言葉 |
今日読んだ本は、 グッドラック 戦闘妖精・雪風 神林長平著 ハヤカワ文庫
この作者は、素晴らしいまでの言葉を駆使する能力を持っている。 ストーリィの骨子は、異世界からの侵略者と、人間との戦いという、いたってシンプルなものだが、 着目点が、一般的なSFとは異なっている。
すなわち、コミュニケーションの断絶、および、生存本能である。
まったく生活様式が異なるものとの生存競争。 相手が何を求めているのかが、そもそも解らないという、基準点が無い状態での戦闘。 殺らなければ殺られるという、話し合う余地すらない相手との生存競争。
こういったところから、話は始まる。 生命とは何か。 生きるとは何か。 存在そのものがあいまいな敵と戦うには、どうしたら良いのか。
そういった哲学的な内容を、直感的に解らせる語り口調と、ストーリィの運び方は、見事。 物語中盤、雪風と零がジャムとの会話を行うシーンは、 読んでいて背筋がぞくぞくするほどの臨場感があった。 そして、ラストシーン。 まるで、一枚絵を見ているかのような情景描写は、圧巻。
恋人、友人、相棒・・・そういったものとは一線を画す零と雪風の関係を、 作者は登場人物の口を使い、「愛」と呼ばせる。
相手を自分自身として感じ取れる能力。 生き残りのためならばその自分の一部を犠牲にすることもいとわない。 こういった能力も、愛するという能力の一部だ、と。
まさに、その通りだと思う。 つまり、相手の思考や行動全てを認め、許し、受け入れること。 自分とは違う個であり、かつ、自分の一部であるということ。 それは、盲目的なものではなく、むしろ逆である。 なぜならば、相手の全てを受け入れるということは、相手が自分の一部だからである。 また、逆も言える。自分も相手の一部であるのだ。 自分の行動だから、全て理解できるのであって、理解できなければ、それは自分ではないということになる。
言葉で説明するのは難しい。 しかし、神林長平は、やってのけている。 本当に凄い小説家だ。
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2001年12月30日(日)
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