2015年07月31日(金) |
長いお別れ 中島京子 |
  中島京子 文藝春秋 2015
STORY: 東家の父が認知症になり、母が一人で介護することに。3人の娘にはそれぞれの人生がある。しかし、次第に父の症状が重くなってきて、母も網膜剥離で倒れ…。
感想: 父の認知症が次第に重くなってきて、最初は一人で介護していた母も倒れ、娘たちが母の役割をこなそうとすると、ものすごく大変であることがわかる場面などは、他人事とは思えなかった。
英語では認知症のことをロング・グッバイ=長いお別れと言うらしい。それがタイトルの由来のようだ。
次第にわからなくなっていくところは、お別れを告げながら亡くなっていくっていう感じなのかな…。
お母さんが一人でお父さんを介護する…。きっとこういう人、いっぱいいるんだろうな…。子供がいても、子供にやらせようとは思わないお母さんがたくさんね…。
将来、自分の父がもしなったとしたら、でも、やっぱり、自分にも子供と家庭があって、なかなか母を助けには行けないのかもしれないなーと…。
考えさせられる話であった。
  明治・大正・昭和を生きた実在の人物をモデルに描いた超大作ドラマ。
この時代が結構好きだし、とても面白く見ることができた。キャストもとっても豪華で、さらにどの人も配役と合っている!
秋山篤蔵(佐藤健)は、優秀な兄・周太郎(鈴木亮平)とは違って、のくぞう(バカの意味)と呼ばれるほどのバカで、何事も続かず、父・周蔵(杉本哲太)からはあきれられていたが、母・ふき(美保純)は割と楽観的に篤蔵のことを見守っていた。
ある時、結婚すれば少しは落ち着くかと、篤蔵を鯖江の昆布問屋の高浜家の養子にという話が来る。
断る気でいた篤蔵だったが、俊子(黒木華)のことが気に入り、養子となる。
養子となって、昆布をおろす先に海軍の厨房があり、そこで軍曹の田辺(伊藤英明)から洋食をごちそうされ、そのおいしさの虜になってしまった篤蔵は、仕事そっちのけで次第に料理にのめり込むようになり、ある日、ついに俊子を置いて、東京に料理修行に飛び出してしまう。
そこから篤蔵の波乱万丈の料理修行人生が始まる。
周太郎の教授・桐原(武田鉄矢)のつてで、華族会館の厨房に小僧として入ることになる篤蔵。そこでは、宇佐美(小林薫)が素晴らしい腕を振るっていた。
紆余曲折を経て、篤蔵はパリへ料理修行に出かけることに。その資金を調達してくれたのは、病に倒れ、法律の道を進むことをあきらめた兄・周太郎だった。
フランスで最高のオテル・リッツで修業をするまでになった篤蔵に、日本から天皇の料理番として働いてくれないかと打診が来る。
フランスでの生活に未練があり、日本に戻ることをやめようとも考えた篤蔵だったが、兄・周太郎がお国の役に立つ人物になってほしいと常々思っていたことから、この話を受けることにする。
大正天皇の即位の式で、各国の要人の晩さん会のメニューを考えることが篤蔵の最初の仕事であった。
これを見事にやり遂げた篤蔵は、この後も大正天皇、昭和天皇の料理番として最後まで職務を全うする。
関東大震災や太平洋戦争などを乗り越え、最後に篤蔵が向き合わなくてはならなかったのは、敗戦後、GHQが天皇の戦争責任を問わないようにすることで…。
と、まあ、盛りだくさんの内容なのだけれど、本当に飽きさせず、次はどうなるのかと…。
佐藤健の包丁さばきも素晴らしくて、今まで料理をしたことがなかったというのを聞いてびっくりした。
一角のほどの人になるような人でも、周りに助けられて、そして、自分の人生を全うすることができるんだなーと。良いドラマを見た。
2015年07月15日(水) |
それいけ!アンパンマン ミージャと魔法のランプ |
去年に引き続き、息子と一緒に見に行ってきた。
