指定駐車場に入れ、夏目とセリナは中へ案内された。応接間はテーブルとソファー、テーブルには野で積んだものとされる花がコップに生けてあった。 「ここで、ちょっと待っててください。上司を呼んできます」 しばらくして、井上の上司が現れた。中年のキャリアウーマン……そのままのイメージであった。スリムにスーツを着こなしている。 「はじめまして、夏目さん。私はこういうものです」 名刺を渡された。「営業部部長 山田敬子」と書かれてある。見た目より、声にやさしい雰囲気があった。 「セリナのことは井上から聞きました。夏目さん、貴方の感想をまだ聞いてなかったですね、最初にセリナが貴方をマスターと認めてどう思いました?」 「びっくりしたよ。ドールだからね。なんでって思った」 「井上さん、確かあの時、貴方を怖がっていたと言ってましたね。今は……」 「俺が一緒でなくても怖がりません。それどころか、誰が来ても対応してくれます」 「そうですか。……貴方のことは、井上から全部聞いてます」 「はい?」 「その体のことも。大変なようですね。でも私たちに協力願いますか? セリナはドールの新しい可能性を秘めています。それが、今の時代にどう影響されるか、私は知りたいの。ドールが主人を選ぶ、そして主人に従う。そして、セリナのように時には叱る。人間の恋人のように、ね」 「……わかりました。協力します。でも、具体的に何をすればいいのか」 「ええ、貴方のこと、セリナのことを教えてくださればいいのです。今までどおりで」 「でも、俺は、恋人なら、人間同士の方がいいと思いますけど」 「そうね、私も思うわ。でも、世の中には、貴方のような……人間の恋人が持てない人も多いのよ」 敬子は、きっぱりといった。そして、井上を呼んでセリナのメンテナンスをするように、言った。
井上編、やたらだらだらしてますね。本題にいつまでも入らないし。ちなみに、美並は南果歩、仁とせい子は辻仁成から。南果歩は作家ではないけど、仁成さんの元妻。ちなみに作家のときは「ひとなり」で、歌うときは「じんせい」と読みます。 コーヒーは夏目の好みどおりであった。 「主人がご迷惑をかけたみたいで」 「いいえ、かえって助かってます。セリナがいてくれるといろいろやってくれるので」 「そうですか、それはよかった」 美並はケーキを取り分ける。セリナの姿は見えない。子供たちの寝室に引っ張り込まれたのだ。 「夏目さん。今夜は泊まっていってください」 「そうよ、もう遅いし、子供たちがセリナちゃんが気に入ったみたいね」 「はあ、ご迷惑でなかったら……」 「実は、僕の上司が夏目さんに会いたがっているんだ。セリナが気に入った理由を知りたいって」 だから、明日、一緒に会社に来てほしい。それもあって夏目を家に呼んだのだ。 「わかりました。それは約束みたいなものですから」 セリナを使う代わりに、生活状況のデータをとる。そう、夏目とセリナの実験的な生活はすべて井上が把握している。 「すまないね、夏目さん。ついでにセリナのメンテもしないとね」 セリナは子供たちと寝ていた。こうやって電力を蓄えている。それをそのままにしておき、夏目は客間に布団が敷いてある部屋に通された。
彼は、朝は苦手だった。そして気づいたときは美並を驚かせた。 「夏目さん!?」 「……?」 彼はすぐに気づかなかった。女になっていることに。 「主人の言ったこと、本当だったのね」 「はあ」 「女の人になるって……。これで、かけそうだわ」 「何を?」 「決まってるじゃない、漫画よ、作品よお」 ……井上の妻、井上美並は漫画家だった。 夏目は、思いっきりネタにされた。
眠いっす。でもやるっす。わけわからんです。ドラクエで言えばメダパニ混乱状態。いや、いろいろあるっすよ、草は。そのため酒の量も増えて今ワインが効いてるー。
井上の奥さんは美並といった。井上はなかなか美人妻の持ち主である。そして、こどもは仁とせい子である。 「お客さんだあ、めずらしい」 「これ、ぱぱが作ったの? すごーい」 子供たちはもの珍しそうに夏目とセリナを見た。 「こらこら、お客様に失礼でしょ」 美並がたしなめた。 「これ、どうぞ。お土産です」 「まあ、いまどき珍しい。主人から聞いたとおりですね。さ、どうぞ、あがってちょうだいな、私たちもおもてなししないとね」 「お邪魔します」 セリナも見習って、お邪魔します、と言った。 夏目は夕食をご馳走になり、セリナは子供たちと遊んだ。 「夏目さん、それ本当かい?」 「ああ、確かに井上さんが言っていたって」 さきほどのケーキを選んでいたとき、セリナが言ってたことである。が、井上には覚えのない話だった。 「確かに、せい子はモンブランが好きなんだけど……はて、セリナに言ったことあったかなあ」 「コーヒー入れましょうか?」 「あ、濃い目で」 「ええ、話は聞いてますよ」 美並がにこりと笑った。 「ありがとうございます」 「セリナがねえ」 夏目はふと思った。セリナは美並に似ている。多分、そうなんだろう。 「モデルは奥さんですか?」 「あ、わかりますか?」 「いや、もう、それは」 「ドール開発者の趣味が一番出るところなんですよ。今度、夏目さんをモデルに……」 「やめれ」 「はい」 「娘さん、かわいいですね」 「もちろんですよ」 井上は、親ばかである。やっぱり。 「どうぞ、ケーキも出しますね」 「あ、おれもおれも」 「あたしも」 「あんたたちは明日、さ、もうお休み」 美並が子供たちを追い出した。
