2004年11月30日(火)  再びナナコが立っていた。
 
夜勤明けの午前5時半。さみぃなさみぃなはよ帰りたいなとブルブル震えながら外来の自動販売機に缶コーヒーを買いに行ったらやけに明るい。もう患者さん来てるのかな。なんだか上の階慌しいし。と思いながら缶コーヒーを購入し、外来の待合室をチラと見ると、朝日のように輝いているべっぴんさんが座っている。こんな時間に一体誰だろうと近寄ると、「おはようございます」と笑顔で挨拶したのは松嶋ナナコ。
 
わ。ホンモノだ。昨日に引き続きホンモノの松嶋ナナコを見てしまったよ。これはきっと運命と呼ぶんだろね。と思ったけれど、それは撮影と呼ぶのであり、実は昨日の撮影も僕の職場の病院で行われていたものであって、今日もこの病院で撮影があるらしい。で、目の前に松嶋ナナコ。その周りに業界関係者3人。わーわーわー。目の前に芸能人。ボ、ボールペンとメモ帳は白衣の中に入っている。ここぞとばかりにサインコサインタンジェント。と、舞い上がる訳でもなく、目の前の松嶋ナナコはこれから撮影を控えているのかもしらんが僕はこれからオムツ交換を控えているのであって、本当は悠長に缶コーヒーなんて飲んでる暇はないのだけど、どうしても缶コーヒーが飲みたくなったのであって、看護婦さんに黙ってちょっと外来の自販機まで出てきてしまって松嶋ナナコに会ってしまって、それを報告すると看護婦さんに缶コーヒー買いに行ったのがバレてしまう。でも松嶋ナナコが挨拶してくれたことを伝えたい。でもそういうことを考えている前にオムツを交換しなければいけないと朝から混乱。
 
夜勤明けは滅多に病院の朝食は食べないんだけど、食堂は外来を通っていかなければならないので、今日朝食を食べに行けば撮影が見れるかもしれん。と、仕事を早々に済ませ、朝食を摂りに外来を通過した時にはもう撮影が始まっていて、伊藤英明が白衣を着ていた。医師免許も看護師免許も持っていない伊藤英明はただの俳優であるくせに僕より白衣が似合っていた。
 
しかしこれは一体何の撮影だろう。看護婦さんに訊ると「なんとか24時よ」と言う。ドラマの類を一切見ない僕は「なんとか24時」では全然わからない。よって彼女に「伊藤英明と松嶋ナナコがうちの病院の外来で朝からイチャイチャしているのだがこれは何のドラマだろう」とメールしたら、「キャー! 伊藤英明かっこいい?」と答えを求める為に僕は送信したのに返信の内容は逆に質問されている。伊藤英明が格好いいかどうかなんて僕は知らん。「なんだか猿のようだよ」と送信したら「お前がな」と返信。猿のような僕は鼻の下を伸ばしながら食堂に行くことすら忘れて撮影に没頭。
 
2004年11月29日(月)  そこにナナコが立っていた。
 
今日、何かの撮影で、松嶋ナナコをチラと見たんだけど、それはそれは綺麗な人であった。絶世の美女であった。なんか役者さんみたいであった。と、松嶋ナナコは既に役者だったことに気付き、なぁんだ。役者か。綺麗で当然じゃないか。当たり前田のクラッカーじゃないか。しかし綺麗だったなァ。でも僕の彼女の美しさには負けてたなぁ。
 
なんてことを書いたのは、この日記は僕の彼女も読んでいるのであって、間違えても松嶋ナナコは彼女よりも綺麗だったということを書いてはいけない。そんなことを書くと、「だったら松嶋ナナコと結婚すればいいじゃない!」なんて彼女お得意の極論が始まるので、結婚すればいいじゃないと言われたら僕だって結婚したいけど、相手は女優であって僕は看護師であって、来月ボーナスが出るとしても年収では到底適わないし、背丈だった松嶋ナナコの方が上だし、ここまで書いてやっと気付いたんだけど、あの女優は人妻じゃないか。余計無理だよ。と思うに至り、やっぱり僕には彼女しかいないと、ここまで書けばきっと彼女もご機嫌。
 
