正しいもの、なんてありはしない。 そんなものは人と時代が勝手に決めているものに過ぎない。
だけど”正しいもの”があって それだけを信じていればいつか 光となると思っていた。
ひさしぶりの休みだからと街だ。 剣の修理をだしたし、酒場で一息つくか・・・・。
いつもの酒場は、たくさんの人で賑わっている。 どこの部隊も今回の作戦成功で勝利に酔いしれているのだろうか。カウンターそばの席があいているのを見つけそこに座り酒を注文する。
今回はかなりシビアな状況だったにもかかわらず、制圧ができた。確かに戦いは苦しいものであり、皆がその勝利を歓喜するのは当然だろう。 しかし、なぜだか自分はその喜びがあまりわいてこない。 なにかがひっかかる。 なにかがぼんやりしてる。
「親父、同じのもうひとつくれ」 「あいよ、ほどほどにしとけよ」 「酒屋の親父がすすめるのやめてどうすんだよ」 「お前は店の酒を全部飲みかねんからな」 店の親父の愛想の悪い声も耳を素通りし空のグラスに目を戻す。 「・・・・」
「空いてるか?」 「・・・?ああ。・・・・お前は」 「覚えていたか。生きてたんだな。 親父、すまんがこいつと同じのをもう1つくれ」 「ひでぇ、殺されてたならひどい言い草だ。」 「狂信的なヤツで長生きしているものおらん。 ましてや、お前のような手の早いものはのたれ死ぬと思っていたが。」 「・・・あんた、ケンカ売ってんのか」 「以前のお前だ。嘘を言っているつもりはないが。」 「相変わらずだな。まぁ、いい。ほら、酒きたぜ。乾杯。」
無愛想にかちりとグラスをあわせる。 こいつとは教団に雇われた初めころに何回か仕事が一緒になったことがある。 俺よりも4、5才は年上だろうか、細いからだのわりに恐ろしく切れる剣を振るう。頭も切れ、物静かなやつで当時駆け出しだった俺はかなり世話になっているのであまり大きなことは言えない。 自分と似ているところがあるのか、どこか気が合いつるむことが多くなっていたが、契約期間が切れるとさっさと消えてしまっていた。 より、よい雇い主さえいれば次のところに行く、ということは傭兵では当たり前のことだ。義理、人情など持ち合わせるものの方が少ない。 やつは、ここを抜けた後、レダやリーヴェ、ブラードなどいろいろなところを巡っていたらしい。
「まさか、イルまでも来てるとはな。あいかわらずの宗教嫌いか?」 「お前は相変わらずの宗教馬鹿か?イルの人ははそうでもないのにな。」 「さあな。これで俺らの生活がよくなるなら何でもやるさ」 「お前、少し変わったな。相変わらず手は早そうだが、穏やかになったか。いや、むしろ、だいぶ染まったか。」 「どうだか。それにしても、どうしてこんなところへ来たんだ?また、うちに雇われたのか?だったら願ってもない話だぜ。」 「それもあるが。最近のこのあたりに対する空気が気になってな。」 「そりゃ、地方はあちらさんの味方だらけだから、ここのいいうわさはないだろう?自分らが好き勝手虐げてるくせにな。」 手にもったグラスの中身を一気に飲み干す。 ヤツは俺を見て、言った。 「・・・、お前も本当はもう分かってるのだろう? 最近の教団のやつらの目を。 何を見ているのか。いや、見させられてるのが正しいのか。」 「・・・・・」
-------------------- やたら中途半端。素直に寝なさい、自分。
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