ベッドから腕を伸ばし、手探りで時計をつかむ。 朝の11時を回っていた。
「猫の首輪を買う夢をみた・・・」 と小さく伸びをしながら夫が言う。
はぁ・・・なんてかわいい夢だろう・・
そんな日常的でかわいい夢に比べると わたしが昨夜みた夢はちょっと寒い夢だった。
「今が・・・便利な世の中に生きてる今が夢だった、夢をみた」 とわたし。
「それヤヴァイよ。超越してる・・・」
ベッドの片隅で寝返りをうちながらそう夫が言う。
その夢の内容は、 わたしは今ほど豊かなでない中世の時代に生きていて
おいしい食べ物やきれいな洋服 美しい音楽や面白い映画やTV コンピュータや携帯電話という 手を伸ばせば何にでもすぐ手が届くという
そんな架空の理想郷に住んでいる夢を見た。
つまり今わたしが存在している時代が 想像し得る限りでの最上の住みよい世界だった、という夢を見たのだ。
中世時代のわたしは夢から覚め、ベッドから起きあがり 小高い丘の上に建つ小さな家の庭にひとりぽつんと立って
遠くにみえるまだ美しかった頃の 青く澄んだ海を眺めながら さっきまで自分が見ていた夢に感謝した。
あゝ・・・ 何の不足もなく 暖衣飽食の生活ができる、「今」に深謝。
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