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2017年06月16日(金) |
ジャン=マルク・ルイサダ マスタークラス2017 プログラム |
ラ・パレットでは、2006年、2014年と2度、ジャン=マルク・ルイサダ先生のマスタークラスを開催し、そのご縁から、今回、ルイサダ先生のマスタークラスをしませんか?…とお誘いいただき、3回目のマスタークラスを行うことになりました。 第1回、第2回は、北川正先生のお力をお借りして、生徒さんの準備万端にルイサダ先生をお迎えする事ができたのですが、今回は、北川先生のお力を借りることができない状況で、しかも準備期間も短く、果たしてルイサダ先生にご満足いただけるマスタークラスとなるか、出来る限りの準備はいたしましたが、当日を迎えるまでとても心配でした。、 蓋を開けてみると、ルイサダ先生の圧倒的に美しい音楽と温かいお人柄、通訳をしてくださったピアニスト伊予田裕子さんがルイサダ先生との素晴らしいコミュニケーションと分かりやすい日本語でお話くださったのもあり、そして生徒さんたちの熱心な集中力で、とても良い雰囲気のマスタークラスとなりました。
レッスンでは、それぞれの部分で手や身体をどのように使って音楽を作っていくか、素晴らしい実演を伴ってご指導くださり、どうやってその音楽を自分のものにするか、プロフェッショナルの準備の仕方…などのお話もしてくださいました。 何よりも素晴らしかったのは、ルイサダ先生がホンの少し弾いてくださるだけで、聴いている私たちもその音楽がどのようにあるべきか瞬時に明確にわかるのです。 そして、聴講された方はホールで聴こえるあの音がピアノの間近ではどのように聴こえるか、受講された方はピアノの前でどのように鳴らされどのように聴こえるのか、実感を持って接する事ができたと思います。
ルイサダ先生とはこのマスタークラスについて後日お話する機会があったのですが、“très beau master class!(とても美しいマスタークラス)”とおっしゃってくださり、ルイサダ先生もこのマスタークラスをとても気に入ってくださったようでした。
取り上げた曲目は下記の通り。 夢のような一日でした。
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13:00~ ラヴェル 『鏡』より 洋上の小舟 Ravel miroirs Une barque sur l'océan 14:10~ モーツァルト きらきら星変奏曲 Mozarto 12 Variotionen über ein Französisches Lied "Ah!vous dirai-je, Maman" C Moll K265 15:10~15:30 休憩 intermission 15:30~ ショパン スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31 Chopin Scherzo No.2 b-moll Op.31 16:40~ ショパン ピアノ協奏曲 第2番 ヘ長調 作品21 第1楽章 Chopin Concerto pour piano et orchestra f-moll Op.21
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写真は、講座が全て終わってルイサダ先生が受講生にポーズをつけて撮った一枚。 感動がよみがえります。
2017年05月14日(日) |
第1回 伊藤隆之先生の公開レッスン |
伊藤先生を初めて知ったのは北川先生からでした。 良いピアニストなのでコンサートをやりたいのだけれど手伝ってくれないかという事で、準備の一部をお手伝いしました。 私の大好きな作曲家ドビュッシーのスペシャリストで、そのコンサートもオールドビュッシーのものでしたので喜んでお手伝いさせていただきました。 コンサートではドビュッシーについての伊藤先生の造形の深さと、それでいて分かりやすい内容が印象に残りました。
その後、去年になってレッスンをお願いしたのですが、レッスンでは穏やかなお話と、確かな演奏、そしてフランスの音楽の伝統に基づくご指導に感激し、是非とも公開レッスンを…とお願いして実現にこぎつけました。
伊藤先生は現在、ドビュッシーのピアノ曲全曲レコーディングに挑まれており、3月にも5枚目となるCDの録音に取り組まれていました。 そのオーガナイズがフランス式(!)で終わってみないとどうなるかわからない…ということで、すべてが終わった3月の下旬からこの公開レッスンの企画を具体的に決め始めました。 そういう訳で、この日の公開レッスンは長い構想期間と短い準備期間を経て実現することとなりました。
当日取り上げられた曲目は以下の通りです。
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中2 ベートーヴェン:ピアノソナタ 第5番 Op.10-1 第1楽章 ドビュッシー:『子供の領分』より ゴリウォグのケークウォーク
成人 ショパン:スケルツォ3番
成人 ベートーヴェン:ピアノソナタ 第26番 Op.81a 『告別』 *************************************************************
