『千里眼 運命の暗示』松岡 圭祐小学館 (2001/11)またまたため息。そしてあくび。長らく続いた緊張がとけて、ほけーっとしてしまった。メフィストコンサルティングに囚われの身となった岬美由紀。彼女を救い出すべく行動を起こす、嵯峨と蒲生。中国は日本に宣戦布告をするのか。攻撃は開始されるのか。中国人の日本に対する敵意は一体なんなのか。その謎は解けるのか。岬は救えるのか。ミドリの猿とは。てな感じで「絶体絶命」の状況から、なんとかなっていくのをドキドキハラハラ見守らせてもらいました。ああもうっ、心臓に悪い。面白い。ついついズルをして、先をぱらぱら見ちゃったりして。あっ美由紀がしゃべってる、ってことは大丈夫みたい。なんてね。卑劣な暴行犯が天誅?をくらうのはよし、だけど、やっぱり知美の身にふりかかった悲劇は切ない。ただ甘い恋心とそれをささやくのに「スタンディン・ア・ライン」なんか使っちゃうところがスゴイ!そんなのを知ってる作者がスゴイ!これってでも、ほんとなのかしら?『ミドリの猿』ではもんもんとさせられたけど、ほっとした一冊でした。15億人と喧嘩した女。かっこいーっ!「最後まであきらめない」教訓にしたいと思う、わたしも。追加:書いた後、アメリカの友人からメール。なんと彼は、アメリカ空軍のパイロット(見習いかな?)。なので「スタンディン・ア・ライン」って知ってる?今こんなnovel読んでるの、なんたらかんたら、と書いて送ったら、「知らない」とのこと。彼が知らないだけなのか、実はそんなのなかったりして、って気になるなぁ。どっちなんでしょ。『千里眼 運命の暗示』
『変身』東野 圭吾講談社 (1994/06)マックのマウスが死んでいる。光学式なのに、懐かしのトラックボール(っていうんだっけ?)にゴミがつまって「あれっあれっ、動かない、あれっえいえいえい」とやりたくなるような不具合。あげくの果てにうんともすんともいかなくなり、再起動。キーボードから一度抜くと直る時もあり、ぶちぶち抜いてる。今は左側の差し込み口に入れて使用。これだとOKと書きかけて確認したらまた死んでいたので右に差し込み直した。この文章がアップできてたら、それまでは生きてたと思ってください。余計な話で失礼しました。このお話、めちゃめちゃ私好み。読み終えて、もだえた。ごろんごろんしてしまった。事件に巻き込まれ頭を銃弾で打ち抜かれた主人公成瀬純一。脳移植手術を施され、無事?生還するものの、彼を待ち受けていたのはドナーの「恨み」の意志が己を奪おうとする苦難だった。「殺意」を抑えきれなくなる自分、救おうとしてくれる恋人。貴重な研究対象としてしか見ない医師。孤立する職場。彼はどうなるのか。「治る」とは「生きる」とは。『アルジャーノンに花束を』の、救いのないところから始まるお話。で、最後まで読んで、救いがあったのかなかったのか。それは読んでみてね、としか言えないのがもどかしいが、とても悲しく、すこしほっとした。恵の強さと愛情は、「秘密」の直子を思わせるね。私もこんなに強く、人を愛せるようでいたい。ラストは、泣ける。またしても私は泣けませんでしたが、泣ける話です。ああ、それってそういう使い方をする小道具だったのねーいやーん、て感じ。しかしあえて気になった点を述べるとすれば。成瀬はめちゃめちゃいい人すぎるし、京極はめちゃめちゃ悪い奴に書き過ぎ。どれくらい悪い奴かというと、セックスシーンが出てきても、ちっともむらむらこないくらい寒々しい印象を与えたくらい。それから殺し屋。プロだったらちゃんと仕事をし(以下略)かなしくて、自分も「自分をちゃんと生きよう」と思わされた一冊でした。『変身』