で、松嶋ナナコ。確かに綺麗で好きか嫌いか訊ねられると明らかに好きな女優なのだが、僕は松嶋ナナコのナナコの漢字を知らない程度に松嶋ナナコが好きなのであって、ナナコなんてグーグルで検索すればすぐにわかるじゃないかと言われても、そういうことをすること自体が面倒臭いと思う程度の好きなのであって、松嶋ナナコ。なんか研ナオコみたいだなぁ。と思いつつ、一体何の撮影だったんだろ。デカレンジャーかな。なんて、ドラマなんて全く見ない僕は、月曜夜9時になると決まって彼女に電話をして、織田祐二とオレとどっちが大切なんだと喧嘩を売って、あまりにもドラマに熱中しすぎて全く僕の相手をしてくれない彼女は、「あ、うん、そうね、そうだすね」と生返事。「そうだすね」とヘンな言葉を言ってしまったことすら気付かない様子。「そのドラマ面白いよね。『カンチ、セックスしよ』ってやつでしょ」と言うと「何それ? ちょっとまた後でね」と、ジェネレーションギャップすら感じたそのとき僕の背後で「チャカチャーン」と、東京ラブストーリーのアレが流れた。
 
2004年11月28日(日)  アマゾンとドラクエと雄司。
 
興味ない人はホントどうでもいい話かもしれないけど、ドラクエが発売されました。1ヶ月前から予約していた僕は発売日にアマゾンから届きました。アマゾンというのは熱帯雨林とかワニとか探検隊とか毒ヘビに噛まれて隊員が負傷とか、そういうアマゾンではなくて、インターネット通販のアマゾン。僕の著書である「恋愛歪言」だってアマゾンで購入できるんだけど、いつだって「ただいま在庫が切れております」と表示されて残念な気持ちにさせるアマゾンである。
 
んで発売日。昨日だったんだけど、昨日は昼間は珍しく働いていて夜は屋台でおでんを食っていた。おでん美味しかった。その前に食ったお好み焼きも美味しかった。その後終電間に合わなくて都内の中心で寒いと叫んだんだけど、どうにかタクシーを拾ってマンションに帰って熱いシャワーを浴びて、よし明日休みだしドラクエでもしようかなと考えながら眠ったのはビール、焼酎、酎ハイを飲んで酔っ払っていたから当然である。
 
結局今日は正午に起きて、ぼーっとしながらアッコにおまかせを見ていて、ちきしょー。ヒマだなぁ。やることねぇなぁ。給料日前だから金ねーしなぁ。何しよ。何してこまそ。と、部屋をウロウロしていたら、昨日届いたドラクエがアマゾンの箱に入ったまま放置されてあったので、あぁ! ドラクエだった! お馬鹿! 早くやらなくちゃ! 雄司に先越されちゃ適わん! と、この雄司というのは小学校の同級生であって、ドラクエなど発売されるとどちらが先にクリアできるかということを競い合っていたが、それももう20年ほど前の話であって、きっと雄司も今頃28歳なのであって、普通であればドラクエなどに目を輝かさない年頃なのである。
 
雄司何してるかなぁ。この同じ空の下のどこかでドラクエやってるかなぁ。やってねーよなー。もう28歳だしなー。会いてーなー。また競い合いてーなー。と、ノスタルジックな気分に浸りながら電源を入れたドラクエは、僕たちの青春時代を象徴するような2D画面ではなく、ましてはドット絵などでもなく、ひたすら3D画面で目が回る目が回る。スライム1匹倒すのにも必死であるのは、時代が進んだのではなく僕が歳を取ったということなんだろうと思った。
 
2004年11月27日(土)  概念と終電。
 
彼女以外の女性と食事に行くのは何ヶ月振りだろう! 何年振りだろう! 生涯何回目だろう! と、午後7時上野駅、待ち合わせ場所のジャイアントパンダ像前、に、辿り着くことができなかった僕は、とりあえず人が多いところへ行こうと、ジャイアントパンダ像を探すことが先決であるはずなのに、人が多ければ何とかなるとかそういうことしか考えていないから、「今どこにいますか?」とメールが届いても、「わからない」としか返事ができない。しかしわからないながらも何とかしようと、とりあえずウロウロしてようやく見つけたのがジャイアント西郷像。おぉぉ。西郷さん隆盛さん。東京は、人ばかり多くてどうしようもない所ですよ。鹿児島生まれヒップホップ育ちの僕は待ち合わせ場所にすらろくに行けない。どうすればいいでしょうか。「じゃぁ、とりあえずそこにいてください」と言ったのは西郷像が僕の心に訴えてきたのではなく、食事に行く女性からメールが届いたのであって、どうしようもない男だなぁ。全く頼り甲斐のない男だなぁぼかぁ。こういう風にして東京砂漠に埋もれていくんだなぁ。
 
