月と散歩   )   
DiaryINDEXpastwill


2002年08月29日(木) 種子島漂流記Ⅱ 19

『神の領域』

「…ひとの手は、様々 なものを創り出してきた。

 その探求心と好奇心をもって、
 光の射さない海の底も
 凍てつく世界の果ても
 神々の棲む星の世界でさえ、今では手が届く時代になった。

 けど。

 どんなに科学が進んでも、自然の脅威の前に ひとは 無力だ」


…なんて、使い古されたフレーズが 改めて僕の前に立ち塞がる。

飛行機は飛びませんでした。

30日になった いま現在も、台風は種子島の真西を自転車ほどのスピードで のんびりと移動中。

島の神様は、まだしばらく僕らを帰してくれないようです。


2002年08月28日(水) 種子島漂流記Ⅱ 18

『神様のとなり』

小さなトラブルはいくつかあったものの、試験自体は問題なく終了した。
機体は、打ち上げを待つばかり。

僕の仕事もひと区切り。
明日、名古屋に戻ります。

………

島にはいま、台風が近づいている。

仕事帰りに見た海は、北斎もびっくりの荒れ様で。
あのとき言ってた「6mの波」ってのはこれかぁ…と納得。
(2月24日『カナヅチ図に乗る』参照)


そうなると、気になるのは明日の天気で。
どうやら波は12m(!)にまで達するらしい。
…それって、もう津波では…(苦笑)。


ともかく、明日は帰り。
飛ぶのか!? 飛行機!


2002年08月27日(火) 種子島漂流記Ⅱ 17

『記憶のカケラ』

…今は いつ…?

………

あれは昨日か。

朝5時に帰って来て、釣りをして、試験がトラブって17時からの予定が24時からの出勤に変更になって…。

仕事は、電話番は「あんまり」なので 機体移動のクルーに入れてもらった。
午前3時。
試験の終わった機体が組立棟に移動を開始。

結局、終わって宿に帰ったのが朝6時。

前に寝たのは いつだっけ…?


今日は、昼から出勤。

試験の後処置。

………

『寝てない自慢』をする気はないし。
(半分は自分のせいだし)



今がいつか、んなことぁ どーでもいいや…。


2002年08月26日(月) 種子島漂流記Ⅱ 16

『1/2のサマーエンド』

ゆうべ、『とりあえず』出勤した僕は、それから3時間 電話番をして帰って来た。

………

僕は、ロケットをつくっています。

………

宿に帰ってちょっとウトウトした午前6時半。
僕らは埠頭に立っていた。


…釣竿を担いで。

………

僕らは、ロケットをつくっています。

………

試験はトラブルが続いて、現在8時間押し。
17時からの予定が、24時出勤に変更。

次に帰って来るときには、お日様も昇ってるでしょう。

僕の仕事は、地下官制室で 電話番。

………

日焼けの肩も、ヒリヒリ ヒリヒリ。


2002年08月25日(日) 種子島漂流記Ⅱ 15

『月のサーチライト』

現在、22:00。

これから極低温試験(兼、打ち上げリハーサル)の為、出勤。
本日、2回目の通勤路。

午前中は天候不良の為、試験準備はホールド。
午後からようやく機体移動となり、いったん宿に帰って態勢を整えて いまに至るわけです。

とはいえ、作業はもうほとんどないハズ…なんだけど。

「まあ、とりあえず出てこいや」

とのこと。

…『とりあえず』なのか、僕は?



高く、月も眩しく笑ってらあ。


2002年08月24日(土) 種子島漂流記Ⅱ 14

『果ての、向こうへ』

僕らは、考えてもしょうがないことばかり 考えてしまう。

「考える葦」とは うまいこと言ったもんだ。

それは、いつも脆くて 頼りない。
微かな風にも、揺れて 迷って 飛ばされて。

………

今日は、風も心配された雨も雷もなく、よく晴れた。
だけど戻してしまった機体は外に出ることはなく。

降って湧いた休日。

やりたいことはあるのだけど、雲のように浮かんでは消える悩みに捕われ、なにも手につかない。

ありもしない風に吹かれて、根無しの葦は 今日もまた。

………

出張、二日延び。いまんとこ。


2002年08月23日(金) 種子島漂流記Ⅱ 13

『嵐の予感』

ども。
変則勤務です。
いま帰ってきました(現在17:00)。

んで、21:30に また出勤。

…の、予定なんだけど。

………

機体にはいま、火薬類が付いているので雷がコワイ。落ちれば爆発するかもしれないのだ。
機体は外に出ているので、強い雨や風も よろしくない。
…『全天候型』なのに、意外と もやしっ子である。

