FILL-MIND [フィルマインド]心情記 

   
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2002年09月23日(月)  ■影響力と潜在力■(後半 街角綴:高尾)■

私が誰よりも、何よりも好きで、大切にしている女流作家がいます。

彼女はデビュー当時、今の旦那様とは違う男性と、一緒に暮らしていました。
ちょうど大きな賞を取った前後に、その彼が逮捕されて強制的に離れなければならなくなり、しかも彼は酒に酔った上での婦女暴行のような容疑だったと記憶しています。情報ソースが曖昧なので、不明確な点が多々あり正確なことが書けなくてすみません。
その手の話に全然疎くて、当時まだ、私自身が彼女に興味がなかったため、全て後から知った話ゆえ。

若い女流作家の大賞受賞と強烈なスキャンダラス性が相まって、かなりマスコミを賑わしその作風からも、嫌らしく書き立てられていたのだろうと想像できます。
また、皮膚の一部のような存在で一緒に暮らしていた彼の裏切りにも耐えなければならなかった心情。どれほど深く傷付いていただろうかと思うと、痛みに胸を襲われます。

その中で、彼女は意欲的な執筆を続け、年間数冊の単行本をあげていました。
その頃の書籍を見ると、本当にがむしゃらに書いている感が否めないものも見受けられます。
その頃の背景を感じながら読み直したら、きっともっと胸詰まる想いになるでしょう。時間が有る時、一度作品を時系列に並べて読み返してみようと思いつつ、なかなか実行できないままだけど…。


こんな話を書きたくなったのは、ただひたすら書く、そんな心境が今の自分にクロスしてくるような感覚だと思えて…。もちろん、全然背景は違うけれど。

どんな状況でも、どんなに辛くても、貫くべきことはやり抜く。むしろ、感性が尖っている時だからこそ書かずにはいられない。彼女のそんな姿勢を手本にしている部分は大きい。

人は誰しも何かしらの影響力を受けて、育ってゆくもの。私にとって彼女の作品から滲み出る、醸し出すパッションは、絶大な力で私の基盤を作ったと言っても過言ではないかも。(ちと大袈裟かな…)

ただ、書く。それだけで救われる日々もあるのかもしれない。書き続けたい。だから、今日も。

女流作家の名を伏せたのは、あまりにも大切な存在なので少し恥ずかしいからかな。多分、分かる人は分かるでしょう。私の文面から見ても、ばればれだし…。

さぁ、がんばろうと想いをこめて。


2002年09月23日(月)  ■街角綴:高尾■

ごくたまに、身近に薄っぺらいって思えてしまう人と遭遇し、戸惑う時がある。言っていることと中身が伴っていないタイプ。決まってそんな人ほど大口を叩く。

痛々しくもあり、情けなくもあり。それでも人間だから話してみると健気さを感じて、つい情が移る。それも、深情けの一種と言うのだろうが。

*  *  *

だいぶ前に、いい大人になってデートコースに東京で一番高い山、高尾山登山を選んだ人がいた。わざわざ早起きして、私はお弁当までつくって。
誘って来たのはひょんなきっかけで知り合った高校教師。現代社会が専門らしく、時事事項とかその私的な解説とか、よく喋っていた。バブル崩壊後の経済やら企業戦士うんぬんやら。
でもそれがとても陳腐で…。

学校という守られた世界だけに通用する理屈。マスコミ情報だけで出来上がっていく論理。職業教師という見おろす立場の人からものを教わったのは十代の頃しか覚えていないけど、こんなにリアリティに欠けていたんだっけって、内心少し焦った。

母校の恩師はこうではなかったはずだと慰めながら歩いた山道。確か、季節はさわやかな風の吹く山菜の旬な頃だった。

頂上で食べたお弁当。半熟の茹で卵をえらく気に入ってくれて、出来栄えの良さをとても誉めてくれたっけ。そんなとこ、いい人だったな。


薄っぺらな言葉たちは心に何も響かせない。

体験が伴っていない言葉は、心に響かせることは難しい。でも、真摯さを感じ取り、育たせることはいくらでもできる。そこにある形にだけ捕われて放棄してしまった時、薄っぺらなまま宙に舞う。芯の伴わない言葉しか表せない貧しさを思う。


路線の分かれ道で離れて、わらびをお土産に買って、一人で戻った帰り道。とても疲れて、中央線高尾駅のベンチに座る。夕日に染まる奥多摩の山々を眺めて、茜色に映る空に身を委ねて。

*  *  *

数年が過ぎ、また同じ地に降り立つ。雲は空を覆ってぼやけた空気をつくる。
山の頂きを見上げるように母が眠る場所。秋の彼岸。まだ出来たての墓に出向いた。通り過ぎただけの想い出と共に。

半年後、またここに訪れる時は暖かい陽に浴びていたい。薄っぺらでない人生を。薄っぺらでない言葉で奏でていたい。

初秋の休日。東京のはずれ、高尾で想う。




 
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