多分短いです。新ドールが売れるかどうかの話だから。でも、あらたな気持ちでスタート。
「今夜?」 夏目が聞き返した。 「ほら、この間、招待するって言ったじゃないですか。妻がどうしても貴方に会いたいらしく。娘も喜ぶだろうから」 電話口で井上が楽しそうに言う。 「まあ、いいか。でも、井上さんちはどこ?」 「ああ、そこから次の駅で降りて。僕が迎えに行くから」 そんなわけで、夏目は井上の家に行くことになった。 「セリナとどこかに行くのは久しぶりだね」 セリナを連れてくと、行き交う人々に注目されてしまう。そのためセリナは留守番が多い。今日はそうも行かない。何せセリナがついてこそのお呼ばれである。 「あ、そうだ。ケーキでも買おうか」 こんなとき、やはり母の教えが身についていた。夏目の家に来るものは手ぶらだが。夏目が訪れるときはそうは行かない。 「娘さんはどんなのがいいかな」 ケーキ屋のガラスケースを眺めて夏目が悩んでいた。 「モンブラン……確か井上さんが言ってました。娘さんはモンブランが好きだって」 セリナが言うと店員が驚いた顔をしたが無視。夏目はうなずいて、モンブランとあと他のケーキをいくつか求めた。 ケーキ屋を後にし、駅へ向かう。聞いたとおりそこから次の駅に向かうと、井上が待っていた。 「こんばんは、井上さん」 「ああ、夏目さん。今晩は。セリナ、元気だったかい?」 「はい」 ドールは病気をしない。いつでも元気でなければならない。井上のそれは挨拶に過ぎないが、それでもまあ、勉強になっている。もちろん、セリナの。 「さ、こっちだよ」 井上の家は大きかった。まあ、ドールの開発者ならうなずける。
えーと、今日は。雑談ですね。今週は(あ、もう、先週だ)、もう雪ちゃん一筋でした(爆笑)。雪ちゃんと称していれば友人の一名をのぞけば草の友人にも絶対わかりませんね。うふふふふふ。そんで、ちゃんとツタヤでビデオ借りてみましたよ。でも、本読まねばわかんねーよって感じです。サンホームに二巻あったんんでそれを見たら、短けーよって感じです。 雪ちゃんいいっすよ、あんなにはまるもんだとは思わなかったよ。前々から題名だけ知っていたにはいたけど、読むまでしなかったからね。それだったら著者の本を読んだときから、読めばよかった。後悔先に立たずってこんなこと。 でも、あれはなかなか罪な終わり方。続きそうでおわっちゃっている終わり方。15年後に続巻が出たときのファンの反応が知りたい。その点、続巻まで直線でいけるのが、にわかファンなわたくし、草。 ところで、続巻のほう、実はまだ読み終わってないです。読む時間ください。 心の叫び、「新しく入った人、またやめちゃったよー! 私、自分の仕事できないよー! そうだよ、できない分家でやんだよ、ちくしょー!」 心の叫び2、「スタオー3、チンピラ倒せたよ。プレステとまらずに。進んだよー、トライエースは見捨てなかった。「ヴァルキリー」でイセリアと大魔法びしばし掛け合った仲だったからなー。ありがとーゲオ、ディスク取り替えてくれて……って、中古かい(一人突っ込み)。あと、ゲームする時間ください」
夏目編は、1夏目が女として一生を過ごす。2今までどおりの生活で過ごす。3実はちゃんと紀代という姉がいて、姉を助けるため森から離れる。みたいなのを考えてました。そして、話を続けるためこちらはこちらで話が進みます。来週は井上の商売戦線編。でも草は、経済なんぞに疎いです。
「父にも呆れます」 夏目が転寝している時、森がぽそりとつぶやいた。 井上も少しワインをもらい、口にしていた。夏目のことはしょうがない。多分、今の姿で自分は夏目だと本人が言ってもあのときの自分には通じないだろう。それなら、姉なり何だり他人としたほうが伝わる。 (夏目さんは、その苦しみを何度も味わったんだろう) 井上はそう思っていた。だから、森の突然のつぶやきに返事が遅れた。 「何がです?」 「彼女が成人してからの話ですが、彼女には妊娠すら要求されました」 「なんで?」 「性転換希望者には子供もほしがる者がいるんだよ。それで、彼女がちゃんと妊娠できるか」 「実験を?」 「しましたよ。父が。彼は望まなかったけれど無理やりね」 「それで」 「精神的に参ってしまいました。そのため流産しました」 「……」 「それでも、妊娠ができるということがわかった。でもやり方はまずかった。彼も彼女も父に会おうとしない。だから薬が切れようが、父のいる日に通院はしない」 「しかし、貴方の場合、さっき言っていたが……」 「その辺は夏目君にもわからないだろうね。彼女は私を拒まない。だから、彼の精神も彼女の精神もかみ合わず、彼は自分に混乱する。これを論文にしようと思ってね」 「貴方も最低です」 「そうだよ、私は最低だよ。でも父よりはましだ」
