小指の爪
小指の爪は ときどき泣いているが 誰にも気づかれない ことに泣いているのではなく
誰にも気づかれないことに泣くのは もっと大きなものだ
小指の爪はときどき 小指の爪でなくなる 誰も見ていないときに よくなる
親指の爪のことはよく知らない 小指の爪が好きだ
小指の爪は 自分の名前が欲しい 小指がなければ 小指の爪もない 小指の爪は小指に属している らしい
上腕二頭筋みたいな おおげさな名前はいらない
何かの役に立つことは恥かしいと思っている 何かの役に立つことは恥かしいことだと以前 鼻クソが言ったのを真に受けている 小指の爪は 他に友達を知らない
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