白い木蓮の花の下で ~逝くときは白い木蓮の花の下で~ 目次|過去|未来 【検索からお越しの方へ】
日記で再三登場している私の愚弟は この夏、事故に遭って左手の親指と人差し指を失った。 いずれは義指をつけることになるのだが まだ治療とリハビリの最中なので 今のところは3本指の男・・・なのである。 ちょっぴり不幸・・・プチ不幸な話ではあるのだけれど 事故当時は「手首から先を全部切断します」 「たとえ指が残っても指を動かすことは不可能です」 などと診断されていたので、それを思うと、ありがたい話だ。 愚弟、母、私・・・家族は少しづつ現状に慣れつつある。 「中指が、よく動くようになったねぇ」 「でも小指の方がいい感じかな」 ・・・などと、今日は姉らしく彼の指について観察をしていたら 彼から「ある指摘」を受けた。 「姉ちゃん。悪いけど、それ中指ぢゃなくて、薬指や」 なんてこったい。 私は弟の3本並んだ指の真ん中を「中指」だと認識していたのだ。 その指は第四指・・・薬指だと言うのに。 「ぺつに、えぇで。リハビリの先生もよく間違うし」 なんと理学療法士でさえ彼の薬指を指して 「さぁ、中指動かしてください」 などと言ってしまうことがあるらしい(流石に毎回ではないようだが) 人間の判断能力はアテにならないものだなぁ・・・と思った。 指が3本並んでいたら、真ん中を「中指」だと思ってしまう。 指が3本並んでいたら、はしっこの指を「中指」だと認識できない。 ↑ただし、どうしたものだか小指だけは、それと識別できている。 この衝撃的な現実を突きつけられた私達一家は 彼の3本指を「どう呼ぶべきか」について議論をはじめた。 「はっしっこにある指を中指とは呼びにくい」とか 「では『第一指』とか専門的に呼ぶのはどうだろうか?」とか 「いやいや。それでは、かえって変だ」とか 「小指は同じポジションにいるから今も自然なんだなぁ」とか 「まぁ義指ができて見栄えがととのったら変わるんぢゃない?」とか 「包帯グルグル巻きのおかげで袖が通らない服があるんだよなぁ」とか 「でも袖が通る服は、手が治った時は伸びてて着れなくなってるな」とか 私達3人は少々奇妙な議論を戦わつつ いつしか議論の論点がズレてくるのを心地良く感じながら ・・・さんざん笑った。 笑えるところまできたんだよなぁ。 さくらももこのエッセイのタイトルではないけれど 「そういうふうにできている」のだと思った。人間って生き物は。 ちょっと嬉しい発見だった。 |