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2005年10月29日(土) |
またもやお蔵だしです。 |
午後の記憶
午後の陽射しが差し込む場所 永遠にも思えた 板張りの廊下 突き当り 茜色に映える 擦りガラスのドア 両手で押し開けて そっと忍びこんだ部屋 禁じられた場所 無造作に積まれた ダンボールの群れ 飴色に輝く寄木の床 白いレース 少し揺れて 小窓がある 白い壁紙 少しザラっとして 背中、滑らせるようにして 床にしゃがみこむ 見付からないように 擦りガラスに 写らないように
向かい側の壁 高い所 窓枠の上 狭い隙間 空の通路みたいな場所
茶 午後の陽射しの色 小さな四角 春の花の色 踊る 微笑む でも集り過ぎて 温か過ぎて その全ては秋風の匂いのようで 少し 切なくて 少し やりきれなくて
小さな 白と紺のギンガムチェックのワンピース フリルの裾の柔らかさ 70cm位の記憶
呼ぶ声がして 呼ばれる声がして でも 出るには少し 踏ん切りがつかなくて 気付くと 眠りの中で
誰もいない….
そっと ドア、 擦りガラスのドア 開けて… 永遠だった世界に帰る
茜色の世界が 女王様の衣の色と同じで 暗く、深く、涼やかで 金に輝く物が 高く遠く、煌いて…
なんだか少し、 寂しくなって、 家に帰ろ…と 思うよになって 不思議な切なさに包まれて 重い、 鈍色のドア 音立てないように ぎゅ、っと押してみる。
短い石畳、 小さな足で歩く。
そこは 永遠にも似て… 月灯りだけが 暖かで…
冷華 04/JUL/'01
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