もう日も沈んで世界が青く染まり始めたそんな時間。 帰宅途中の道端にその花は咲いていた。
普段と同じ道だ、いつもは気がつきもしなかったというのに。 その花は世界に溶け込むようにはかなく笑いかけていて、彼は思わず足をとめずにはいられなかった。
「確か勿忘草・・・・だったか??」
風に吹かれるとどこかに飛んでいってしまいそうな、そんな感じがどうしても彼の人ととダブってしようが無い。
「忘れるなって言いたげだな。・・・そういうお前はどうなんだよ、元気なのか?」
それぞれの道を歩き始めて3ヶ月がたつ。 もう3ヵ月後の約束の日までおそらく会うことはないだろう。
花は無言で彼を見上げている。いつも彼女がそうしていたように。
「まるでお前そっくりだな」
彼は手を伸ばしかけて、思いとどまるようにその手を止めた。 無理に摘んで帰ってもすぐに枯らしてしまうだけだ。
「大丈夫だよ、また会いに来るさ」
笑い返して家路に着こうとしたその時、不意にポケットから着信音が響いた。
「何いってんだよ、お前の方こそ忘れてたんじゃねーのか?」 笑いながら歩き出す。
「明日も来るよ」と、心にとめて
もう夜空には夏の星座が輝きだしている
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もう随分以前に書いたSS( ̄ー ̄)ニヤリッ チョット手直ししてみました。
・・・が、書いたのが6月だった為、微妙に季節感がちぐはぐかも(苦笑)
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