ちょっと前の日曜日、嫁の誕生日であった。
ささやかながらお祝いをしようと思い、ホテルのビュッフェで食事でもどうだい、と嫁に提案したところ、それならば東京ドームホテルのレストランに一度行ってみたいというので予約をした。
で、当日。ビュッフェに備え、家族全員出来るだけ少食にして腹を減らす。で、牙一族並みのハングリーさになったところでレッツラゴー。行く直前に興奮したわけでもないだろうが息子・タク(小5)が謎の鼻血ブーをぶちかますというアクシデントがあったりもした。
春日方面から東京ドームホテルまで歩く。途中、東京ドームの脇を歩いていると道を挟んで向こう側の東京ドームシティアトラクションズの遊園地エリアから
「うりゃ!おい!うりゃ!おい!」
大人数の男たちのすさまじい罵声が響きまくっていた。僕は知っている。これはアイドルオタクの叫び声だ。野外ライブでもやっているのだろう。
「ねえ、何やってるのかな?」
娘・R(中二)が何やら知りたそうだったので検索してみると、どうやら乃木坂46が来ているらしい。そう告げると
「えー!乃木坂!観たい!観たい!」
Rがものすごい食らい付いてきた。そんなに好きだったっけ?でもそろそろ予約時間だし…と渋っていると
「とにかく見せて!」
僕のスマホをひったくってしまった。そして2秒ほど画面を見ていたが、
「なんだ、三期生か。じゃあいいや」
急に冷静になってスタスタと歩き出した。僕もスマホを見直してみると確かに「乃木坂46」の後に「三期生」と書いてあり、Rによると乃木坂は乃木坂でも三期生には有名な子はいないので別にいい、とのことであった。R、絵に描いた様な掌返しで結構ドライな性格をしていることよ。
それでもファンが多そうな三期生。ライブが終わった後は握手会もするんだろうか。ここは東京ドームシティ。なんとかレンジャーのヒーローが出て来て
「東京ドームシティアトラクションズで、僕と握手!」
というセリフをキメることでおなじみのCM。その場所がまさにここなのである。僕が子供の頃は
「後楽園遊園地で僕と握手!」
だった。時代と共に名前も変わる。握手する相手も変わって、ヒーローじゃなくてアイドルとも握手、というのが今の時代を反映しているかもしれない。してないかもしれない。
さて、東京ドームを通り過ぎてホテルに到着。エントランスを通り、レストランの受付で名前を告げると席に案内された。よっこいしょういち、と席に着くとどうもタクの顔色が悪く、フラフラして元気がない。
「大丈夫かい。鼻血のせいか?」
と様子をうかがったら
「鼻血だけじゃなくてずっとDSやってるからよっ!あんた朝からずっとやってるでしょ!そんな小さな画面一日中睨んでりゃそうなるよ!取り上げるよ!」
嫁の怒りがバーニングになってしまった。あああ、のび太のママじゃないんだから、こんなところでガミガミしなくてもいいじゃないか。
「まあまあ、食べれば元気も出るだろうさ」
なんとかお祝いムードを立て直すべく、料理を取りに行くことにする。ビュッフェにおいて最初にどんな料理があるか物色し、目移りしながら盛り付けることは幸せである。ようやくみんなも和やかな雰囲気になった。

テーブルに並べてお誕生日おめでとう!と乾杯して宴の開始。
「ンマーイ!」
まんが道風に食べまくっていると、僕らより前に来ていたほかのお客さんの席に花火が刺さったケーキが運ばれて来て、
「ハッピーバースデートゥーユー♪」
店員さん達がバースデーソングを歌っているではないか。誕生日のお祝いに来たのはウチだけではなかった。なかったどころか
「ハッピーバースデートゥーユー♪」
「ハッピーバースデートゥーユー♪」
15分おきぐらいに、店員さん達があちこちバースデーケーキを持って出撃していて、むしろほぼみんな誕生日絡みで来ている人たちばかりであった。
「ちょっとあれは恥ずかしいかもしれない…」
嫁は顔を赤らめた。そして
「まさかウチもアレ頼んでないよね」
僕を睨むので
「ごめん、頼んじゃった」
「えー!」
