泣かないのが目標だった。
上を向けば涙はこぼれないかもしれないけれど、みんなの顔を見ると泣いてしまいそうだった。 泣く理由なんて、ない。 そう思われてたらいやだったから、黙って下を向いてみんなの輪から離れてひとりでいた。
だけど。 ふいに肩をポンと叩かれて、いつもの調子で「doだった?」なんて言われたらさ。 黒板の、数字にしてほしくない数を見てから言われたらさ。 あたしの脆い意思なんて、すぐ崩れてしまうんだ。
声を出すと、一緒に涙まで出そうだったから、首だけ振った。 髪、長くてよかった。顔が隠れてバレないだろう。
…と、思っていたのに。 平気かな、と思って「ダメダメだよ」なんて言おうと口を開いたら。 かわりに目から水がどばどば流れてきて。 まわりのみんながあたしを抱きしめて。 せめて泣いても声を出さないようにと思ったのに、気付くと大泣きしてて。 止まらなくて。
期待に満ちて入部したあの日。 まさか3年の、最大にして目標のインハイ競射。 やっぱり3年生は、2年生よりずっとカッコよくって。
だからこそ。 40射奉納出すなんて、思いもしなかった。
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