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『煙』松岡 圭祐徳間書店 (2000/03)ふぅぅぅぅ。読んだて。★は、よっつ。面白かったというか、ずっしりと重かった。いや、じわじわと、面白かった。半ば過ぎても面白いと思えんもんだから、読むのやめようかとすら思ったんやて。本当にこれが『千里眼』の著者の作品?て。たまにははずれもあるんかしら、て。しょぼくれた厭世的なおやじの語りが続くのがつらかったってー。それも延々とだにぃ。それが、ぜーんぶラストのために必要不可欠で、計算やったんやって、今は思う。主人公は、タバコ屋のおやじ榎木。なんていうか直視するのがつらいっていうかダルい、好感持てんのやって。すごくヤニくさいなんて、タバコ嫌いの私はそれだけでもひいてまうんやけど、ストーリー全体に煙がかかってる、ような感覚があってさ。話の展開も見えにくくて、よくわからんしさ。途中までは、ほんとつらい。でも。ほいでも、だんだん榎木がかっこよく見えてくるんだて。違うか。自分の中で認めざるを得なくなってくる。気になるひと、になる。そして彼は裸祭り、ちがうか、諸肌祭で裸男の群衆に突っ込む。そして衝撃の真実。ラスト。がーーーーーーーーーーーーーーーん。うそだって。いかんて。そんなのいかんて。切なすぎるって。許せんて奴ら。そんなんあり?だったら、もっと早ぅきづかんと、榎木!ネタバレになってはいかんもんで、こんな書き方になってまうけど、許してちょーね。なんで今回は名古屋弁なのか(しかも怪しく遠州なまりと関西なまりもあるようだ)というと、この小説の舞台が愛知県稲沢市(生稲市となっとるけど)で、登場人物も(って榎木だけか)名古屋弁をばりばりに使っとるから。故郷を舞台にしとるのが懐かしいもんだで久々に私も使ってみよーと思ったんだて。読みにきぃーてかん?わぁーりぃねぇ。直接聞いてみてゃーて?えーよ連絡ちょーでぁー。あーよぉやく調子でてきたがね。フィクションだて著者もあとがきで書いてらっせるけど、稲沢周辺に住んどる人なら思わずノンフィクションだったら、と下世話な楽しみ方もできる一冊。北宮市(一宮市)、布施宮神社の諸肌祭(国府宮神社の裸祭)、地元の大きなスーパータガノヤ(ヨシヅヤ)、操車場、警察署。あのへんかな、このへんかな、て想像しながら読むのも楽しいて。松岡さんは稲沢の出身とのこと。しかも年齢も二つ違いなので、すごーい生活圏がだぶってた。うれしー。あらじん(亜ら時…どんな当て字やったっけ)で珈琲飲んだりしてたかもー。もしかして「ちゃんラーメン」も好きだったかもー。というわけで、松岡圭祐さんにより親近感を持つことになった一冊でした。『煙』
原稿用紙855枚。3冊ほど併行して読み進め、3日くらいかかって読んだ。(ちなみに読みかけは、東野圭吾さん)催眠療法のエキスパート、嵯峨が救おうと奮闘する相手、入絵由香。多重人格の彼女を占い師として利用する自称催眠術師の実相寺。高らかに笑い、自分は宇宙人だという由香。証券会社の横領事件。その疑惑と追及。上司の恋愛模様。真相は、そしてそれぞれの結末は。てことで、面白く読みました。が、最後10ページほどを残して中断させられたのだが(いちおう、主婦なので家事育児)、もんもんとすることもなく、明日ででもいいか、と思ってた程度の面白さってことで、それっていまいちってこと?いえいえ、おもしろかったです。最後で予想もしてない展開になって驚いたし。どうせ一冊で終わらないんじゃないの?という覚悟をしてたからかもしれない。シリーズもので、読む順番を確認せずに読んでいるので、なんだかこう、妙な感じ。来週のテストの答案を先生が見えるところで作ってる、見えちゃうんですけどぉ、という感じの居心地の悪さ。リンドバーグのCDみたいに、わかりやすくしてくれぃ。あっ、ここまで書いて気付いた。「千里眼」の次に読んだ「ミドリの猿」の読書日記がまだだった。あれ?それが続きがあってもだえそうになったやつだっけ?それに出てきた「ちょっとあぶなさそうなサガくん」がこの作品では頼りがいのあるカウンセラーで、ちょっと見直したワ、といった感想も持ちました。岬美由紀ほどのインパクトはないけどね、嵯峨敏也もなかなか素敵。さあ次も読むぞ。でも次ってどれだろう…。