「お邪魔しました」 「通院日には来てくださいね。困るのは貴方ですよ」 「はい」 夜遅く、夏目とセリナは森の家を出た。井上は席に帰った。なにやら慌てて。自分が転寝している間に。 「じゃあ、気をつけてね」 「はい」
2003年07月11日(金) |
本当に悪い奴はかけない |
森氏は本当に悪い奴でない、良い人ともいえないけれど。草はそんな奴でとどまってます。本当に悪人という奴は書けないです。未だに。でも、変態者は多いです。多分。
「彼女?」 井上が繰り返した。 「まさか……」 「そうだよ、そのまさか、さ」 夏目がゆっくりと立ち上がった。セリナに支えられている。井上には紀代と名乗った女がそこにいた。 「紀代さん……」 「ごめんなさい。だましたくはなかったけど……」 夏目が目をそらして言う。 「遺伝子を組み替えて、性転換する。それが、病院で行われた手術だった。人体実験は成功したが彼女は、彼女でいたくない。それから元に戻す手術を行おうとしたが、もう一度やるには危険な手術だから薬で戻そうとした」 森の話の続きは夏目が続けた。 「薬が開発された。けれど薬が切れるとまたこの体になる。その繰り返し。女になるのも男に戻るにも激痛が走る」 「それでも、夏目君は元の姿に戻りたいそうだ」 「あたりまえだろ、それが俺なんだから。でも、男でも女でも、俺は不自然だ」 セリナが心配そうに夏目を見つめる。 「セリナ、もういいよ。いつものように俺と接してくれ」 「トーマ様、体の方は?」 「心配ないよ。それに何かあってもここは先生の家だから」 「夏目君、コーヒー温めなおそうか?」 「うん」 「貴方も、一杯どうですか?」 「そうですね、まだ聞きたいことはある」 怒っているのかないのかわからない表情で井上は上がった。それで居間には奇妙な男女が四人になった。 「紀代というのは?」 「俺のお袋の名前だよ。昔の名前みたいだって嫌がっていた」 「夏目さんのご両親は?」 「もう、いないよ」 「そうですか」 夏目の歳で親がいないのは少し珍しい。せいぜい井上の歳で両親がいないのが普通だった。 「はい、夏目君」 森がコーヒーを渡した。温めなおし、さらに濃い目になったと思われる。 「ありがと」 「あと、これは貴方が下さったチョコレート」 「うん」 井上は、黙ってみていた。夏目にはない何かが今の夏目にある。そう、言葉遣いは夏目でも紀代だった。 「夏目さん、お菓子類はあまり食べないんじゃ……」 「……なんでだろう?」 「夏目君は、女性になると少し変わる。性格、考え方や好みも微妙にね。当の本人も気づいているけど、どうにもならないらしい」 森が解説する。 「貴方もどうぞ」 コーヒーを井上に渡すと、自分はワインを持ってくる。 「夏目君もどうだい?」 「はい、いただきます」 「彼は飲まないけれど、彼女は飲むんだ。どういうわけか」 森が楽しそうに言った。
地元でも売ってました、ハヤカワ文庫の日本人作家。やっぱり数は少ないかな。それでも続巻購入。前作のあの結末を15年も維持していたなんてすごすぎ。まさに空白の15年。草が読んだのは改訂版なんですけど、ほとんど直してないとか……。
「セリナ……?」 ふらりと夏目は玄関先に現れた。その表情は蒼白で肩で息をしている状態だった。 「トーマ様。ごめんなさい、薬忘れちゃった……」 「いいじゃないか、セリナらしくて」 夏目はそう言った。 セリナをセリナとして扱う言葉。「セリナらしい」といえるのは、セリナと暮らしてきた彼しか言えない言葉だった。 「うう……」 夏目が床に倒れこむ。 「夏目君」 森が体を支えて、ゆっくりと寝かせる。その間も彼は苦しそうなうめきをあげていた。 「一体夏目さんはなんの病気なんだ!」 見るに耐えなくなった井上が叫んだ。 「彼は貴方になんと?」 「性病だと言ってました」 「性病ねえ、確かにいえるかもしれない」 夏目の体がだんだん小さくなるように井上は見えた。見えたのではなく、本当にそうなっている。 「発作が起きるとこうやって骨格すら変わっていく。遺伝子の異常だよ」 「遺伝子?」 「正確には病気じゃない。彼は子供のとき、大病を患って手術した。でもこのご時世ではとても払えるような金額じゃない。だから、彼の体を買ったんだ、病院が……私の父が」 「夏目さんを何かの実験に使ったんですね。よく新聞とかで目にします。でも、これは……?」 「体が変わるんだ。かなり激痛だよ。彼にしかわからないだろうけど」 セリナがしゃがみこみ、夏目をさすっていた。それで井上から良く見えなかったが、発作がおさまったらしく彼のうめきはとまった。 「彼を実験に使ったおかげで成功したんだ。でも、いまだ彼の体はそれを受け付けないでいる。だから病院で薬をだしているんだ」 「発作止めを?」 「そう。高い薬だからね、彼女に体を求めたこともある」 「彼女?」
