夕暮塔...夕暮

 

 

深い夢から - 2004年09月07日(火)

深い夢から醒めるように悲しくて遠くから渇く きみよさよなら



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雨上がり - 2004年09月05日(日)

やわらかに鈴の音の満ちる夜の底 雨上がり遠い国へと歩く



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白いエンジェルストランペットが、俯くような形で咲いている。雨がやんで虫の声、駅までのゆるい坂道をしんしんと下れば、どこか静かで深いところへと向かうような感覚。


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やや消耗している - 2004年09月04日(土)

同僚が倒れて雪崩れこんできた分を引き受けて、猛暑の中出かけて別件の新しい仕事の顔合わせや引継ぎ、その合間に色んな人と会う。気付いたら体重が6㎏位減っていた。近々パーティや披露宴に出席したり水着になったりする予定があるから、特に困るような変化ではないとはいえ、それにしてもこんな数字久々に見た気がする。
明日は友人が家に来る、今月末の少し長い休暇を一緒に過ごすことになっている、その打ち合わせに。彼女は電化製品の折り込み広告を見るのが好きなので、何となくここしばらくの分を抜き出して、まとめてテーブルの上に置いておく。


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振るためにある - 2004年08月26日(木)

さよならと振るためにある右腕を あなたへと使う胸の痛さよ



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天頂近くまで広がった、滲むような朝焼け。遠くの淡い紫。多分何を以てしても再現できない。これで本当にさよならだ、お前のためとは思わずにいたかったけれど、本当はずっと知っていた。


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- 2004年08月25日(水)

少し小さめの箱に納まって布をかけられたルルは、私が幾度撫でてもぴくりともせず、眠りかけの時のうっとりしたような表情のままで時間を止めてしまっていた。大きく垂れた耳の柔らかさも、水を薄く張ったような黒々とした瞳もそのままなのに、どこもかしこも信じられないくらい冷たい。
「連れて行きたくないねえ、…」はたはたと涙を零すと、妹も鼻をすすって「うん」と頷く。ペット用の葬儀場へ向かう道の輝くような静けさが、今はただ残酷で切なくて、永遠に着かなければいいのにとぼんやり思う。
最後のお別れをと職員の方に促されて、撫ぜながら声をかけようとするのに、必死に搾り出しても嗚咽しか出てこない。…さよならだよ、ごめんね、ありがとう、ありがとう。
わがままで落ち着きがなくて、いつまでも仔犬みたいな性格だったけど、本当に人間が好きで、私に大切なことを教えてくれた。どうしてもう明日から会えないんだろう、お前が家に来た十数年前の午後のことを、きのうの事みたいに鮮やかに憶えているのに。


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再び、帰省 - 2004年08月24日(火)

…大往生だろうけど、でも、かわいそうで、気の毒で、…。
電話の向こうで祖母が泣き崩れる。途切れ途切れに受け答える自分の声にどんどん涙が混じっていくのを聞きながら、ほんの数日前に実家の車庫で別れたばかりの、老いたビーグル犬の額の感触を反芻する。


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日輪 - 2004年08月22日(日)

日輪の如く輝けと名付けられし 君の笑むたび夏はきらめく



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秘密に - 2004年08月20日(金)

あたたかなものは誰にも見せぬまま 閉じ込めてあるこの左胸



まだあなたに秘密にしている左胸 あたたかく柔いものが息づく




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緑陰に足を - 2004年08月15日(日)

葉月半ば越える日は深き緑陰に足を浸してサイレンを聴く




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風涼しく、緑濃く、犬は木陰でゆったり昼寝している。

この小さな島国から戦争を経験した人が絶えたら、8月15日はいつか何の意味も持たず、ただの月半ばを知らせるだけの日になるのだろうか。私は遠くそんな夏を見るのか、今は高波が押し寄せるように悲しい、海外で戦死した外祖父の兄弟たちを思う季節でも。





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紫禁城 - 2004年08月08日(日)

午前は紫禁城へ。保和殿の内側を覗き込めば胸が疼くような感動を覚える、ここで殿試が行われたのかと思うと、訪れるはずのなかった処にとうとう来てしまったという気持ちと相まって、気付いたらもう陶然としている。それでぼんやりしていたら、同行者と暫しはぐれてしまった。


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