待ち合わせの女性とようやく会うことができ、さぁ晩飯に行こう。昨日ネットで検索したお好み焼き屋に行こうじゃないか。僕は地図を持っていないが、彼女の携帯には店の地図がメモリされている。ちょー頼り甲斐あるし。よし。ここは男らしく貴女の後をついていこう。と、アメ横の人波をかき分けつつ、店があるらしい方角へ進むこと30分。もうこの近くの店でいいや。と、どちらとも腹が減っているものだから、目的地のお好み焼き屋のことなどどうでもよくなって、目がついたお好み焼き屋に入りましたと! ここまで何度「お好み焼き」って書いていると思ってるんだ!
 
と、突然立腹してしまったのは、何度書いても僕のパソコンは「お好み焼き」を「お好みや気」としか変換せず、んあぁ。めんどくせー。んじゃあまず「お好み」と書いてから「焼き」と書こう。ということになったのだけど、「お好み」で変換すると「御子のみ」なんて意味のわからない文字に変換されて、「焼き」と変換すると「妬き」と変換される。お好みや気。御子のみ妬き。なんだこら。馬鹿にしてんのか。それならそうとこっちも考えがある。次行きましょ次。と、たらふく食って店を出て、駅前の屋台に行きました。
 
今風の格好をした28歳の男と23歳の女性が何故おでんの屋台に行ったかというと、今風なのは格好ばかりで考えていることはというと、最近の日本語はおかしいだのイラクに行かなくともその辺で自分探しをすればいいじゃないかだの、屋台の狭いカウンターに肩を寄せ合い座っている中年サラリーマンのそれとたいして変わらず、延々と年齢不相応の話題に花を咲かせていたら午前0時半を過ぎている。
 
ヤバイ。終電が。と、僕の根底に眠る好色な心が故意に終電が過ぎる時間まで飲んでいたと、そういうことではなく、僕はこの通り鹿児島生まれヒップホップ育ちだから、電車の終電など気にしてお酒など飲んだことがない。いわゆる「終電」という概念がないのだよ僕の頭は。しかしここは東京上野。上野発の夜行列車降りたときから、池袋で乗り換えて板橋まで向かわんといかん。ヤバイ。けど大丈夫。キミも大丈夫ですか。「私もギリギリ大丈夫だと思う」と、駅のホームで別れて、それぞれ反対方向の山手線で帰って、彼女はギリギリ終電間に合ったようだが、僕は池袋に着いたはいいが乗り換えの終電に間に合わずどうしよう。ヤバイ。サムイ。パトラッシュ。天使が僕を天国に運ぼうとしてるよ。と、僕を運んでいるのは個人タクシーであって、無事に我が家に帰りついた僕は、歯の間にはさまっていたおでんの牛すじを取るのに1時間を要した。
 
2004年11月26日(金)  フィールドの問題。
 
僕は自炊をしない、というかできない生活を送っているので、食事はもっぱら牛丼屋、ラーメン屋、喫茶店、ファミリーレストラン、ファーストフード店などの外食産業に頼らなければならず、腹が減るたびに、あぁ今日はどこに行こう。面倒臭いなぁ。腹なんて、減らなければいいのに。胃に鉄アレイでも入れてたら始終満腹なのかしら。
 
と、馬鹿みたいなことを考えながらジーパンを履いてジャンバーを羽織り、マンションを出るのだけど、うちのマンションから一番近いラーメン屋、ここは朝から晩まで行列ができていて入る気にならない。一度行列ができるほど美味いのだろうかと訝って行列に耐えて入ったことがあるけど行列ができるほど美味かった。
 
しかし僕はただ、腹がなんとなく満たされればいいのであって、行列の横を通り過ぎながらバーカ、バーカラーメン如きで並びやがって。カップルで。食欲丸出しじゃないか見苦しい。俺はもっと合理的に飯を食うぞ。お前らと住んでいるフィールドが違う。と、思いながら無精ヒゲで一人寂しく行列を通り過ぎる僕は明らかに行列に並んでいるグルメな都会人より低いフィールドに立っているのであり、そんな低いフィールドから這い上がれない僕は身分相応の店に入ろうと、前々から気になっていたある中華料理店に入った。
 