2003年07月09日(水) |
今日もせっせっとお仕事 |
明日は早番なんで、速攻書いて寝ます。スタオー3ですが、チンピラを倒す前に止まりやがります。何度も。プレステ壊れたかな……。
井上が予定通り夏目の家を訪れた。 「セリナ、いるかい?」 セリナは思いつめたような真剣な顔で井上を待っていた。 「どうしたんだい? セリナ」 「井上さん、一緒に来てください」 セリナはあがろうとする井上を引っ張って玄関を出た。 「何があったんだ、セリナ」 「トーマ様が、マスターが!」 「夏目さんが、どうしたんだい?」 「発作が起こるんです。だから早く」 「わかったわかったから。でも、どこに行ったのかわかるのかい」 井上はそう言って、愚問ということに気がついた。 「でも、町の中で発作があったとしても誰かが通報してくれると思うんだけど」 「トーマ様のは別です、早く早く」
森の家で、夏目はくつろいでいた。そのように見える。 「コーヒーどうぞ」 「どうも……」 受け取ろうとした瞬間、夏目の腕が震えた。受け取るのをやめ、森の手に押し戻す。 「発作かい。薬は」 急に医者に戻った森の質問に夏目は首を振る。 「そうかい。じゃあしばらく横に……こんなときに客だよ」 森がうずくまる夏目を横に寝かせると、チャイムのなる玄関へ向かった。 「トーマ様! トーマ様はどこですか?」 「わっ!」 さすがに森も驚いた。ドールが突然家を訪れたのだから。そんな姿を夏目が見たらめったに笑わない夏目も笑うだろう。 「こら、セリナ。落ち着いてくれ。すいません」 「夏目君の知り合いかい?」 「ええ、そうですけど」 「このドールは?」 「夏目さんをマスターとしているドールです。いろいろわけがあって……」 「わけはともかく、今は会わないほうがいい」 「発作が起きているのはわかりますが」 「そのドールが、夏目君の薬を持っているとしたらいいが」 セリナはぎくりとする。人間らしい、自然の姿で。 「セリナ、まさかあれだけ騒いで、もっていないとか?」 「すいません、持ってないです」
2003年07月08日(火) |
「なんだ? ランダー? だれだ」 |
昨日この場でわめいていた小説の主人公の、はまりかけていたときにさらに追い討ちをかけた台詞。無意識の台詞か、著者が狙ったのかは不明。ビデオ借りるぜ、ツタヤで。もし、この台詞にピンときたらメールください。まだこの著者の本、一作しか読んでないですが。(これはまだ全部読んでない)
夏目は出かける準備をしていた。 「後は頼むよ、セリナ」 「はい、いってらっしゃいませ。でも、本当にお一人で?」 「しょうがないさ、今日は井上さんも来るみたいだし。いつものように……お客様用のコーヒーをだしてあげて」 バイトの時と通院の時はセリナを連れて行かない。通院の時はともかく、バイトのとき一度、連れて行ったが、バイト仲間や客に珍しがられてちっとも仕事にならなかった。それ以来は連れて行っていない。買い物の時にだけ、物を覚えさせるために連れて行っているが、セリナの性能……性格だと、全部覚えていないだろう。 「じゃあ、いってくるね」 夏目は玄関を出て、マンションの階段を降りた。ゆっくりと歩いて駅まで向かった。 「や、夏目さん」 「井上さん」 「出かけるのかい?」 「ええ、留守番はセリナに任せているので。どうしたんですか、その花」 「あ、いやこれは……妻の誕生日でね」 井上は紀代に贈るつもりだったが、今日のことを思い出した。自分の結婚記念日だった。妻にどやされずにすみそうだ。 「貴方の家によったらすぐ帰るつもりだったんだけど」 「ああ、そうですか」 「夏目さんはどちらへ?」 「ちょっと、かかりつけの医者の家に。話があるって。セリナに普通のコーヒーを入れるように頼んだので、今日は大丈夫だと思いますよ」 「じゃあ、セリナが待っているんだね」 井上と別れた後、夏目はまっすぐと森の家に向かった。今の時代、医者ほど儲かる職業はない。森もその例に入る。森は自分の家をすでに持っている。もともとは他人の家だが、持ち主が手放したものを買い取ったらしい。 