………

そしていま。

種子島に雷雲が近づいているらしい。

18:00に最終の天候判断が行われる。
もし、試験中断となれば、また機体を戻さなければ…。



運命の分かれ道まで、あと30分…(大袈裟)。


2002年08月22日(木) 種子島漂流記Ⅱ 12

『空の飛び方』

ここ最近を読み直すと、なんだか僕は仕事をしてないようにみえるので(苦笑)。

………

24日に行われる、極低温試験(実際に燃料を入れる試験)作業に向けて、明日から変則勤務に入ります。
早朝から機体を射点に移動させ、接続替えをして、燃料を充填して…と やる事 目白押し。


…でも実は。

僕のポジションが未だにはっきりしてなかったりする。
カッコ良く言えば、フリーエージェント?(苦笑)

班長、僕の役目はなんなんでしょ?

………

とにかく、明日は5時起き。

さ。
気合、入れっかな? (寝坊しないように)


2002年08月21日(水) 種子島漂流記Ⅱ 11

『夏の跡』

今日は休日。
ホントの休日。
(先日は『移動日』に移動しなかっただけ)


だから僕は、堂々と 釣りに出掛けた。

雲は多いけど、暑からず寒からず。
水面を渡る風も穏やかで。

…さて。

最初に釣り上げたのは、熱帯魚屋さんにいそうな トロピカルな魚。
エンゼルフィッシュみたいに背ビレの長いヤツも釣った。

んんー!南国(苦笑)。

その後 釣り場を変えて、ちゃんと食べられる魚を釣る。2匹。

夕飯。
これも供養、と完食。

『生きる』とは『殺す』ことさ。


サンダル焼けした足のヒリヒリも気持ちよく。


2002年08月20日(火) 種子島漂流記Ⅱ 10

『月下の決闘』

…そこには、みんながいた。

専門学校の友達が揃ってる。
同窓会なんだそうだ。
そこは友達の実家で、下宿をやってる。
で、下宿人が会社のひと。
「奇遇だね」
だって。

…変な夢。


物音で目が覚めた。

…ヤツだ。

月の光を反射する流線形のボディ。
枕元、コーラの缶を出たり入ったり。

無視しようにも、ちと近過ぎる。

むう。
売られた(?)喧嘩は買ってやるさー!

で。

缶に入った瞬間、意を決して 雑誌で蓋して僕の勝ち。
あっけなく。

強くなったなー。

…。

でも、もうさっきの夢には戻れなかった。


2002年08月18日(日) 閑話休題Ⅲ

幸か 不幸か、わからない。

多くの日本人がそうであるように、僕には信仰する神がない。
でも、本当に信じるべきは何か は、心得ているつもり。

『二日目Ⅱ』

ムー大陸博物館。
そんな名前を見たら恐らく誰もが、『秘宝館』な雰囲気むんむんの奇しげなモノを想像するだろう。

僕もそうだった。
金持ちが道楽でやってるような、トンデモ博物館。
そんなのを見て、単調なドライブに笑いが生まれりゃいいや、くらいの気持ちだった。

…それが甘かった…。

建物は 小高い山の上にあった。
「へー。けっこうカネかけてんなー…」

この土地を買うだけでも相当なものだろう。
駐車場も、無駄に広い。


悪趣味な門の傍らに 受付らしき小窓。

「すみませーん。なか、見たいんですけど」

「はい。それでは拝観料の代わりに『御志(オココロザシ)』ということで…そちらのお賽銭箱に…」

「?…はぁ…で、普通は如何ほど…?」

「はい。以前はお一人300円いただいていたのですが、いまは『御志』ということで…」

「んじゃ、300円でいいんスね」

…なぜ賽銭箱?と思いながら二人分、投げ入れる。
パンフレットを貰って、門をくぐる。
…やけに広い。
目指す建物は、まだ見えない。
そして、なんだか雰囲気がおかしい。
それはさっきの受付といわず、道端に無造作に放置された工事機械といわず、すべてを取り巻く空気から感じ取れた。
なんだかわからないけど、イヤな感じ。
…目にみえない『悪意』。