この中華料理店、看板はあるのだがどこから入っていいのかわからず、何処だろう何処だろうと思いながら先日その中華料理店の前で煙草を買っていたら、偶然に入口を発見したのであり、偶然によってでしか見つけられない入口は見事に自動販売機の裏に位置していたのであり、これじゃあ客は入らんよ。僕は偶然で見つけたからいいものの、他の人たちはそういう偶然を仕事とか恋愛とか人間関係などに有意義に使っているのであって、僕は低いフィールドに住んでるから自販機の裏も覗いたけれど、これじゃぁダメだよ。と、煙草をポケットに入れて鼻をほじりながらマンションに帰った3日前。
 
そして再び入口に立っている3日後。小さなガラスの引き戸を開けて店内に入ると、一人の老人が新聞を読みながら煙草を吸いながらビールを飲みながら腹を掻きながら。と、実に器用な老人だなぁと思いながら、店主はどこだと辺りを見回すと、僕に気付いた老人が「いらっしゃい」と、わー、この人店主なんだー。なんて素敵な普段着なんだー。店主不在だから僕急遽頑張ってますみたいな格好じゃないかー。と、不信感を持ちながら中華そばを注文してポケットに入れてきた外食用の文庫本を開いて出来上がりを待った。
 
しかしホントにわかりづらい入口だなぁ。看板ちっさいし。と、老人を見ると、この店は看板も入口もちっせぇけど、あすこのラーメン屋のようにグルメぶった都会人が来るとこじゃねぇんだ。ここは味のわかる玄人しか来ねぇんだ。だから看板なんて必要ないし入口もちっさくても構わねぇんだ。わかる奴だけ入ればいいんだ。素人は、すっこんでな。と、その顔は語っており、ほぉ、そうなのかぁ。大人の隠れ家気分だなぁ。格好いいなぁ。と僕も関心する振りをしてみたけど、いつまで経っても僕以外の客は入ってこないので心細くなって音も立てずにソバをすすったとても低いフィールドで。
 
2004年11月25日(木)  前世は勇者。
 
プリンタが壊れてしまった。6年も使ったんだからもう充分であろう。さぁー眠りなさいー疲れきったーってこの書類印刷してから体を投げ出してー! って既に絶命しているプリンタにどうにかして命を吹き込もうとドライバを再インストールしたり、えっと、他思い付かなかったのでそれしかしてないけどもうダメだ。この書類明日提出しなければいかんのに。ってわざわざ池袋のキンコーズに行って書類を印刷して、帰りにプリンタでも見て帰るかーってビッグカメラに寄り、写真なんて印刷しないし高画質じゃなくてもいいや。ちゃんと白黒で印刷できたら。と、安いプリンタを探して一番安いプリンタが7800円。おぉ。おぉぉ! や、安いのかこれは。と、プリンタなんてそんなしょっちゅう買うわけじゃないから値段の相場なんてわかんなーい。高いような気がする印刷しかできないくせに。と、プリンタの前をウロウロしながら購入を迷い、迷った翌々日にはドラゴンクエストⅧを8800円で購入する僕は前世は絶対勇者だと思う。
 
2004年11月24日(水)  ロイターさん。
 
ホント日記とか書くことないのにすぐ溜まっちゃう性欲の如く。なんてそっちの方は意外に淡白なんですけど。蛋白が淡白なんですけど。むはぁ。本気で書くことがない。書くことがないので、24日の日記だというのに26日にロイター発共同通信から発信された「ペ・ヨンジュンにファン殺到、9人負傷」の馬鹿さ加減について書こう。
 
ペ・ヨンジュンとは言わずと知れた冬のソナタの、なんていうか見てないからあんまり言わずと知れてないんだけど、チュ・ジェだかチャ・ジュだか東ちずる似の女性とラブストーリーを演じた人。
 
「ニーガーオコシープーガマダムが何を騒いで負傷してるんだ。ちょっと待て、うーん……少なくとも9人が負傷してるね。場所は宿泊先のホテル入口だね。馬鹿だねぇあの国は」と言ったのはロイターさん。
 
毎日ニュースで耳にする「ロイター発共同通信によりますと……」というセリフで出てくるロイターさん。実は人の名前なんです。スコットランドの噂好きのロイターさん(48)なんです。ロイターさんは何でも知ってるから何でも知りたい共同通信の社員の人がロイターさんに菓子折り持ってって「何か最近面白いことありますか。これつまらないものですけど」なんつって情報を仕入れるんです。知らなかったでしょ。
 