『ばたばたナース秘密の花園』桜木 もえ講談社 (2002/05)時間がない。片付けられない病の私、片付けなくちゃと思っていた山の上に、今日だけであらたに10センチ以上の山が積み重なった。なぜだーっ。トイレも何時間も前から行ってない。行きたい。なぜ行けないか。幼児2人が手強いの。いいわけです。ハイ。2ちゃんやったりしてるんだものね。とほほ。というわけで、走り書き。読みやすい、ナースのエッセイの何冊目か。今回は自身の妊娠出産の話と、おまけの知識。立ち会い出産をしないことについてやら帝王切開への切り替えやら、選択に対して理由がちゃんとあること、責任感のあるところが共感できた。私は立ち会い希望でしたが。126pに、心の琴線に触れた部分があったので、そこを紹介。『暇とは、貴重なものであると思う。暇つぶしできる相手とは、かけがえのない者なのだろうと思う。』なかなかこの年になると(また言い訳?)見つからない、見つけられないけど、あきらめないでいたい。それよりも、今いてくれるかけがえのない人たちを大事にしなくちゃ、と思う。『ばたばたナース秘密の花園』
『キャベツくんのにちようび』長 新太文研出版 (2004/02)我が息子お気に入りのキャベツくんシリーズ4作目。ブタヤマさんとキャベツくんが道で会う。またも、おなかがすいて、キャベツくんを食べようとするブタヤマさん。すると、ふたりを招く声がして…。「いらっしゃいいらっしゃいおいしいものがありますよー」といわれてついていくと、あら!と思ったら、あら!そうきて今度は、あらら!いつもの「常識」を蹴飛ばした愉快な展開に、親子で笑った。息子2歳10ヶ月は猫のセリフをうまいこと、真似してた。おいしいもの、大好きだもんね。(食い意地が張ってるもので)また、猫がかわいくない。バカ殿の志村けんみたいな顔。なんとも奇妙な、でもいかにも、という気もしてくる不思議。こんなにちようびも、いいかもね。キャベツくんの、やさしさもいい。『キャベツくんのにちようび』
『日本ベストミステリー「珠玉集」〈上〉』日本推理作家協会光文社 (1992/06)背表紙には「絢爛たる綺羅星の競演」。まあ、おもしろかったけど、そこまで?印象に残った物は、うーん、目次を眺めても思い出せない。新聞の投書の形をとった山田正紀『しつけの問題』はオチがいかしてた。東野圭吾『甘いはずなのに』は、ちょっとどきどき、ラストは悲しく、でもほっとさせられるお話。「誤解」について、考えさせられた。内田康夫『願望の連環』は東野圭吾『ブルータスの心臓』を思わせるお話。はっ、ネタバレ?山村美紗『竜の寺殺人事件』はなんかすっかり1時間ドラマが頭の中で流れたわ。京都だし、いかにも絵にしやすそうなヒロイン。嘘っぽいお金持ちさがまたドラマのよう。筒井康隆『都市盗掘団』、大沢在昌『12月のジョーカー』あたりはなんか向いてない、と思った。苦手です。好みじゃありません。皆川博子『木蓮寺』半村良『酒媼』あたりは、人生経験のなさと理解力のなさのせいか、さっぱり、もう、外国語。珠玉集ということだけど、私には「猫に小判」だったようです。だれだ「豚に真珠やろ」って…。その通りだけど。ぶうぶう、つぎいってみよ。『日本ベストミステリー「珠玉集」〈上〉』
『顔面漂流記―アザをもつジャーナリスト』石井 政之かもがわ出版 (1999/03)帯より。『アザと戦う”自分探しの旅”「衝撃的な本である。そして、名著として評価されるべき内容の作品でもある。」(共同通信)』顔に痣のある人の、違和感、自己否定、疑問、やりきれなさ、諦観、怒り、孤独感。障害ではない障害。わかるかといわれると、わからない。でも、かなりわかる方だと思う。なぜなら、私自身が「そっち側の人」でもあるから。私の頬にある傷。10センチくらいの切り傷。縫合の跡。「女の子」なのにそんなものがあるなんて。ね。子どもの頃は、当然、いじめの対象になった。この本の著者は本の最初で「はじめてのあだ名」が「キカイダー」だった。そして私は「ヤクザ」と呼ばれた。「ヤクザ」を意味して頬に傷があることを指でしめす。まさにその位置にある、私の頬の傷。今でも忘れられないいくつかのシーン。絶対覚えてなどないだろう、彼女達の、書くのもためらう言葉の数々。何気ない一言が、何気ない行動が、ひとを深く傷つけることを学んだ。