パンフレットもおかしい。
仏典やら聖書やら日本神話やら、いろんな宗教の話を混ぜこぜにして、むりやり自らを正当化しようとしてる。
「この地は『浄妙国土』、『エデンの東の園』、『高天原』にあたり、すべての神仏発祥と人類の文明誕生の謎が秘められた…(パンフより抜粋)」
…おいおい、ナニ教だよ(苦笑)。


そのうち、売店に辿り着いた。
でも、そこもなんかおかしい。
商売っ気が全くなく、妙な視線ばかり痛いほど感じる。
入り組んだ構造。
ついたての向こうに続く、廊下の先。
どう見ても倉庫や住宅ではない、そこは一体なんですか?

連れが真っ青な顔して、具合が悪いと言い出した。
僕も気味が悪いので、目的の建物だけみて早々に立ち去ろうとなった。


『展示館』に入る。

意外にも新しいその中は、やはり人気がなく 効き過ぎのクーラーが気味悪さに拍車を掛ける。

あちこちに付いている監視カメラも気になる。

お目当ての『ムー大陸博物展』は期待通りに『秘宝館』なものだったけど、とても笑える空気ではなかった。

どうやら、この宗教(?)のメインがコレらしい。
大陸が存在した証拠という、発泡スチロールで作ったようなドグウも 石版も、大真面目なのだ。

別に、信仰を否定はしない。
それにしても、これはあまりにも子供だましだ。

けど、それを信じるひとがいるから成り立っている。
なんだか『拉致』とか『監禁』とかいう熟語がちらついた。
いや、ホントに(苦笑)。
だって、行きは階段なのに帰路だけエレベータ。
しかもやたら矢印で誘ってる。
「こ…これは罠か…?」
逃げるように(実際、逃げたんだけど)来た道を戻り足早に門をくぐる。

…と。

ちょうど、バスで到着した信者らしき御一行と 鉢合わせ。

まあ、もちろん何事もなかったんだけど…。

車に乗り込み ふとバックミラーを見ると、老若男女数十人がこっちに向かって合掌してる…!

………

信仰を持っている人は、きっと強いんだろう。
弱くなった時、すがる気持ちもわかる。
だけど、ここは間違っている気がする。

けど、ここを選んでしまう程 追い詰められた気持ちを思うと、やりきれなくなる。


そういえば、ここの看板には『世界平和』をうたってあったけど。

祈っただけで訪れる平和なんて僕はゴメンだ。

………

結局 しばらく車の中は重い話題が続いた。

鹿児島に一泊して、また日常に戻る。

………

いまでもときどき、あの中にいた高校生や、親に手を引かれた小さな子の瞳を思う。

僕は『ここ』で良かったと、エゴを剥き出しにして。


2002年08月17日(土) 閑話休題Ⅱ

強すぎる好奇心は、いらぬ災いを呼び込む。
それが身に染みてわかった…

 『二日目』。

砂に埋もれて身もココロも軽くなった僕らは、指宿からさらに南、開聞岳を目指すべく車を走らせていた。

池田湖辺りで、町営(!)の流しそーめん施設で昼食。
初めてで面白かったけど、味は普通(当り前)。
開聞岳を臨む景色も、思ったほどでなく。

…んー。つまんない…。

そんなドライブに飽きてきた僕の目が見つけた看板。

『ムー大陸博物館⇒』!
何ッ!?

