「………なぁ」
「んー…?」
ふわりと煙草の煙。お前はいつもそうだ。俺の部屋なのに、俺以上にくつろいでる。
「お前さ、カノジョとかいないわけ?」
こっちを向いて、
「居たらお前んトコなんか来ねーよ」
「…それもそうか」
「…………んー」
また黙る。
時々、こいつが何考えてんのか分からなくなる。
どうせ、何も考えちゃいないだろうけど。
「おいどうするよ? 今からバス乗んなら最終でギリだぞ」
「んぁ、もうそんな時間か? 悪ぃ、長居しすぎたな」
見上げる時計はすでに10時を回る。
「俺は構わねーけど…」
こいついい加減免許でも取ればいいのに。市外の自宅生がバス通ってどうよ。
「……んー…すまん、泊めてくれ」
「おっけ」
「今度昼飯出すな」
携帯を取り出してカチカチやってる。家族の誰かにメールか。
「あぁ、じゃあ学食のカルビ丼な」
「お前あれ高いんだぞ」
「良いだろ、どうせ学食なんだ」
「ま、いっか。俺明日午後からだし…午前中に帰るよ」
携帯を折りたたんでカッチャリ。小気味良い音だ。
「おー。じゃあ決まり、こないだの続きやろーぜ」
「よっしゃ。76勝71敗で俺が勝ってんだよな」
「だから今日で巻き返すんだよっ」
俺は部屋の隅からゲーム機を引っ張り出す。中にいつもの格ゲーを確認して、テレビの前に座布団を二つ。
それぞれ椅子から、ベッドから、俺たちはそこへ移動して胡座。
「俺の連勝記録が伸びるだけだぜ」
「何言ってんだ、5勝差くらいすぐ追い越すって」
夜はこれからだ。