本当は親子ペア券を幼稚園で購入すると安かったんだけど、ネットで座席を購入できないため却下された。
夫と息子が見に行くってことになっていたけれど、直前になって息子が見たくないと言い出し、今年はもう見ないんだろうなーと思っていたんだけれど、幼稚園の創立記念日があり、せっかくだから映画でも見るか…となり、息子が見られそうなのが、「ひつじのショーン」と「アンパンマン」だけで、息子が「アンパンマン」を見たいと言ったので、結局見ることになった。
それでも、親子合わせて2100円で見られたので、よかったかも…。(親子ペア券だと1800円だった)
平日の昼間と言うことで、あんまり混んでもなく、快適に見られた。
2本立てで、1本目は夏祭りのお話。典型的なギャグパターンなど、子供に受けるみたい。
アンパンマンが歌が苦手だとは初めて知った。
そして、本編「ミージャと魔法のランプ」はランプの精(?)のミージャの声を大島優子が担当。かわいい声だったな。
アンパンマンが主役と言うより、ミージャとコキンちゃん、クリームパンダちゃん(男の子なのかな?)の3人の冒険劇。友情とは何かってのがお話の中に盛り込まれていた。
アクションシーンも結構迫力があって、よかったんだけど、前日によく寝てなかった私…時折眠りの世界に引き込まれそうになりましたわ…。
息子は入場者プレゼントのマラカスをもらったけど、音が結構うるさくて、後ろの座席の子がシャラシャラ鳴らしていて、それが気になるのか、後ろの方を振り返ったりしていた。
とりあえず、息子は楽しんだようなので、よかったかな。
去年の作品よりも面白かったような気がした。
2015年07月09日(木) |
ジャパン・ディグニティ 髙森美由紀 |
  髙森美由紀 産業編集センター 2014
STORY: 津軽塗の塗師の父を持つ美也子は自分に自信を持てない。塗師の仕事のなさに母は離婚して出ていき、弟のユウはゲイで、パートナーとともにオランダに渡る。塗師を継ぐことを決めた美也子は…。
感想: 美也子の一人称で書かれ、自信がないせいか、最初の方は美也子の名前すら出てこなくて、自信を取り戻しつつある後半でようやく名前が出てくる。
あまりにも卑屈すぎて、何もできない自分を責めている美也子。津軽弁の会話もちょっと難しく、なかなか乗れなかった。
家族もバラバラな感じで、鬱屈した生活を送っているが、好きな漆の道を究めようと思った日から、美也子は変わって行き…。
日本では伝統工芸品は高いので敬遠される時代になってしまい、塗師の将来はお先真っ暗な感じ。パートなどをしないとお金が入って来ない人も…。
弟(妹?)のユウがオランダに渡り、オランダの国際コンクールに出展したことから、海外からの注文が来るようになるという非肉。
でも、こうして、国内だけでなく海外などにも販路を広げるというのは大切なのかもしれないなーと思った。
50歳の誕生日を迎えたアリス(ジュリアン・ムーア)は、愛情あふれる医者の夫・ジョン(アレック・ボールドウィン)と3人の子供たちに祝福される。
長男のトム(ハンター・パリッシュ)は父と同じく医者を目指し、長女のアナ(ケイト・ボスワース)は法律の勉強をしていたが、結婚相手の子供を産むべく不妊治療中。
優秀な二人とは違って一番心配しているのは次女のリディア(クリステン・スチュワート)。演劇をしたいとロサンゼルスで一人暮らしをしているが、売れている様子はなく、高学歴の家族の中で一人学歴にこだわらない。アリスはリディアに大学に行ってもらうことを望んでいるのだが…。
アリス自身も大学で言語学の教授を務め、世界中を講演して回るような頭の切れる女性である。
ところが、そんな彼女に異変が。ちょっとした単語が思い出せない。自分のキャンパスをランニング中に迷子になる…。