2004年11月23日(火)  マリモとマンちゃん。
 
彼女が、「ねぇ、アナタのこと何て呼べばいい?」なんて、付き合ってもうすぐ1年が経とうというのに、今更何を言っているんだ。彼女は今まで僕のことを「ヨシミさん」と呼んでいて、付き合って3ヶ月目くらいに、「もうヨシミさんってサン付けで呼ぶのやめてくれないか」と言ったことがあるのだが、「何よ。いいじゃない。私はそう呼びたくて呼んでるんだから」と、僕の要求は却下された過去があるというのに、今となってやはり「ヨシミさん」では不自然だと言う。おかしなものだと空を見上げる。雲一つない秋空が広がっている。昨日はあんなに天気が悪かったのにね。女心みたいだね。
 
というわけで、新しい呼び名で僕のことを呼びたいと言うので、何と呼ばれてもいい僕は何と呼ばれてもいいと彼女に告げると、そうやって何だって真剣に考えてくれない。この早漏。と、僕は決して早漏ではないのだけど、彼女は身をもって体験しているので早漏なのかもしらんね。と、そんなわけはなく、どちらかというと遅い方の分類に入ると思うのでって何を言わせるんだ。とにかくキミが呼びたいように呼べばいい。昔の彼女から「マー君」って恥ずかしいあだ名で呼ばれていたけど、この際マー君でいいよ。と言ったのだけど、「私は昔の彼女が呼んでいたあだ名なんか使いたくない」と、ほらきた。オンナはいつだってそうだ。なぜか昔の彼女が使っていたあだ名を使おうとはしない。だから僕は5年前の彼女に「マリモ」なんて妙なあだ名をつけられる羽目になったんだ。今も思うけど何なんだマリモって。タモリみたいじゃないか。
 
じゃあ「ヨシミ」でいいよ。オンナみたいな名前だけど、苗字なんだからしょうがない。サン付けが嫌だったら呼び捨てで呼べばいいよ。ヨシミでいいよ。決定ね。と、「マリモ」系の妙なあだ名を付けられる前に、結局自分で決めて彼女も納得するに至ったのだが、僕もここは心機一転、彼女の呼び方を変えてみようじゃないかという話になった。
 
現在僕は彼女ことを名前で呼んでいて、例えば彼女の名前がアユミだったら、「アユミ」と呼んでいるわけで、毎度毎度アユミと呼ぶのは何だか面倒臭いので、便宜上「アユ」と省して僕は呼びたい。キミのことをアユと呼びたい。ということを付き合い始めの頃言ったことがあるのだが、「アユ」ではダメだと言う。何故か問うと、昔の彼氏もそう呼んでいたからと言う。別にいいじゃないか。関係ないじゃないかと僕は思うのだけど、彼女がそういうのだから仕方ない。だから僕はずっと彼女のことをアユミと呼んでいたのだが、僕も「ヨシミさん」から「ヨシミ」になったことだし、キミも新しい名前で呼ぶことにしよう。
 
例えば僕の彼女の苗字が「山下」だとしたら、山下の山を英語に訳してマウンテン。さらにそれを略してマンちゃん。よし、キミは今日からマンちゃんだ。マンちゃんコンバンハ。マンちゃん大好き。マンちゃんマンちゃん。と、マンちゃんを連呼したら途端に彼女は機嫌が悪くなった。おかしなものだと空を見上げる。雲一つない秋空が広がっている。昨日はあんなに天気が悪かったのにね。女心みたいだね。
 
2004年11月22日(月)  体毛ハウス。
 
もう11月も下旬だというのに、ちっとも寒くならない。僕の部屋が暑いのか知らんけど、未だにベッドの横の窓を開けて寝たりしてる。おかしい。地球もおかしいが、僕もおかしい。おかしいというのは体毛のことである。
 
体毛。誰だって多からず少なからずどこかに体毛が生えているものだが、花も育てばいずれ枯れ、太陽も登ればいつかは沈む。体毛だって生えたらいつかは抜ける。頭髪、髭、ワキ毛、陰毛、脛毛など、体には様々な種類の体毛が生えているが、問題なのは、このあらゆる体毛は、その体毛の事情で勝手に抜けるのであって、もう僕が毎日腹が立っているのは、クイックルワイパーで部屋を拭いても拭いても何かしらの体毛が付着しており、例えば頭髪が抜けて僕がそれを発見。すかさずクイックルワイパーで抜けた頭髪を除去するのだが、除去した3分後には陰毛が陰毛の事情で勝手に抜け落ちるのである。体毛いたちごっこである。
 
