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たまには自分で行動を起こしてほしいだなんて。 我侭を言ってみたり、したくもなるわけで。 叶わないと知っていても。 ベッドの端の君の隣。 同じように腰掛けると、スプリングが少し軋んだ。 触れるだけのキスをして、ほんの少しだけ微笑んでお願いを。 「ね、今日は亜久津からしてよ」 「はぁ?てめぇにする事なんざねぇよ」 「キスでもなんでもいいから、俺になんかして?」 「嫌だ」 「セックスでもいいよ」 「ッ……死ね!」 「…………殺してくれるなら」 続けて「うん、いいよ、そのほうが幸せかも」と言い、あはは、と笑ったら。 その声は思ったよりも乾いていて、すこし自分でも驚いた。 言われた亜久津は少し睨むようにしてこちらに視線を向けていた。 「……俺よか、女に殺されんじゃねぇの、テメェの場合」 「どうして」 「最低だから」 「褒めてくれてありがとう」 笑顔で答えれば、気味の悪そうな顔をして。 「褒めてねぇ」 「亜久津が俺を評価するって時点でその言葉は俺には褒め言葉だよ」 「頭おかしいんじゃねぇの」 君はふい、と視線を足下に落とす。 俺も同じように足下をみるフローリングの床には夏とは違ってカーペットが敷いてあって、真っ白い靴下を吐いた足は、冷たくはない。 それでも窓は閉めても暖房もいれない西日の部屋は、何となく、寒い。 寒さと寂しさは感覚的に似ている、だなんて連想しては自嘲した。 それでもただ、彼の言葉にさらに疑問で返す。 「かもね……で、何してくれんの?」 「誰も何かするだなんて言ってねぇよ」 「どうして、いくら俺だって見返りは欲しいよ」 「何のみかえりだ」 「こうしてお前を退屈させない見返りに」 「ンな事頼んでねぇ」 「だって目が退屈だ、寂しいって言ってるじゃん」 「言ってねぇ!」 「言ってる、だから、だから俺はお前が好きなんだよ?」 嘘だ。 ほんとはそんな事だけじゃない。 全部が全部好きで。 この感情を言葉になんかできるわけもない。 それでも、こんな事を言えば君が必死になるんじゃないか、とか。 好きなのは俺だけじゃないってわかるんじゃないか、とか。 淡い期待を抱いて。 「…………言ってる、として……そんなの、違ェだろ、同情じゃねぇの」 そう言って俯く姿が好きだ。 「同情なんかじゃないよ」 「何で言いきれんだよ」 強がるのが好きだ。 「だって亜久津は今の状況でも幸せだと言う事を知ってるから」 「なんで、」 「俺はお前の幸せが欲しいよ、俺にも幸せちょうだいよ」 「人にやれる幸せなんざねぇよ」 「知ってるよ」 「なら、」 「でもッ!……欲しいんだよ……」 「……馬鹿か……」 そっと、溜め息をついてから伸ばされた手が。 その長い指が、俺の髪を軽く頭を撫でるように梳いて。 何度か繰り返した後に、その手がするりと頬にそえられて。 もう一度、馬鹿だお前は、と言われた。 君は、怒っているような泣きそうな顔をしてそう微かに言って。 飲み物持ってくる、と言って部屋を出ていって。 リズムよく、早くもなく遅くもなく階段を降りていく音が、聞こえた。 なんだかんだいっていつも君は優しくて。 俺は結局きみに甘えて。 夢をみているだけなのだ。 甘い甘い夢をみる。 それだけ。 妄想だ。 ただの。 それでも、夢は夢であって現実になんかなりやしないと。 ふとした瞬間に君の目をみれば現実を思い出して泣きそうになる。 君の優しさは残酷だ。 そんな夢を見せるくせに、そんな夢を砕くんだ。 全ては無意識の内に。 -- なんかこれはちゃんと書きたいと思うんだけどどうなるのやら。 まとまらんからやっぱこれも放置かな。 どうにもいつも千石のほうが弱くて寂しい。 亜久津が千石にすがってるようなのが書きたい。 -- あとついでにパラレル妄想。(いい加減にしてください) 亜久津が身売りされて、それを店の代表として買い取ったのが千石。 千石は亜久津の事をこれだけの器量良しならすぐ売れっ子だとか言うだけで別に好意はないんだよ。 亜久津は亜久津で千石が嫌い。 芸を仕込まれるから。 でもそのうち亜久津は売れっ子になっていく。 千石は亜久津が客を取る度に嫌な気分になる事に気づく。 亜久津は相変わらず千石は好きになれない。 そもそも好きでもないのに体を売ったり媚びを売ったりでうんざり。 でもなんかの拍子で千石に優しくされる亜久津。 ていうか色々ありえないよこの妄想…。
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