自分自身も刃になった。そのことの方が今は悲しい。何よりつらかったのは、傷があったことではなく、傷のある自分をありのまま受け入れてもらえなかった(と感じた)こと。一度、目立たなくする手術をした。当時はその「親心」に感謝し涙したけれど、今は複雑な思い。傷のある私では愛されないの?ありのままの私では受け入れられないの?化粧をしないとだめなの?隠せばいいの?悪いことしたわけではないのに、隠さないといけないの?私には、隠さなければいけないものがあるの?化粧をしない私。女らしくない私。(ま、もともとガサツですが)それは「傷を隠し、従順で女らしく、女性として『欠けた』ところがないようにしていれば、嫁としてもらってくれる男性が現れて、『ひとなみの』幸せをつかめるかもしれない」という親の気持ちに反発してたからだと思う。とらわれている、という意味では親も自分も同じだった。親の「世間」は狭かった、と今は言える。それは100%親の責任ではなく、彼等も不幸だったと言える。世の中には、いろんな人がいる。いた。傷のある私をあからさまに「悪意ある関心」で見る人もいれば、「善意の無関心」の人も。そして前者にこびる必要もなく、後者が特別素晴らしい人だと思う必要もない、ということもずいぶん後になってから自分で気付いたよ。ただ、恵まれていたことは事実。気付けたことはラッキーだった。傷のおかげで失ったものも多いけれど、得られた物も多い。今は幸せだから、傷を負う前からやりなおしして別の人生を始めるか、と言われたら今のままでいい、と言える。(別の時点からやりなおしたいですけど)この著者の石井さんは、『ユニーク・フェイス』という顔に疾患、損傷などがある当事者のためのセルフヘルプグループを作っている。URLはこちら。http://www.uniqueface.org/もしかして私が役に立てることがあれば、お手伝いしたいな。この本のラストに、こうある。『この赤アザも、答えをもとめて長い旅に出るとは想像もしなかったろう。「お前にとってアザとは何だ?」赤いアザよ。答えてやろう。人間である証だ。』私もまねっこ。「お前にとって傷とは何だ?」10センチの傷よ。答えてやろう。 わ た し である証だ。傷つきの私を、まんまで受け入れてくれた、受け入れてくれている私の大事なひとたち、あらためてありがとう。私もありのままのあなたが好きよ。『顔面漂流記―アザをもつジャーナリスト』
『仮面山荘殺人事件』東野 圭吾講談社 (1995/03)読み終えて…そうか、仮面というのはそういう意味だったのね。勘のいい読者なら。主人公がドアの上の仮面に気付いた時点で気付いてるのかも。ぼんくら読者の私は、読み終えて数時間たってから気付きました。朋子、かわいい朋子。事故で足をなくしても、その性格のよさで結ばれたパートナーを幸せな結婚をするはずだったのに。カーブで衝突、転落事故死。自殺だったのか、他殺だったのか。動機はなんだったのか。犯人がいたのなら、それは誰だったのか。関係者が山荘に集い、また事件が起きる。どきどきしながら読ませていただきました。ラストはちょっと、かなしかった。朋子。かわいそうな朋子。いじらしさいっぱいの朋子。そんなかけらもない私自身がなんだかかなしくなった。関係ないか、それは。『仮面山荘殺人事件』
『メダカの花嫁学校』阿川 佐和子文藝春秋 (2000/10)1991年発行の彼女のエッセイの文庫化。読み終えて…あまり面白くなかったです。それは先日読んだ檀ふみさんとのリレーエッセイに比べてしまったからかもしれないけど。ほんと、壇ふみさんと出会って、人生変わったのかもしれないね。いい方向に。(非婚の方向にいってしまったけれど、幸せそうだし)かるーい文章が続き、淡々と読めました。阿川さん好きな方なら楽しめるのでは。私はもうすこしぴりっとしてるのが好き。進藤晶子さんというアナウンサーの解説が、私の中では一番面白かった。メダカの行く末のオチ、よかった。『メダカの花嫁学校』
