あまいせいかつ

2002年01月15日(火) 桜あんぱんの思ひ出

アタシは基本的にドラマを見ない。
そんなアタシが最近見ているドラマは「恋のチカラ」というドラマだ。
主演は堤真一さんである。
堤さんは、TPTというシェークスピアを中心とした演劇集団に属している、舞台で有名な俳優さんだ。以前は、ほとんどドラマにでることはなかったが、最近はちょくちょく出ているようなので彼の作品は見ることにしている。
つまり、アタシは堤真一さんのファンである。

舞台での堤さんは、その演技の素晴らしさはもちろんのこと、アタシが特にひかれるのは、カーテンコールのときの彼の醒めたような目だ。
どんな熱い演技をしていても、カーテンコールのときの彼の目は冷たい目をしている。

かつてはよくその舞台を見に行っていたものだが、TPT専用の劇場がある森下という町は大変庶民的な昭和初期の情緒を彷彿とさせる町である。
そして、その森下にあるベニサンピットという劇場は、大変、昭和初期の情緒を彷彿とさせる(以下、めんどくさいので「ぽんこつ」と略す)劇場であった。

ある日、アタシは友達夫婦とベニサンピットの前で待ちあせていた。
夫婦がチケットを持っていたので、会場の前で待っていたのだ。
約束の時間を過ぎても友人夫婦は来ない。
ベニサンピットは閑静な住宅街にあり、ベニサンピットの入り口にはまだ誰も来ていなかった。
誰もいないことだし…。
しびれをきらしたアタシは、空腹を満たすためにこっそり、ジャンボ桜あんぱんを食べ始めた。
座るところもないので、道路の真中で立ち食い状態だ。

誰もいないはずなのに、なぜか視線を感じる…。
なぜだろう…。
ふと見上げると、ぽんこつ劇場の2階の窓があいていて、堤さんがアタシを見ているのだ。
しかも、アタシの好きなあの醒めた目つきで!
大人の恋の始まりは桜あんぱんから♪♪♪という勝手な方程式がアタシの脳裏でタコおどりをはじめた。

しかしながら、その方程式の間違いに気づくまでは数分もかからなかった。
劇団員がかわるがわる、アタシを2階からのぞきはじめたからである。
そう…。
全員が、あの醒めた目つきでアタシを見ていたのだった…。

穴があったら入りたい(泣)
ジャンボ桜あんぱんじゃなくて、おとぼけ豆にすれば良かった…。
さまざまな思いが錯綜したが、時すでにおそし。

あれ以来、アタシは堤さんを見るたびに口の中が甘酸っぱくなる。
今では懐かしい、桜あんぱんの思ひ出のせいだ。


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