きよこの日記

2005年01月22日(土) 藤谷治『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』

おみくじでいえば、吉、という感じの好作品です。
コンセプトがいい。
「世界はどんどん悪くなる。もしこんなふうにくだらない、馬鹿げたわらいがそれはなかったら、ただでさえ陰惨なこの世界をもっと悪くしてしまう、だからもし、自分に少しでもできることがあるなら、それは世界に一つでも多く、馬鹿げたことを作ることだ、ってね。」

とってもポジティブです。
出てくる僕らの仲間達は、世の中が力あるものが中心に向かう求心的なせかいだとして、中心からはかなり遠くのほうで、それでも楽しく幸せに生きているんです。
みんなとても魅力的。読んでいるうちに好きになってしまう。

ちょっと、描写がわかりにくかったり、すんなり行かないところもあるけれど、そういう無骨さもご愛嬌だね。


「そう、爆笑。今考えてみると、この爆笑っていうのが、大事なポイントだったんだね。僕たちはありとあらゆることを笑ったれど、嘲笑とか憫笑とかいった、愚か者は困ったものだねフフン、みたいなシニズムとは縁がなかった。とにかく、なんでもかんでも大笑いしちゃうんだ。いいことか悪いことか知らないけど。多分それは、僕たちが一人残らず安月給の、三流社会人の、どっちかっていうと人生失敗組だって事と関係がある。最初っからひとを見下すっていう発想がないんだ。見下されっぱなしだから。」


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