『回廊亭殺人事件』東野 圭吾光文社 (1994/11)これまた一気に読んでしまった。偽装した「私」が復讐を遂げるため、遺言公開の場である旅館へ赴く。そこで起きる殺人事件。あー子どもがおきちゃったので。つづきは、また。ひとまず中断。戻ってきました。心中事件を起こした後、自殺と思われてた「私」が犯人を見つけ復讐するために、知人の女性に変装。犯人はいったい誰なのか。怪しい人がいっぱい出てきて、読んでいてもさっぱりでした。でも、「私」のどきどきぶりが伝わってきてこちらまでどきどきしてしまった。犯人探しの面白さと同時に、「私」の偽装、やばい行動、刑事の疑惑、などがばれちゃったらどーしよーっという今中断してこどもにお茶を入れたのだが、さっきふたりがごそごそしてた辺り、どーしよーっっどころではない惨状。なんて打ってたら、そばで娘が引き出しに指を挟んで泣き出した。んもーっ。こんな状況でもさくさく読める本を書いてくれた東野さんと、速読できる自分の能力に、感謝。おもしろかったです。ハイ。以上。『回廊亭殺人事件』
『しんかんせんでおいかけろ!』横溝 英一小峰書店 (1997/07)しんだいとっきゅう『はやぶさ』で東京から熊本に向かう姉弟。1年生の弟は乗ったものの、6年生の姉をホームに残し、出発してしまう列車。さて、姉はおいつくことができるのか。弟に無事会えるのか。弟は一人で大丈夫なのか。で、新幹線でおいつこうとするお話。アートとしての絵本(わたしのコレクションに入れたいかどうか)、としてはうーん、いまいち。文章の書体も気に入らない。(細かいな)のりもの絵本を息子に、ということで購入。その点では列車の絵も満載で満足。ストーリーは単純なんだけど、テレカのことでおじさんに嫌な顔をされるだとか、そもそもそういうことを言っちゃう愚かさとか、しょぼーんとしてる姉が家出かななんてうさんくさがられるところとか、妙にリアルで善意がいっぱい♪でないところは、気に入った。息子2歳10ヶ月も電車の絵を眺めて嬉しそうでした。本体879円。『しんかんせんでおいかけろ!』
『はしるはしるとっきゅうれっしゃ』横溝 英一福音館書店 (2002/11)こどものとも傑作集。福音館のサイトで見つけて(子どもの興味のあるジャンルで分類されていて便利!)アマゾンで購入した2冊のうちのひとつ。列車にはまっている息子2歳10ヶ月に。届いて開封、表紙を見て「あっっ!すーぱーあずさっ」「よんでよんで」。で、読んだ。あっという間に興味がそれた。うんちくはいらないらしい。対象年齢が4歳からとなっているだけに、『しゅっぱつ しんこう!』に比べると文章も長く内容も高度。『しゅっぱつ しんこう!』じゃ物足りなくなった頃の、科学に興味を持ち出した子には適していると思われる。電車の形の違いとか、信号のしくみとか、振り子式車両とか、砂利が敷いてある理由とか、なんでなんでが出始めた子なら夢中で読むかも。そういう説明がついた科学読み物としてはグッド。今の息子にはそういうわけでまだあってなくて、★ひとつといきたいところなんだけど、絵が美しく、それもつながっているというのがちょっとグッときたので、★二つです。幼稚園児か小学校低学年の子であずさに乗る時に持たせてあげたい一冊です。本体838円。『はしるはしるとっきゅうれっしゃ』
『ああ言えばこう行く』阿川 佐和子 檀 ふみ集英社 (2003/05)注)この本のタイトルの「嫁」の文字にバツが入ってます。ヒットした前作の2匹目のドジョウを狙った交換エッセイ。といっても前作はまだ読んでないわけですが。軽妙なやりとりがとても爽やか。仲のよさ、底にある敬意あってこその、ワルクチ。女のユウジョウもいいものだね、なんて思うなぁ。なんていうか、かろやかだ。かろやかに生きていらっしゃる、というのではなくて、文中に出てくるように手持ちのバッグは紙バッグで、ものをさがすのにゴソゴソガサガサ、みっともないったらありゃしない、て感じなんだけど、そういう姿を肯定している、ひっくるめてあなたでありわたしであることがOK、という点が気持ちいい。ヒットした背景には、実はそういう姿勢、人間関係が現実にはなかなかなく、一方で多くの人が欲しているからなのではないかな。気の置けない仲間。そのままの自分で受け入れてもらえる場。ばかだなあ、あほやなあ、が褒め言葉だったりする関係。いいね。いいよね。これからだって、作れるよね。と独り言。『ああ言えばこう行く』