嫌がる連れを無理矢理口説き落とし 向かった先は、僕の想像を遥かに超える世界だった…。


2002年08月16日(金) 閑話休題Ⅰ

試験が無事終り、一旦名古屋へ帰ることになった。
…とはいえ、金曜に帰り 土曜は名古屋、日曜にまた戻る。
ちなみに週休二日制で、土日は基本的に休み。

つまりは、そういうことで。

この3日間のバカンス、僕は鹿児島で過ごすことにした。

 『一日目』

空港で車を借りて、指宿(いぶすき)へ向かう。
名物「砂蒸し風呂」。

僕は『重圧』が大好きだ。
物理的にも、精神的にも(苦笑)。
布団も、羽毛より 綿がしっかり詰まったほうが落ち着く。

で、砂蒸し風呂。
温泉のたっぷり滲みた熱い砂に埋もれて、僕の日常も溶けて流れた。


ふー。


2002年08月15日(木) 種子島漂流記Ⅱ 9

『空の彼方』

ロケットの話。

今日は 最初の大きな区切りの試験で。
機体に模擬の信号を入れて、実際の飛行をシミュレートする。

火こそ付かないが、機体は「あ、飛んでる!」と勘違いしてエンジンを振ったりする(姿勢制御の為)。

なんだか、楽しい夢をみて手足を動かしてるネコのようだ。


…僕も想像する。
青い空に雲引いて 星になってゆく、コイツの姿を。

もう触れることが出来なくなると思うと、とたんに愛おしくなる。

しっかり頼むよ、とランプの明滅を眺めてた。


…今が、最後の引き際なんだろう。
そんなこと思いながら。


2002年08月14日(水) 種子島漂流記Ⅱ 8

『海の雫』

今日、古い友達から電話をもらった。

みんな立派なオトナになって、気を遣いあって いたわって。

ホントに聞きたかったのは「なにしてんの?」じゃない。
お互い最後のボタンに手をかけて、この関係を終らせたくないと思いながら
相手がボタンを押してくれることを 願ってる。


…もう、ずいぶん前のこと。
耐え兼ねて、こぼれてしまった涙の理由を 見て見ぬフリしたあの日から、
友達には戻れないことはわかってた。

痛みから逃げるように唇で受け止めた、
あの海の味も もう薄れてしまった。


僕は、このボタンを押すよ…?


2002年08月13日(火) 種子島漂流記Ⅱ 7

『おもちゃの兵隊』

「何にも増して重要な事は、何にも増して言い出しづらいものだ」
とは、スティーブン=キングの言葉。

………

大人は、いつも最後の言葉を濁す。
「察して」なんて無茶な話だ。

もっと話してくれたら、もっとわかるんだけど。

………

僕らはいつも、察して 考えて 走り回って自己満足。

結果、あなたの思うようにならないのなら
どうか入り込むスキを与えてください。
もう少し、時間をください。


僕らは、話す言葉も 考える力も持っているのだから。

………

現場作業員と兵隊は似てるな…って話。+α。


2002年08月12日(月) 種子島漂流記Ⅱ 6

『星の下』

ただいま。
たった、いま。


トラブルです。
ついさっき(23:00)まで、トラブルシューティング。

こういった 非定常作業は嫌いじゃないんだけど、ゴールの見えないマラソンみたいで 疲れる。

で、結局なにが悪いのか はっきりしないまま、問題は明日に持ち越し。

むう。
なんだかなあ。


VAB(ロケット組立棟)から出たら、もうすっかり真っ暗。

そういえば、名古屋の夜空はなんだか 白い。
それに馴れると、夜に星があるだけで嬉しくて。



帰りの車を待つ間、ぽけーっと空を見上げてたら 星が一個、ゆっくり 落ちた。


2002年08月11日(日) 種子島漂流記Ⅱ 5

『井戸の中』


「井の中の蛙、大海を知らず。
…されど、空の高さを知る。」



まさに、そんな感じ。



そして今日も、『組織』の井戸の中…。



.


2002年08月10日(土) 種子島漂流記Ⅱ 4

『凪(なぎ)の大汐』

とても青くて広い空。
澄みわたる。


それとは関係なく、ズルズルと 寝て過ごす。


休日。

なんにも ない日。
なーんも、しない日。


そういえば仕事だけど、相変わらず小さなトラブル続き。
まあ、まだなんとか許容範囲内。
…とはいえ…。


とはいえ、今日は休日。

湯舟に ふにゃらと浮かんでいると、突然すぐ外で大きな音がした。
物騒なご時勢、こんなトコまで過激派が!?
はたまた ただの(?)ラップ音か…?
慌てて外に出る。

…と、そこにはロケット花火を手にした地元高校生が。


夏、だもんねぇ。


2002年08月09日(金) 種子島漂流記Ⅱ 3

『真夜中の嵐』

…。
……!