「こんばんは」 「夏目君かい? 今晩は。さ、あがりなさい」 「お邪魔します」 居間はソファーだけの殺風景なものだった。座るように促される。 「さて、何がいい? まずはコーヒー。濃いのを落とそうか」 「ええ」 落とした濃いコーヒーが只で飲めるのは、この森の家だけだった。夏目にとっては。 「あの、先生。話って何ですか?」 「ああ、結婚しようかと思ってね」 「誰と?」 「君と」 「変な冗談はやめてください」 「冗談ではないよ。できない話ではないからね」 「確かに、できなくはないけど。戸籍とかどうするんですか? つーか、その前に俺がいやだ」 「今の時代、借金がなかったらどうにでもなるよ」 「先生、人の話聞かないよね……俺はこれでいたいから」 「そうかい。残念な話だよ。半分冗談だけど」 「半分?」 「そう、半分」 「て、いうことは」 「偽装夫婦だよ。いや何、変な見合い話に困っているんだ」 「他、あたってください」 「薬代まけるよ」 「……」 夏目が、痛いところを突かれたような顔をした。 「夜は長い。ゆっくり考えたまえ」
研修のため北へ。やはり地元よりかなり都会。そのためほしかった本ゲット。何故、地元にハヤカワ文庫の日本人作家の本が少ないのか? つーか無いに等しい。星界の紋章(だっけ?)はあるけれど。売れないのか? そんなことより、研修は?(でも、タワー行ってきたし) 少し、話は戻る。 井上はあれから何度か紀代に会っている。それは決まって夏目が留守の時である。 「いつもすいませんねえ」 「いえ、弟がいつもお世話になっているそうで」 「とんでもない。毎回こうやってコーヒーが飲めるのは夏目さんのおかげでして……」 紀代は、笑顔になる。 「紀代さん、ご結婚なさっているんだよね……」 「ええ」 「指輪は?」 紀代の指には指輪はなかった。 「指輪……」 「いえ、ごめんなさい。今はしないのですかね」 確かに給料をはたいて高い指輪は買わないものが多くなった。しかし、それでも安物を結婚指輪としている者が多い。 「ないのよ、まだ。でも、そのうち石つきのいいものを買うからって。そのときは私がおばあさんになるころかしらね」 「なるほど、最高の贅沢ですね」 「まあ、そうですね。セリナちゃん、何か甘いものあるかしら」 「はい。お持ちしますね」 セリナは変わらず紀代の頼みを聞いた。それを見て、井上はいつも驚く。セリナは井上の頼みですら聞く。ドールとして問題だが、セリナの柔軟性はこれからの開発に取り入れたいと彼は思っている。 「ごめんなさい、お姉ちゃん。もうお菓子が残っていませんでした」 「ああ、この間……井上さん、すいません、今日は何も残っていないみたいで」 「いえ、お構いなく。毎日のように来ている僕です。コーヒーだけでもうれしいのですから」 「すいません、今度買っておきますから」 「……紀代さんが買ってるんですか?」 「十真はあまり食べないから。私がここに来るときに、自分で食べるために買います。甘いものばかり食べちゃ太っちゃうのにね」 「はあ……」 井上は、いつもコーヒーを堪能して帰っていく。ただいつも紀代に会ったときは後悔する。花でも買ってくれば、と思うのだった。
あまり長くパソコン使用できないため、今日はここまで。明日必ずここに駄文を書きますね。 はい、では駄文開始。キャラの名前由来です。感のいい読者はもうわかっているかもしれませんが、ジャンル問わず日本の作家です。
夏目……当人も言っているけど夏目漱石から。特に意味なし。草は夏目漱石のどの作品も完読したことがない。 井上……井上靖から。やっぱり意味なし。なんとなく。ただ、どこにでもあるような苗字であるから。 森……森鴎外から。医者だし。でも知られざる作品に「魔睡」(麻酔のことらしい)というのがあって、確か、医者である友人に奥さんを……てのがある。何で知っているかというと「高校の時の苦い?思い出」(笑) 山田……井上の上司。まだ登場してない。女性にしたかったので山田詠美から。あと、どこにでもある苗字だから。 松本紀代……松本清張から。清は「きよ」とも読めるので。 リュウノスケ……芥川龍之介から。なんとなく。なんで猫かというと、「我輩は猫である」にかかってきている。 天藤美幸……贅沢な名前。「大誘拐」の天藤真と「模倣犯」の宮部みゆきから。彼女はこのくらいゴージャスでいいと思ったから。 セリナ……ドールについては植物っぽい名前がいいと思ったから。他に理由は特になし。 だから、別に意味はないのです。はい。
2003年07月05日(土) |
スタオー3はじめました。 |
理由が不純なんで突っ込まないでください。でも、最初のシミュレーションバトルでプレステとまってしまい、オープニング4回見ました。それで疲れました。(爆笑)やっぱり動機が不純だからですか? 「頼むから、ホテル内にもセーブポイント作ってくれー!」心の叫び。