『千里眼』松岡 圭祐小学館 (1999/05)ああ、お尻が痛い。椅子に腰掛けずっと読んでいたから。もう、止まらなくて。原稿用紙965枚。ずいぶん時間をかけて書かはったことでしょう。半日で読んでしまいました。だってもう、首根っこつかまえられて、ぐいぐいとお話の世界へひきこまれて、中断するところもなく、終わりまで走らされてしまった、感じ。岬美由紀、魅力的な主人公。表現力が足りなくて、陳腐な言葉しかでてこないけど、めちゃめちゃカッコイイ!「民間人」でありながら、自衛隊戦闘機乗っちゃうわ爆発物処理しちゃうわカウンセリング、催眠もやっちゃうわ、武道も達人だわ、正義感もあるわ、子どもにもてちゃうわ、とこう書くととっても嘘くさい話になりそうなもの。なのに、ありえそうでほんとに飛行機どうかなっちゃうのでは、要人やばいのでは、とドッキドキの数時間。松岡圭佑さんの筆力なんでしょうね。ずいぶん以前にお勧め書籍で見かけて、読むまでにずいぶんと時間がかかったこの人の本。(だって分厚くって、これでつまんなかったら…と腰がひけてた)いやーもったいなかった。面白かった。また一人、読破する目標ができてとても嬉しい。脇役の元上司、刑事もいい味出してる。カツラに悩んだり、息子の反抗に悩んだり、さりげない描写もいい。てことで、2月で一番夢中になって読んだ本、になりそうです。ごちそうさまー。『千里眼』
『少子』酒井 順子講談社 (2000/12)私の好きなエッセイスト、酒井順子さんの「ちょーっとまじめに少子化について書いてみましょか、ね。ま、期待されても困るんッスけど…」て感じの考察。痛いから。結婚したくないから。面倒くさいから。愛せないかもしれないから。シャクだから。男が情けないから。うらやましくないから。などの理由が酒井節で語られる。なーるほどなーと、思う。自分自身も「女は出産育児を(まあ結婚も、か)してこそ一人前っ」とか「産める性であるのにそれを生かさないのはもったいないっ」とか思わず、「たまたま産みました」というスタンスなので淡々と読んだ。出産は、確かに痛かった。無痛分娩への批判の声は今も聞くけど、それもアリだと思う。私はまあ、一回やってみて「こんなもんか」と納得。何事も経験。面倒。ただでさえ面倒くさがりで四角い部屋を丸く掃く、どころか掃除機どこよ、というずぼら、怠け者の自分に「育児」は手に余りまくりでございます。家事との両立なんて、もう、どこの世界の話でしょうか、と。読み終えて、託児の充実も必要だとか、行政に対するニーズを伝えていかなくちゃ、と思うと同時に「輝く、素敵な経産婦」でありたいなぁと思った。うらやましがられたいとは思わないけど、それくらいに、魅力的でありたい、なりたい。まあそれは子どもの有無に関わらず自己啓発は必要だということですね。てことで、今から図書館へいってきまーす。自分を内面からも磨かなくちゃねっ。(って磨くような書籍を選んでるかよ?)『少子』
『家族の行方』矢口 敦子東京創元社 (1994/10)ある少年の失踪捜査を依頼された推理小説家の私。息子とともに、慣れない探偵活動をするうちに向き合うことになった、忘れがたい記憶。そして現実。少年の孤独、謎。殺意。それぞれの結婚、それぞれの離婚。原因。逡巡。「家族」の意味を問いかける緊迫の心理ミステリ、と背表紙にある。そこそこ緊迫、そこそこ考えさせられたお話だった。自分がそこまで大きな子どもを持ってないからピンとこなかったのか。子どもの立場でなら、わかる気がする。親への殺意。孤独。自己否定。諦観。読み終えてみたらおもしろかった、という感じだけど夢中で読んだとは言えないなぁ。文庫の表紙イラスト、タイトルからはもっと期待しちゃっていた。美少年つーのも現実味がなかった。辛口かな?『家族の行方』