彼女は心配になり、一人で神経科医にかかるが、検査の結果、彼女は若年性アルツハイマーであることがわかる。それだけではなく、これは家族性のもので、50%の確率で遺伝し、もし遺伝した場合は、100%発症するという恐ろしい病であった。
子供たちはDNA検査で病気が遺伝しているかを調べることはできるが、それは各自にゆだねられ、トムとアナは検査を受け、アナが陽性であることが判明した。それでも、アナは不妊治療を続け、双子を授かる。
病気のせいで大学も辞めざるを得なくなり、毎日することがなくなったアリス。
知識を追い求めることで自分というものを確立してきたアリスが、日々、言葉を失い、記憶を失い、自分がなくなっていく恐怖は想像を絶する。
彼女は、自分が何もかもわからなくなったときには、死のうと思い、自分にビデオレターを残すが…。
愛する夫に仕事を1年休んでもらって、一緒に最期の時を過ごしたいと思っていたアリスだったが、それもかなわなくなり…。
でも、どんどん忘れてしまい、そんなことすらわからなくなって…。
最後には一番そりが合わなかったはずのリディアが歩み寄ってくれて…。
若年性アルツハイマー…。今の医学ではまだ治療法も確立されていない。アリスの子供たちが発症する頃には、少しでも医学の進歩や発展で、この病が克服されていればいいのにな…と思った。
2015年07月04日(土) |
リストランテ アモーレ 井上荒野 |
  井上荒野 角川春樹事務所 2015
STORY: イタリア料理店「アモーレ」の店主・杏二は姉の偲とともに店を切り盛りしている。杏二は店に来る女性をとっかえひっかえ。偲は杏二の師匠に密かに思いを寄せているのだが…。
感想: ちょっと思ったのとは違う感じの話だった。
料理にまつわる楽しい話ではなく、痛い恋愛の話…って感じかな。
何だかとっても痛い感じなので、幸せな恋愛とか結婚をしている人にはいまいち楽しめないかも?
まあ、そんな痛い恋愛話が読みたいような方にはオススメですかね…。
吉田秋生原作、是枝裕和監督の「海街diary」を見てきた。
鎌倉の古い家に住む三姉妹。長女・幸(綾瀬はるか)はしっかり者の看護師、次女・佳乃(長澤まさみ)はちょっと男にだらしない銀行員、三女・千佳(夏帆)は父親の記憶がほとんどないスポーツ用品店の店員。
三姉妹のもとに父の訃報が届き、葬儀に出ることになるが、そこで腹違いの妹・すず(広瀬すず)と出会う。
すずは父と母が離婚する原因を作った女性の娘であるが、その女性は死に、父は連れ子のいる陽子(中村優子)と再婚していた。
継母と血のつながりのない弟と残されるすずを気の毒に思った姉妹は、鎌倉に来ないかとすずを誘う。すずは鎌倉で新しい生活を始めることになるが…。
鎌倉の美しい自然と風景が素晴らしい。鎌倉の古い家がまたいい味を出している。四季折々の移り変わりとともに、人間関係も少しずつ移り変わっていく。
そこには人の死や離別や愛憎があるけれど、それでも日々は続いていく。
自分が生まれたことによって一家庭を壊してしまったのではと悩むすず。再婚した母(大竹しのぶ)や大叔母(樹木希林)にきちんと自分たちでやれるということを見せようと必死になる幸。
幸は妻のある男性(堤真一)と不倫をしており、まさにすずの母と同じことをしていて…。
行きつけの食堂のおばさん(風吹ジュン)と喫茶店のおじさん(リリー・フランキー)が子供たちを暖かく見守ってくれている。
鎌倉のゆったりした時間の中に様々な出来事が美しく描かれているという感じ。
何か重大な事件が起こるわけではないけれど、でも、日常で起こる小さな出来事でも、家族にとっては一事件だったりするし、そういうことの繰り返しで家族の絆が深まったりするんだよね…。
とてもよい映画だった。
 
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