日頃面倒臭いが口癖の僕も、この体毛ばかりは許すことができず、ムカつくなぁ。本当にムカつくなぁ。全部抜き取ってしまおうか知らん。ツルツルになってしまおうか知らん。しかしそれは体裁が悪いなぁ。それじゃあもう思い切って放っておこうかしら。毎日馬鹿みたいに勝手に抜けやがって。この馬鹿体毛。俺は知らんぞ。もうお前らが抜けても放っておくぞ。勝手に随意に抜ければよい。もうクイックルワイパーも捨ててこます。
 
と、ここまで考え、やはりそれはまずい。体毛は勝手に抜けるのはこれ人類共通した道理であり、僕が体毛の除去を放っておくという方針を掲げたところで、体毛は、「なんか怒ってるみたいだから、これからは抜けることを少し控えよう」と思うわけがなく、従来通りの抜け放題。いずれ我が家は体毛ハウスになってしまう。それは嫌だ。
 
というようなことを友人に相談したら、「簡単だよ。お前ペンとメモ帳持ってるか。今からオレが言うところに電話して相談してみろ。抜本的に解決してくれるはずだから」と、親切な友人が教えてくれた電話番号に電話したら、抜けるのが心配だったらかぶればよい。と奇妙なことを申すので、一体それはどういうことかと訊ねたら、「明日新宿に来て下さい」と言うので、もう頭の中が体毛のことでいっぱい、というか頭の中まで体毛が生えているのではないかという被害的な思考に陥っていた僕は、電話の主が言った通り翌日新宿に赴き、指定された場所である「アデランス」という会社に入って、いろいろ面倒くさい説明や、結構な金額を支払った結果、僕の頭はフサフサになった。意気揚揚と部屋に帰ったら、頭髪は抜けなかったが、ライターを拾った時にカツラが落ちた。
 
2004年11月21日(日)  drgtgyふじこ。
 
現在読んでいる本は、シェイクスピア『マクベス』、宮部みゆき『ICO』、そして中身独人『電車男』である。あと村上春樹の『アフターダーク』も読んでいたけど、途中で断念した。昔はあんなに好きだったのに。
 
さて『電車男』内容紹介の欄に「ネット上で話題騒然、各紙誌絶賛。百万人を感動させた今世紀最強のラブストーリー、遂に刊行!!」と書いてあり、こ、これは『恋愛歪言』のことか! なんて思ったけどそんなことはなく、話題はあったが騒然とせず、各紙誌の露出も極めて少なく、百万人どころか何人感動したかも定かではない僕的に今世紀最強のラブストーリーである『恋愛歪言』のことではなく、婦長さんが「ヨシミ君。あなた本出版してるんだってね。すごいじゃない。恋愛なんとか。あれ買ったわよ」と言ったとき、『世界の中心で愛を叫ぶ』ばりに「返して下さい!」と叫びたくなるほど僕を知っている人に買われると恥ずかしい内容なのだが、『電車男』は百万人が感動しているという。
 
これは買わなければいけない。しかし『世界の中心で~』も確か似たような触れ込みで発売されていたので、百万人の感動という言葉には十分注意しなければならない。十分注意しているので『いま、会いにいきます』も購入を見送っているというのに。
 
しかしこの『電車男』普通の小説ではなく、2ちゃんねるのスレッドをそのままコピペしたような内容で、潜在的2ちゃんねらーである僕には非常に好感が持てる作りになっており、2ちゃんねるを知らない人が読んだら何と思うだろうかというような言葉が満載されており、漏れのような毒男はマターリとビールを飲みながらエルメスさんに萌えることができるのだが、2ちゃんねるを知らない香具師はサパーリわからないのではないかと危惧することもなく、2ちゃんねるを知らなくても何とか読み進めていくことができる。
 
要するに本当に100万人が感動する内容なのかもしれないと思いながら、『世界の中心で~』や『いま、会いにいきま~』とは確実に一線を画しているリアルなラブストーリーが僕の胸にすんなりと入っていくのである。
 
2004年11月20日(土)  10千円。
 
手持ちにお金がなくて、例えばCDアルバムが欲しいのでATMでお金をおろすとする。3000円欲しい。それじゃあ手持ちもないので1万円おろそう。と、思うのだけど僕は俺は。1万円おろすと当然1万円札が出てくるので、CDショップでアルバムを購入した場合、7千円のお釣りをもらわないといけない煩わしさが出てくる。レジにて「お確かめ下さい。1千、2千、3千……」と、確かめたくもない。
 