この日の公開レッスンで伊藤先生はこれらすべての曲について完璧なお手本を示してくださいました。 聴講された方からは「あの曲があんなに良い曲だったなんて!」という感嘆の声が聞かれました。 ちなみにこれは公開レッスンだからではなく、伊藤先生から伺ったところによると、今回のご帰国でレッスンされた曲は50曲。その全てをお手本を示してご指導されたとか。 まさに、音楽を持って音楽を教えてくださるレッスンでした。
まず印象に残ったのは、最初の生徒さんの最初の曲、チェルニー30番の1番のレッスンで、ピアノを弾くのにあるべき手の使い方について、お子さんにもわかる表現で丁寧に説明されていたことです。 その内容は今まで何度か講座をさせていただいた音楽家のための運動療法士イザベル・カンピオンさんのお話とも一致するものでしたが、伊藤先生の説明はより具体的で、小さなお子さんにもわかる表現だと思いました。 伊藤先生の丁寧な説明と、実演を繰り返し見せてくださるレッスンで、生徒さんの音はどんどん響きのあるものになっていき、感動的でした。
レッスン中、伊藤先生はエコールノルマルの大学院を卒業したようなピアニストを対象に『メトードローズ』を題材にピアノの奏法について学ぶメソッドをお持ちだというお話もしてくださいました。 3年くらい続けると、奏法が改善されるそうで、そういうレッスンもとても興味深く感じました。
伊藤先生のレッスンのもう一つの特徴は、パリに伝わるで伝統を私たちに伝えてくださる点です。 楽譜をどう読むかとか指使いなどもありますが、この日、”ゴリウォグのケークウォーク”のレッスンで、この物語の主人公のゴリーちゃんが2000年近くまでイギリスのビスケットのキャラクターとして現役だったと伺い、驚くとともに、本当に生きた文化を感じることができて感激でした。
他にもたくさんの音楽的感動があり、充実した6時間の公開レッスンでした。
次回、まだいつになるかは決まっていませんが、鋭意企画中です。
2015年12月06日(日) |
12月6日のlesson de ラ・パレット |
プログラムは以下の通りです。
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12:00~ J.S. バッハ:平均律 2巻.5 ショパン:エチュード Op.10-8 プロコフィエフ:ピアノソナタ 3番 Op.28
13:00~ ベートーヴェン:ピアノソナタ7番Op. 10-3 第1楽章 J.S.バッハ:平均律2巻18番 gis-moll ショパン:エチュード Op.10-4
休憩 14:00~14:40
14:40~ ベートーヴェン:ピアノソナタ Op.31-3 全曲 ショパン:エチュード Op.10-8 Op.25-6
16:10~ シューマン:ピアノソナタ 3番 第1楽章 ドビュッシー:喜びの島 ******************************************
2015年10月25日(日) |
“音楽家の為の運動療法”を用いたピアノの指導法 ~ピアノを鳴らす身体について学ぼう~ |
昨年、ジャン=マルク・ルイサダ先生のマスタークラスの際に一緒にお招きした音楽家のための運動療法士イザベル・カンピオン先生。 私自身も何年か前から彼女のレッスンを受けて来ましたが、自分が指導する立場に立つと、分かったと思っている事を正しく伝えられなくて歯がゆく思っていました。 また、2か月に一度のlesson de ラ・パレットで弾いてくださる生徒さんを見ていて、カンピオン先生の考えを知ったら演奏が改善されるだろうと思う事がしばしばありました。 そんな訳で今回、カンピオン先生をお招きして、ピアノを鳴らすのに適切で自然な身体の使い方を学ぶ機会を持つことができたのはとても嬉しいことでした。
講座の最初にカンピオン先生から、“音楽家の為の運動療法”についての説明がありました。 内容は「ピアニストの為の“アトリエ”」の時に説明くださった事をコンパクトにした内容で、“骨”“筋肉”“靭帯”…と人間の身体についての事実を積み重ねていくもので、その中には、指の動きに腕の筋肉がどのように働いているかという説明もありました。 カンピオン先生の考え方の根底には、「人の身体にとって自然であること」というのが常にあり、そのため、ご指導を受けた最初の段階では難しいと思える事でも、少しずつ演奏に取り入れる事で困難だったことが楽にできるようになるのです。 最初の説明は私たちが人体について正しく理解するための土台となるものでした。
その後、小学生と高校生の二人のレッスン。
レッスンといっても曲についてではなく、演奏の際に身体をどう使うか…というもので、曲の最初のほうを弾いてカンピオン先生がそれを観察し、本人とやり取りしながらやるべきことを一つ一つ説明していくスタイルでした。
最初に弾いたのは小学6年生の私の生徒で、彼女の悩みは左手親指のマムシ指と時々小指が上がってしまうことです。 カンピオン先生によると、親指と小指というのは相関関係があり、ピアノを弾くためにはどちらもきちんと固定されることが必要で、そのためのポジションがあるということでした。 レッスンでは、この生徒が親指の正しいポジションと動きを理解し実践するために必要なエクササイズを4つ紹介され、それぞれのポイントが説明されました。 まむし指については、一般に言われている練習とはちょっと違っていてそういうやり方もあるのかと驚きましたが、実際にレッスンに取り入れてみると短期間で大分良くなったように見えて、指導の引き出しが一つ増えた感じがします。
二人目の生徒さんはショパンの大洋を弾く高校生の生徒さん。 こういった難曲を弾くのにはどうしても力が入ってしまいがちですが、この生徒さんの場合、それを意識する余りに上体の力を抜き過ぎていて、その為、クビの後ろに痛みが出ていて、カンピオン先生のご指導もその点が中心となりました。 (ここで、いわゆる“脱力”についての説明がありました)