「夏目さん、こんにちはーですう」 ポニーテールの少女が玄関から飛び出した。ただ、少女に見えるだけで、かなり若作りしている。詳しい年齢などは夏目は知らない。それが、夏目の担当の天藤美幸である。 「いらっしゃい、天藤さん」 「お風邪の方はいかがですか?」 「うん、熱は下がったよ」 「原稿は?」 「できてるよ」 「うわはあ、さすが、夏目さん。暇人ですね」 「暇ってねえ。まずはあがって」 「そのつもりですう」 美幸はうれしそうに部屋に上がった。 「トーマ様、コーヒー出しますか?」 「ああ、頼むよ」 セリナの質問に夏目は答える。そして、すぐに 「ドールだあああ!」 美幸は叫んだ。 「夏目さん、ドールなんて買ったんですか? でもどうやって?」 「違うよ、いろいろわけあってねえ」 夏目は美幸に事情を話す。それを聞いて納得したようだった。 「そうですよね、ドールが買えるわけないですよね」 「どうぞ」 「ありがとうですう」 セリナが運んできたコーヒーを美幸は受け取った。 「夏目さんのところに来ると、コーヒーが飲めるですう」 そして、彼女は噴き出した。 「これ、夏目さんのですう」 美幸は夏目の部屋に通ううち、彼の好みを知っている。夏目がコーヒーを入れる際、彼自身もたまに間違えていた。 「ごめん、セリナのやつ、また間違えたな」 夏目がカップを取り替える。そして、美幸が口をつけたカップで飲んだ。 「いつも思いますけど平気なんですかあ」 「大丈夫、そっち口つけてないから」 「そうじゃなくてえ、夏目さんの方ですう」 「天藤さんは知ってる人間だからね」 それでも信じられないような顔をして美幸は続けた。 「そういえば、夏目さんのお姉さんがコーヒー出したときも間違えて出されて、同じようなことやってましたけど……」 「姉さんも抜けてるからなあ」 「普通、女の方っていやじゃないですかねえ」 「……さあ、そこまではね」 夏目は黙ってコーヒーを飲む。 「あなたはどう思う?」 美幸がセリナに聞いた。 「わかりません」 セリナはにっこり答える。 「そうだよねえ」 「セリナ、なんか甘いの残ってなかったかな?」 「クッキーなら少し」 「夏目さん、そんな気を使わないでください」 「いいよ、俺が買ってもあまり食べないし」 「そうですかあ」 美幸が夏目のところにこまめに通うのは、このようにコーヒーとお菓子がついてくるからだった。だから一応断るのだが、遠慮なくいただいている。夏目も気にしない。作家と編集者という関係とは他に、二人は互いに友達だった。 めったに食べられないクッキーを堪能し、しゃべりたいだけしゃべったら美幸は満足する。 「では、夏目さん。次回の締め切りは再来月ですので、よろしくお願いしますう」 ディスクをかばんにしまって彼女は帰っていった。 「楽しい方ですね」 セリナは言った。 「そうだろ、たまに、にぎやかでいいんだ。彼女がくると」 「たまに?」 「そう、いつもだったら疲れるからね。だからセリナは彼女の真似をすることないんだよ」 「わかりました」
衣食住は保証されている。でも夏目が住んでいるのは安マンション。こりはどういうこった。すいません、未設定のままつくっているからです。いいわけすれば、衣食住を確保できる賃金をもらって、その中で割り当てているような感じ? 本日キューブを借りました。映画です。ホラー映画より怖いと思います。以上。 彼はいやな夢を見ていた。昔の記憶がよみがえるような夢。おかげで寝た気がしなかった。目覚めるとセリナが心配そうな顔で見つめている。かなり寝汗をかいていた。 「寝ている間に発作がありました」 セリナは言った。 「心配しなくていいよ、たまにあるから。それより、薬をとってくれるかい?」 「はい……」 それから夏目は昼まで寝て、遅い朝食を取り、パソコンに向かった。小一時間ほどで仕上げが終わり、ディスクを抜いた。そして、あわせたかのように電話が鳴った。 「もしもし?」 夏目は美幸かと思ったが、相手は森だった。夏目の顔が少し引きつった。 「ああ、夏目君? 風邪ひいてないかい?」 「夕べ熱がでました。もうさがったけど」 「そうかい。それはよかった。どうやら貴方に移してしまったんではないかと思ってね」 「あんたがひいてどうするんですか」 「すまないね。ところで、あさっての晩はあいているかい?」 「……ええ、あいてます」 「では、私の家に。何すぐ済むことなんだが、いいワインが入ったのでね。ああ、貴方はワインお嫌いでしたね」 「はい」 「じゃあ、濃いコーヒーを用意しておくよ。ああ、お土産はいらないからね。いつもいつも持ってきてもらって悪いからね」 「いえ、そんなわけには行きません」 「なら、チョコレートを一枚。普通のを」 「チョコレート?」 「私の好物の一つだよ。じゃあ、あさってに」 電話は一方的に切られた。 夏目はため息をつき、ソファーに腰掛けた。 チャイムが鳴った。 「天藤さんだ」 夏目は立ち上がって玄関へ向かった。
