lucky seventh
DiaryINDEX|past|will
第一話 始まりの詩
それは今にも消え入りそうな、絆。
「野ばらの詩」を抱えて、彼は図書室を後にした。 これが彼のただ1つの媒体。 これに意識をのせ、空間に潜って彼は誰よりもはやく 見つけなければならない人がいた。
「逢いたい、逢いたいんだ.....」
消え入りそうな小さな声。 求めるものはただ1つ、まだ見失ってはいない。 どこにいるか分からない、 だけど、構成された物質は分かるから。 そこを辿ればきっと...いや、絶対に会えるはず。
「待ってて」
彼の思考の中をしめているのはそればかりで だから、彼は気付かなかった。 廊下を歩く、そんな彼をじっと見つめている少女の存在に、 無機質に置かれた人形のような彼女の存在に。
「始まってしまった」
壁に寄り掛かり、 少女は力なくぽつりと呟いた。
「始まってしまったんだ」
その声にはどことなく自分を責めるような、 そんな響きが含まれていた。
「少年、君はパンドラの箱を見つけてしまったんだよ」
見えなくなった彼に向かい、少女は悲しそうに呟いた。
少女の声を聞くものは誰もいない。 少女の声は届かなかった。
ナナナ
|