気配。

そっと、スイッチに手を伸ばす。

その光が押しやった闇に隠れるように 『気配』も消えた。

…。

沈黙。


ヤツめ…ついに、ここまで…!


息を殺して気配を探る。
…どうやらドアの影に潜んでいるようだ。

武器…!
探す僕の目に飛び込んできたのは、作業資料の束だった。
適当に数枚を丸め 意を決して『気配』に忍び寄る。

ヤツは そこにいた。

く。ひとりとは。
ナメんなーっ!


深夜に響く怒号と奇声。

…10分後。

見事ヤツを叩き出した資料は『聖剣』としてゴミ箱に封印された。


2002年08月08日(木) 種子島漂流記Ⅱ 2

『トビウオの少年』

東 昭(アヅマ アキラ)という、おじいちゃん。

僕が尊敬して止まない人だ。

おじいちゃんなんて馴れ馴れしく言ってしまったけど、ほんとはとても畏れ多いことなのだ。
彼は、非常に高名な航空力学者である。
もちろん、直接 お目にかかったことなどない。

---

初めて出会ったのは、僕がまだ小学生の頃。
ブラウン管の向こうに、当時の僕より子供みたいな瞳をしたおじいちゃんが映っていた。

たしか、『トンボになりたかった少年』とかいうドキュメントだったと思う。

思えばそれが、僕が空に興味を持ち始めたきっかけだった。

---

学生最後の夏休み。

初めて種子島に来たときに、フェリーからトビウオをみた。


…トンボになりたい と思ったアヅマ少年と、そのときの僕は『同じもの』をみてたのかもしれない…なんて、思い上がりだろうか。

旅から帰って、トビウオのカッコ良さを熱く語る僕に友人は、

「アレって、逃げてるんでしょ?外敵から」

…そうだけど、さ。

それでもトビウオの素晴らしさを説く僕の瞳は、きっと少年の それだった。

---

今日、なにげなくみたテレビに、東さんがいた。

相変わらず、おじいちゃんだった(笑)。


そしてまだ、少年だった。



…僕は、どうだろう。


本気でトビウオになりたいと思った、あの頃と同じ瞳をしているだろうか。


---

夜。

カーテンを開け放した窓からは、びっくりするほどの星がみえた。


2002年08月07日(水) 種子島漂流記Ⅱ 1

『微熱の風』

もう、昨日のこと。

出張の準備をまったくしていなかった僕は、結局 荷造りに追われ一睡もしないまま。

折しもその日の名古屋は37℃を越える猛暑。

重い荷物を抱えて空港へ向かう。

けど、寝てないのに気持ちは軽い。
…あ。寝てないからか。

飛行機に乗ってちょっと寝たら、もう鹿児島だった。
…飛行機は速くて味気がないから嫌いだ。
(ってか寝過ぎ)

鹿児島は32℃とのことだったけど涼しく感じた。

…おかしい(名古屋が)。

―――

そんなこんなで種子島。

今日は手順書の読み合わせで一日が過ぎて。


2002年08月02日(金) Forever Friends


小学校からの友達で、いまだに地元に帰ったときはよく遊んだりする連中がいる。

男女あわせて7人で、こんなに長い間つるんでるってのも、ちょっと珍しいかもしれない。

―――

先日、久しぶりに そのひとりから電話をもらった。

お盆、帰ってくるならみんなで会おうよ とのこと。


「やー。その頃はちょうど出張で種子島だから、今年は帰れないや」

「そっか…仕事じゃ、しょうがないよねー…」

しばらくぶりだったので、こっちの話やら向こうの話、ダンナさんの話や彼女の話なんかで盛り上がる。


…で、思いもかけず、突然 話はディープな方向へ…。

―――

7人のうちのひとり、Aさんが
同じく仲間のひとり、Bくんと付き合うことになったらしい。
ともすれば結婚か?なんて。

それだけ聞けば、めでたい話じゃないか、で終わるのだけど…。

実はBくん、電話をくれたCさんと
Aさんは僕と、一時期お付き合いをしていた という経緯があり。

まあ、お互い過去の話だし、Cさんに至っては新婚の身なので いまさらどうってわけでもないんだけど、
なにもそんなせまいコミュニティーで恋愛しなくてもいいじゃない…って話で。