「サプライズで頼んじゃったんだよう。しょうがないじゃないかよう」
やむを得ず白状せざるを得なかった。はじめにこのお店に電話をした時はそばに嫁がいたので予約のみしかしなかったが、後でこっそり誕生日オプションのデザートプレートを頼んだのであった。チョコレートソースで皿に「Happy Birthday ママ」と書いて下さい、とかお願いしちゃったのである。嫁は苦笑いしながら
「ウチにはいつごろやって来るの」
と聞く。
「『デザートを食べ始めるかな?ってタイミングでお持ちします!』って店員さんが言ってたからそろそろかも…」
カウンターにいる店員さんをチラリと見たところ、バッチリ目が合ってしまった。林先生ばりのドヤ顔だった。すなわち「今でしょ!」。そんなわけで
「お誕生日おめでとうございまーす!」
ついにうちのテーブルにも店員さんふたりがデザートプレートを運んで来た。かわいいケーキに花火が二本パチパチ光っていて、お皿には僕がお願いしたとおりのチョコ文字。
「よろしければ、私たちでお誕生日のお祝いの歌を歌いたいと思います!」
店員さん達ノリノリ。鈴まで持っている。
「いやー、私は歌は…」
と照れる嫁だったが
「僕らの周りの席ほぼ全部もそうだったからいいじゃないか。みんなハピバだよ」
ということで歌ってもらった。嫁は照れ臭そうだったが、後でケーキの写真や、ケーキを囲んだみんなの写真を撮ったり
「これおいしいね」
と、そこはかとなく嬉しそうだったので、多分しないよりした方が良かったのだと思いたい。
「こちら、プレゼントでございます」
更に店員さんから渡されたのは、東京ドームシティアトラクションズの乗り物券であった。1回ぶんだけだけど。
「思い残し、食い残しはないか~」
食べ放題も終盤戦、お腹の限界も近づきそろそろ終わりにしようか、という頃に
「ハッピーバースデートゥーユー♪」
上品そうな老夫婦のテーブルのところでも誕生日のお祝いがされていた。奥さんが嬉しそうに
「81才になるんですよ」
と告げていて、店員さんも僕らもびっくり。とてもそんな風には見えない若々しさだったからである。
「いやーそうなんですよーあははは」
旦那さんは照れ臭そうにワイングラスを揺らしていた。僕らもあんな風になれるのだろうか。そんなことを考えながらレストランを後にした。
外に出て夜空を見上げると東京ドームシティアトラクションズのジェットコースターが
「げひょおおおおおおおお」
乗客の悲鳴と共に突っ走っていて、また、観覧車も大きな輪を光らせていた。
「せっかくだから乗るか」
嫁がさっきもらった乗り物券を取り出すと
「うーん、ジェットコースターも好きだけど、今はそんな気分じゃない」
今はそんな気分じゃないとか、夜のお誘いを断る常套句のようなことを言うタク。確かにジェットコースターに乗ったら食べたものが全部外に出てローリングマーライオンになりそうではある。
「じゃあ観覧車でみんなまったりしよう」
嫁以外のチケットを買おうとすると…結構チケット代が高くて鼻血が出そうになった。3人分合計額は、レストランのタクの分(子供料金)の倍。でももう後へは引けない。誕生日だしみみっちいことを言ってはならぬ。観覧車に4人、ひとつのゴンドラに乗るなんてもうないかもしれないし。
みんな乗りこんでワクワク窓を眺める。だんだん地面を離れて行く風景にキャアキャアする嫁子供達を見ながら僕もそっと遠くの方を眺めてみる。

「スカイツリーだ!」
「ホントだ!」
「東京タワーは!」
「見えない!ホテルの後ろかな」
「今てっぺんだ!」
「うおー!」
ぐるっと一回り15分ぐらいだろうか、なかなか楽しい家族のひとときであった。ゴンドラの中は空調がよく効いていて寒いくらいで、外に出ても夜の冷え込みで思わずくしゃみが出てしまうのであった。
東京ドームシティアトラクションズで、僕とはっくしゅん!なんちて。
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今日もアリガトウゴザイマシタ。