初日 最新 目次 MAIL HOME


瞬日記

MAIL
HOME

2002年03月07日(木)
勿忘草

もう日も沈んで世界が青く染まり始めたそんな時間。
帰宅途中の道端にその花は咲いていた。

普段と同じ道だ、いつもは気がつきもしなかったというのに。
その花は世界に溶け込むようにはかなく笑いかけていて、彼は思わず足をとめずにはいられなかった。


「確か勿忘草・・・・だったか??」

風に吹かれるとどこかに飛んでいってしまいそうな、そんな感じがどうしても彼の人ととダブってしようが無い。

「忘れるなって言いたげだな。・・・そういうお前はどうなんだよ、元気なのか?」

それぞれの道を歩き始めて3ヶ月がたつ。
もう3ヵ月後の約束の日までおそらく会うことはないだろう。

花は無言で彼を見上げている。いつも彼女がそうしていたように。



「まるでお前そっくりだな」

彼は手を伸ばしかけて、思いとどまるようにその手を止めた。
無理に摘んで帰ってもすぐに枯らしてしまうだけだ。

「大丈夫だよ、また会いに来るさ」


笑い返して家路に着こうとしたその時、不意にポケットから着信音が響いた。

「何いってんだよ、お前の方こそ忘れてたんじゃねーのか?」
笑いながら歩き出す。

「明日も来るよ」と、心にとめて


もう夜空には夏の星座が輝きだしている

***************************

もう随分以前に書いたSS( ̄ー ̄)ニヤリッ
チョット手直ししてみました。

・・・が、書いたのが6月だった為、微妙に季節感がちぐはぐかも(苦笑)