“酩酊者は迷走する”...datenshi

 

 

マイボールとおじいさん - 2002年04月06日(土)

ある日、おじいさんは目覚めた。

自分はこれでいいのか?って。

おじいさんは普段から慣れ親しんでいる
マイボールを眺めながら、そう呟いた。

実直に平凡に生きて、孫にも恵まれ、
毎晩の焼酎水割り胡瓜入りが楽しみで、

そうやって85年生きてきた。

マイボールはいぶし銀の輝きを見せている。
それほど速くもなく、おじいさんが狙った通り真っ直ぐに、
レーンの上を転がり続けた。

はじまりと到達点が常に一直線なレーンの上を。

何度も何度も、ただひたすらに真っ直ぐに
転がり続けたのだ。

それはまるで、おじいさんの人生そのものだった。

だけど・・・

おじいさんは呟く。

わしはいつだってスペアな生き方だった。
ガータに落ちることもなく、ソツもなく、
目先にある残ったピンを確実に収めることだけを
生きる糧にしてきた。

ストライクなんて、一度もなかった。

おじいさんの投げる球があまりにも真っ直ぐすぎたからだ。

マイボールを見つめながら、おじいさんは思う。

思えばわしの人生なんて、行き先が決まりきっていることに
何の疑問もなく、まるでこいつのようにただ転がり続けた
だけなのかもしれないな。

だけど、

ただひたすらに真っ直ぐ転がり続けただけのマイボールは、
レーンとピンとに磨かれて、
朝日に輝いていた。


...




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