この生徒さんに限らず、カンピオン先生のご指導では、肩甲骨のポジションがとても重要になります。 肩甲骨が固定されることで鍵盤にかかる力と方向が無駄なく安定してコントロールできるということです。 この日の二人の生徒さんにもその点が丁寧に指導されて、カンピオン先生が補助して肩甲骨の位置が固定されると、それまでとはまるで違った充実して余裕のある音が会場に広がりました。 「彼女は今、アルゲリッチと同じやり方で音を出しています!」 「ほら、まるでルービンシュタインのような音でしょう?」 と具体的なピアニストの名前を出して音の変化をアピールしていらっしゃいました。
良い音で演奏するためには『自分の音を良く聴くこと』とは良く言われますが、音を聴いて修正するためには“どうしたらより良く修正できるか”を知っていて、即座に反応しなくてはなりません。 カンピオン先生の講座は、その方法を私たちに示してくださる貴重な時間となりました。
ラ・パレットでの講座について、カンピオン先生も「とても良かった」と喜んでくださっていて、次に機会がありましたらまたぜひ講座を持ちたいと思っています。
今回行われた講座の詳細は以下の通りです。 ***********************************************************
イザベル・カンピオンを講師とする”音楽家の為の運動療法”
「“音楽家の為の運動療法”を用いたピアノの指導法 ~ピアノを鳴らす身体について学ぼう~」
◇日時:10月25日(日)13時30分~15時30分
◇受講料:4,000円
◇会場:スタジオ Chez Claude http://chez-claude.com/ 東京都江東区森下1-5-4 アロンジェ森下201(受付) TEL:03-3631-7733 FAX:03-3631-7799 (土足厳禁。スリッパはございます。)
◇プログラム◇ 13:30~13:35 カンピオン先生のお話 13:35~14:20 レッスン1 生徒:小学6年生 チェルニー:左手のための24の練習曲 Op.718-3 14:20~15:05 レッスン2 生徒:高校1年生 ショパン:練習曲 Op.25-12 15:05~15:30 質疑応答など (タイムスケジュールについては予定ですので変更になる場合がございます)
◇通訳:中島彩(ピアニスト)
◇対象:ピアノを学ぶ10代の学生、ピアノ指導者
◇定員:20名(学生10名まで)
◇お申込み:http://form1.fc2.com/form/?id=232471 吉原まで カンフェティhttp://www.confetti-web.com/detail.php?tid=31104&でもお求めになれます
◇受付期間:学生 本日より ピアノ指導者 9月20日より 一般 10月1日より (定員になり次第締め切りとなります)
※10代の聴講者には付き添い1名を含みます。 付き添い者がピアノ指導者の場合は9月20日以降に、 2名以上の付き添いの場合は10月1日以降にお申込みください。
◇共催:ラ・パレット、コンセール・パリ・トーキョウ ***********************************************************************
2015年10月20日(火) |
イザベル・カンピオン講座「ピアニストの為の“アトリエ”」 |
カンピオン先生のアトリエに参加させていただくのは今年で3年目です。 “アトリエ”とは・・・「楽器を演奏する時に、より良く身体を使えるようになるエクササイズを実践する講座」 ゆえに、今まで参加させていただいて、同じ内容だったことは一度もありません。 けれども、カンピオン先生がおっしゃろうとしていることは常に変わらず、それに向けてのアプローチの方法が多様にあるという感じです。
この日のアトリエも、目から鱗が何枚も落ちる感動的なものでした。
まず最初に『ピアノを弾くということ』について理論的な説明がありました。 説明は“骨”“関節”“筋肉”“靭帯”“神経”“脳”…と解剖学的な事柄と、それらがどのような役割をはたしているかに及びました。
この段階を自動化していくことが表現することにつながっていくということでした。
その後、手についてそれぞれの役割、ベストなポジションなどを動作を含めて具体的に。 よく言われる“脱力”についてもお話されていました。
最終的に大切なのは肩甲骨のポジションで、これができると初めて「力が入りやすく繊細な動きができ、表現の幅が広がる」とのこと。 マスタークラスなどで「背中で楽器を弾きなさい」と言われるのはこのことである。 身体のシステムに沿った動きは一度できると心地よく、出てくるものが心からの音楽になる。
ピアニストの本当の秘密を教えていただいていると実感しました。 参加人数が少なく残念でしたが、一人一人に丁寧にご指導くださったのでとても良くわかりました。
25日には、これらのことを10代の生徒さんにどうご指導くださるかとても楽しみです。 まだまだお席に余裕がございます。 チケットは以下のページから、または私のほうまでお問い合わせください。 http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=31104&
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