だいたいあの「お確かめ下さい」というセリフは何なのだ。俺はバイトだけど自信を持って7千円のお釣りをお前に渡す。5千円札が切れてるから千円札7枚になるけれど俺はレジからちゃんと千円札7枚取った。バイト始めて半年経つし、時給にだってシフトにだって文句を言わない俺がお前にお釣りを渡す。んがしかし。だがしかし。弘法も川に流れるし、河童も木から落ちるときもある。猿だって時には筆を誤る。要するに俺だって失敗することがあるということだ。バイトだからではない。人間だからだ。だからお釣りの枚数をお前と共に数える。間違えていたら俺を思う存分けなせばいいし、あっていたら思いつく限りの賞賛の言葉を浴びせればよい。いくぞ。「お確かめ下さい。1千、2千、3千……」と、確かめたくもない。
 
以上のような煩わしさを彼女に相談したら、「簡単なことよ。10千円にしたらいいのよ」と、奇妙なことを言う。10千円とはなんぞと彼女に訊ねると、「知らないの? ATMでね1万円分千円が欲しいとき10千円って入力すればいいのよ」と尋常な口調で申したのだけど僕は信じない。何その裏技的発想。そんな馬鹿なことがあるわけないじゃないか。でも本当にそうだったら便利だよね。レジでお釣りもらう手間がはぶけるよね。早くそんな世の中になってほしいね。と、子供をなだめる口調で言ったら「ホントだってばよー! たまには私のこと信じてよー! ちょっと帰りが遅くなったら浮気してるとか思ったり、電話に出なかったら他の男といるんじゃないかと疑ったり、メールを」
 
というわけでいつの間にか問題が僕たちの恋愛のことにシフトしていたので静かに電話を切って10千円の真偽について考えてみた。ホントかもしれない。でも僕は試さない。ホントに10千円出てきたら僕の負けになるからー。
 
2004年11月19日(金)  携帯ショップで怒りうるトラブルについて。
 
彼女の携帯はかなり前から絶命寸前で、勝手に電源が切れたりメールの送受信が不可能になったり僕の知らない男から着信があったりしたのだが、この度ようやく新しい機種に変更するということで、それがあまりに嬉しい彼女はその旨を伝えるためにわざわざ僕に電話して、「新しい携帯でも一番最初に電話するからね!」と可愛いことを言う。そして30分後に「新しい機種がなかったのー!」と泣きべそをかきながら再び電話をしてくる。
 
そういう僕もそろそろ携帯を変えたいなぁと思っているのだが、今の携帯に変更して、多分まだ3ヶ月も経っていない。じゃあ何? 使い心地が悪いから? 新機種が魅力的だから? と問われても答えは全てノーであって、答えはただ何となく。スノボなんてやったことないし大した興味もないくせに、スノボ行きたいなぁなんて思うことと同じである。
 
その点、彼女は深刻である。何しろ携帯が絶命寸前なのだ。そんな度々電源が切れたりメールが閲覧できなかったりすれば、僕たちの恋も絶命する危険性すら秘めているのである。彼女も必死である。僕も必死で眺めているのである。それを散々今日新機種に変更するのと期待を持たせておいて、新しい機種がなかったのという何ともいえないオチに結びつかせるあたり、やはり悪いのは彼女ではなく携帯ショップであると僕は思うのである。
 
この携帯ショップ、僕は携帯ショップで円滑に処理が進んだことなどない。どこかで必ずトラブルが生じるのだ。何ヶ月か前の日記で書いたこともあったけど、日頃穏便な性格である僕が、阿呆の茶髪店員に喧嘩をふっかけたことすらある。喧嘩をふっかけた原因は接客の悪さであって融通の悪さであって、なんとなく茶髪の店員の顔が気に入らなかっただけである。
 
僕の彼女は、そんな全国共通してムカつくであろう携帯ショップの店員を責めることもなく、新機種がなかったのは朝ごはん食べてすぐお茶碗を洗わなかった私が悪いのだわと、全ての罪と怒りを内側に向けて、たまに外側に向かったと思ったらその矛先が僕だったりして度々理不尽な思いをするのだけど、来週水曜日には新機種が届くという。ということは来週水曜日から僕たちはようやく真っ当な恋愛ができるということになる。
 