変換してそのままってあるんですよ。急いでいるときってなんか変換できません。ごめんなさい、いいわけです。暇なときにでも直します。夏目編、今週で終わりませんね、きっと。
「じゃあ、そのうち伺いますね」 おかゆと、卵味噌がのった盆を机にのせ彼はありがたく食べることにした。 「ずいぶんと本があるんだね」 本も一種の嗜好品である。書物の代わりにネットなどで調べたほうが断然早く、安上がりである。 「曾じいさんの本なんだ。昔はネットもあいまいだったからね」 井上が本を見回す。古い伝承の本、昔の歴史の本、世界各国の本も多い。ただ、どれもみな古く、ばらばらに並べられている。 「妖精の本? 神話を考える? 民俗学者というのはこういうものを調べるのかい?」 「それは小説用だよ。でも。論文書く時にも使っているしね」 「トーマ様は物知りだからなんでも教えてくれます」 セリナはうれしそうに言った。 「セリナは、妖精が宿ったみたいだね」 「妖精が宿る?」 「日本で言えば、ツクモガミかな。魂がこもるというか、なんというか。セリナはなんだか人間くさくてね」 「たしかに、セリナは普通のドールじゃないからね。フェアリードールか……」 「妖精人形……」 「新しい商品名にしようかな」 「売れるといいね」 「ああ、売れなかったら大変だからね」 食べ終えると井上は帰ってゆき、夏目は片づけをセリナに任せた。 「バイト先に電話しないとね」 夏目が電話はめったに使うことがない。だからいつも基本料金くらいしか払ったことがなかった。 受話器を取ろうとした瞬間、電話は鳴った。夏目は少し戸惑ってから受話器をとる。 「もしもし?」 「ああ、夏目さん。あたし、美幸ですう」 きんきんとした声が受話器から漏れた。思わず夏目は耳から放した。 「なんだ、天藤さんか」 「なんだって、ひどいですう。あ、明日うかがってよろしいですね」 「明日?」 「締め切りですう」 「あ、やべ」 「やべって、原稿できてないんですかー?」 「……いや、その、もう少しと思っていたけど、風邪ひいちゃって」 「いやーん。お大事にです。でも明日はうかがいますう」 美幸はそれだけ言ってがちゃりと切った。 「……」 「トーマ様、誰からですか?」 「ああ、編集部の天藤さん。明日来るって」 セリナが差し出した体温計を脇にはさめ、夏目はため息をついた。 「ああ、もう今日はできないな」 バイトに断りの電話を入れる。人は余っているから一週間来なくていいと言われた。 「どうしますか?」 体温計を取り出す。熱はまだ少し高い。 「寝るよ。お休み、セリナ」 「おやすみなさい、トーマ様」
この世の中の基本設定なんですが、とにかく最低限の生活ができる世の中っていうのです。だから、コーヒーは嗜好品なんで一日一杯とか……。(夏目は限度超えているから自分で購入)でも、あんまり制限すると面倒臭くなるし、コンビニで菓子すら買えない世の中ではなさそうだし。その辺は、適当にやるのであまり深く考えないでください。(逃避)
「このカレンダーの丸印はなんですか?」 朝食の片付けが済んだセリナが、ふとカレンダーを見て聞いた。数字しか書いていないきわめてシンプルなカレンダーに何日か丸印が書かれている。 「ああ、それは。赤い丸は編集部の人が来る日だよ。セリナはまだあったことなかったね」 「じゃあ、黒の丸は……」 「ああ、通院日だよ。一応ね」 「トーマ様、今日はじゃあ、通院日なんですね」 「そうだけど。今日は井上さんも来るし行かない」 「だめです。トーマ様、また発作が起きたら苦しいですよね、ちゃんと病院行かないとだめです」 夏目は困ったような顔をした。 「私はトーマ様の苦しむ姿は見たくないです。ちゃんと行ってください。留守番ならできますから」 セリナは、強く言った。普通ドールがこのように主に意見を述べることはない。 「……わかったよ。じゃあ、井上さんには普通のコーヒーを出してやってくれ」 「はい」 夏目の表情はどこか晴れず、しぶしぶと靴を履いた。 「じゃあ、頼んだよセリナ」 「はい、行ってらっしゃいませ」 病院に着き、受付に診察券を出す。夏目を見て事務員が少し驚いた顔をしたが彼は気にしなかった。 「今日は、定期ですね」 「はい」 彼はいつものように診察室に向かった。「遺伝子科」の前でノックする。 「失礼します」 返事を待たずに彼は入っていった。 「おや、珍しい。定期にちゃんとくるなんて」 森は笑顔で迎えた。 「今日はせがまれたんで」 森が椅子に座るように手で示す。彼はそこに座った。 「へえ、誰に?」 少し意外そうに聞いた。