さらに、オトナな恋愛の『ドロドロ』がついてまわるから、よけい厄介だ。

―――

「お盆、なーんか二人に会いづらいなぁ…」

それは僕も同じだ。
Aさんと別れてから感じた気まずさが、また複雑になる。
いつか会うだろうことを思うと、いまから気が重い。

―――

僕は小学校から中学に上がるとき、親の転勤で みんなとは離れてしまったので
お互いの細かい事情まではわからない。

7人で共有した時間は、僕が一番短い。

中学に入った後も よくみんなで集まったりしてたけど
僕と他の6人の間には、見えない時間の壁があった。

『7人の時間』。
僕は、小学校のままで止まってるけど
6人はその先も一緒に時間が過ぎていて。

別にそれでギクシャクしたことはないけれど、なんとはなく、別々に大人になっていく違和感みたいなものを感じていた。

―――

「いいんじゃない?フツーにしてれば。二人もそれがありがたいと思うし」

なんて、当たり前な事しか言えない自分に、
そしてまるで安っぽいドラマのような状況に、腹が立つ。

正直、こんな面倒くさいなら、絶ってしまおうかこの関係…なんて思ったり。

僕らの過ごした20年が、こんなことで崩れてしまいそうなのが とてもくやしい。

―――

きっと、こんなのは世間一般よくある話なんだろう。

みんなは見て見ぬふりして やり過ごしているんだろうか。
僕らが、気にしなくていいようなことまで気にして、勝手に苦しんでるだけなのか?


だけど、僕ら『友達』だろ?



…その言葉も、安っぽく思えて。



2002年08月01日(木) 打ち上げ花火は 横から見たかった


当たり前の話かもしれないけど、
進学をしたり 就職したり、環境が変われば まわりの友達も変わる。

けど、『一生の友達』ってのもいるもので。

―――

小学校の時の友達。
高校の時の友達。

僕は、そういう『~の時の友達』という言い方が、どうもニガテだ。

なんだか、そのときは友達だったけど いまはもう…っていう響きに聞こえて。

だから僕は、『高校の友達』とか『高校からの友達』ってな具合に言うように心掛けている。ちいさなこだわりだけど。

―――

ひとは大きくなるにつれて、触れる世界も 人も 処理しなきゃならない情報も、だんだん増えてくる。
そのなかで触れ合った人みんなと関係を持ち続けようするのは、とてもじゃないが無理な話だ。

本当に誰かと付き合うってことは、相手の気持ちの一部を自分のなかに取り込むってことだと思う。
それは時として、けっこうなココロの負担になる。

『許容量』を超えて ひととつながりを持とうとしたら、それはとても希薄な関係になってしまうだろう。

だから僕らは、自分の手に余る関係は断ち切ってしまおうとする。
自然と、付き合いを選択している。

それも仕方が無いことだと、思う。


悲しいけれど。

―――

『友達』という言葉の定義を考えることがある。

気が合えば、話が合えば友達か?
心を許し合えれば友達か?
素の自分で付き合えれば そのひとは友達か?


男女の間に友情は在りえるか、なんてことを熱く語り合ったこともある(笑)。

…いや、あるでしょう。
ただ、それは同性の友情とはちょっと性質が違うんじゃない?
ちょっとバランスが狂っただけで『愛情』に傾いてしまう、とてもナイーブなもので
一度『愛情』が入ってしまったら、二度と元の『友情』には戻れない関係…。


…『愛』ってなんだ?
『恋』と どう違うんだ?

無責任にするのが『恋』で、責任が伴うのが『愛』?


…オトナになれば、わかるのか…?
わかるようになれば、オトナ??

…。

ああ! もーめんどくせー!!

―――

そんな僕も、いつのまにか大人になった。

…社会的には。

だけどココロは、いまだにあの頃のまま、足踏みを続けている。


りべっとまん |MAILHomePage