夏目は淡々と答える。 「同居人に」 「彼女でもできたのかい?」 「まさか、そんなんじゃないです」 「そうだよね。最近の調子は?」 「悪くないですけど、良くもならない、です」 「いつもとかわりない、か。薬は足りているかい?」 特にメモなどをすることなく、森はただいつものように質問した。 「そろそろなくなります」 「じゃあ、出しておくよ。ところで、貴方に話があるんだが、今度私の家に来てもらえるかな」 急な質問に夏目が少し黙ってから答える。 「……バイトがなければ」 「じゃあ、休みの日をここに記入して」 小さなメモ用紙と筆記用具を渡されると彼はそれに記入する。 「それと、バイトもほどほどにね。あまり強いからだじゃないんだから」 「はい……」
それから、彼は病院を出た。まっすぐ家に帰ると井上はもう来ていた。 「やあ……あまり元気じゃないみたいだね」 「井上さん……」 「お帰りなさい、トーマ様」 「ただいま、セリナ」 夏目はぐったりとソファーにもたれかかった。ちょっと具合が悪い、それくらいだった。 「トーマ様!」 「夏目さん?」 「……大丈夫、少し休めばよくなるから」 「顔色が悪いよ。病院で風邪でももらってきたのかい?」 そうだった。当の本人は気づかなかったが実際体温計で計ると高い熱があった。 「何か薬はあるかい?」 「だめ、俺、他の薬は飲めないから」 「飲めない?」 「今飲んでる薬、強くて。他の薬を飲むには医者に相談しないと」 「じゃあ、こうゆう時は、おかゆに栄養あるもの。セリナ、いい機会だから覚えようね」 井上は台所へ向かっていった。セリナは井上の後を追う。 「はい。トーマ様は寝てください」 「すいません、井上さん」 「それより、貴方のお姉さん、呼んだほうがいいかな?」 「……いいえ、姉さんも忙しいだろうから」 「そうか、じゃあ今日はおかゆを作ったら帰りますね」 「ありがとうございます」 「何、いつも惜しみなくコーヒー出してくれるお礼だよ。珍しいよ、いまどきお茶やコーヒーを出してくれるのは」 「母の教えです。これが礼儀だからって」 「へえ、さあ、貴方は横になってなさい」 しばらくして、足の踏み場のある夏目の部屋におかゆをおいて井上は言った。 「そうだ、今度僕のうちに遊びにおいで。妻と子供を紹介するよ」 「いいの?」 「もちろん。セリナも一緒にね」
一ヶ月たちました。今月もがんばるぞっと。今日はちゃっちゃっと終わらせて寝ます。
井上は週一回は夏目を訪れる。なにかとデータが必要で、上司の山田もせかしているためだった。 「今日は井上さんがきますよ、トーマ様」 セリナに起こされて夏目は起きた。夜間のバイトのため、いつも昼間まで寝ているのだがその日は早めに起こされた。 「おはよ、セリナ」 「おはようございます。トーマ様。いつもの、ですか?」 「ああ、いつものね」 いつもの、夏目用のコーヒーをセリナは毎朝入れる。それがだいぶ板についてきた。しかし、たまに、普通のコーヒーを夏目に出すことがある。夏目はそれでも、黙って飲んでいる。それを井上に話したことがある。彼は大変驚いた。 「ドールは一度覚えたら、間違うことはないはずなんだが……」 さらに、セリナは散らかった夏目の部屋の片づけをした。教えてもいないのに。これも井上に話すと、ありえないと言った。当初は驚くことばかりだったが、一ヶ月もたつと落ち着いていた。セリナは今では普通のドールのようにかいがいしく世話をしてくれる。ただ、いまだ夏目をマスターにした原因は不明であった。 「今日は、トーストにしますか?」 「ああ、頼むよ」 セリナは夜、充電のために寝る。そのため行動時間はほとんど夏目と同じである。 「あ、今日もリュウノスケさんが遊びに来ましたよ」 「あっ、ほんとだ」 ベランダをあけると、野良猫がひょっこり入ってくる。夏目は耳がいいが、セリナはもっと良い。まあ、ドールとして当たり前だが。夏目が猫を抱き上げた。 「お前、最近よく来るな? えさがないのか?」 キャットフードなどないので冷蔵庫からチーズをだして一切れやる。猫は加えるとさっと、夏目の腕をすり抜けて床に降り立ち、ベランダから出て行った。 「つれないなあ」 リュウノスケは夏目が勝手につけた名である。彼は迷い猫をみな、リュウノスケと呼んでいた。深い意味はなく、昔飼っていた猫がその名前だったからだ。 「あ、このチーズ、そろそろやばいな」 「それ、食べますか?」 「オムレツかなんかにいれてくれないか?」 「はい」 そして、見事に崩れまくったチーズオムレツがテーブルにあがった。 「……」 夏目が手本だとそうなるのだった。だからセリナの料理は上達しない。 「料理番組でも見せるかな……」
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