2004年11月18日(木)  本を売るなりブックオフ。
 
我が家に1つしかない本棚からCDやらDVDやら小説やらゲームやらが溢れ出してきてもう入りきらん。どうにかせんければ。整理せんければ。と、本棚をぎゅうぎゅうに詰めて入りきらない小説を無理矢理挿入したりするのだけど無理が通れば道理が引っ込む。ばらばらばらと小説が落ちてきてキーッ! となってベッドに向かいそのまま不貞寝。しばらくして天井を見上げながらこれではいかん。何の解決にもなってない。それどころか部屋は殺伐を極める一方じゃないか。よし。売ろう。本を売ろう。しかしどこで本を売ればいいのだろう。本を売るならブックオフだろう。ということでヒゲも剃らず顔も洗わず、不要のCD、DVD、ゲーム、小説をバッグに詰め、駅前のブックオフへ赴いた。
 
「いらっしゃいませこんにちはー」「いらっしゃいませこんにちはー」
 
イントネーションが違う二つの「いらっしゃいませこんにちはー」を聞き、相変わらずムカつきながら店内に入った僕は買い取りコーナーへ行き、住所氏名年齢などの個人情報を記入し、「ただいま混み合っておりますので15分ほどお待ち下さい」と言われ、その通りにし、陳列棚に並んでいる「小倉優子17歳~終わらない夏~」2750円を購入するか否か迷い、既に夏が終わっていることに気付き、それならばと「小倉優子の片思いグラフティ」という訳のわからないタイトルのDVD2640円を購入しようと迷っているうちに「買い取りをお待ちのヨシミ様~」と呼ばれて、僕は実に15分間も小倉優子のDVDを買うべきか迷っていたということになる。
 
「全部で2400円になります」と、安いなぁ。あれだけ売ったのにこれだけかよー。しかしまぁ、しょうがないなぁ。中古ショップの類で「こんなに高く買い取ってくれるの!?」なんてCMに出てきそうな経験したことないもんなぁ。まぁいいや部屋がキレイになって2400円儲かったと思えば。
 
と、結局2400円では小倉優子のDVDが購入できなかった僕は、1500円で売っていたブルース・リーの「燃えよドラゴン特別編」を購入し、おつりでタバコと肉まんを購入してホクホクしながらうちに帰った。
 
2004年11月17日(水)  うどんクッキー。
 
何日振りかわからないけどとにかく久々の職場なのであーる。夜勤入りなので午後4時半に出勤したのであーる。
 
「あぁヨシミ君久し振り。1月振り? 1年振り?」
 
婦長さんも悪い冗談である。お前はこんな忙しい時期に有休駆使して連休取って高松なんぞ行きやがって私はお前が休んだ所為で大した休みも取れず毎日病棟で東奔西走していた。よって意地悪の一つでも言いたくなる。というような顔をして僕の肩を叩く。
 
「でもあんた。今から入院ありますから! 残念!」
 
なんて、最近覚えたばかりのギャグを言いながら、そのあとの「~斬りっ!」が思いつかなくて悶々としている。入院かぁ。イヤだなぁ。また僕がアナムネ(患者さんのプロフィール作成のようなもの)取らなきゃいけないのかなぁ。イヤだなぁ。久々に職場に来たらこれだもんなぁ。と僕も悶々とした表情を浮かべていると、「う、嘘斬りっ!」という何のひねりもない事を一生懸命の表情で言う婦長さんは、高校生の子供がいるというのに、少し可愛いと思った。
 
「ヨシミ君久し振りー。2ヶ月振り? 2年振り?」
 
今夜一緒に夜勤をする看護婦さんである。僕と婦長さんの会話をどこかで聞いていたのである。「いや、3年振りですよ」と僕が言うと、「5日振りでしょ」と尋常な口調で申すので少し絡みづらいところがある看護婦さんである。
 
「ねぇお土産は? 讃岐そば。讃岐そば」
 
こういうセリフもギャグと取っていいのかわからないのである。讃岐はうどんも美味しいが、そばも美味しいかもしれぬ。しかしこれをギャグとして言ったのであれば、うどんをそばに差し替えただけであって何も面白いところがない。しかも僕は帰りの飛行機の時間を間違えたせいもあって、お土産を買う暇などなかったのだ。買ったけど。名物か何なのかさえわからないちっこいクッキーの詰め合わせ買ったけど。
 
「はい、讃岐うどんクッキーです」
「わぁ! すごい! うどんがクッキーに! すごいねすごいねってこれ普通のクッキー!」
「そんなことないです。うどん並みに炭水化物が入ってます」
「共通点それしかないじゃない! こんなものいらない!」
 
と、残念なお土産を買ってしまったが、婦長さんが休憩室で隠れるようにクッキーをかじっていて少し可愛いと思った。
 
2004年11月16日(火)  大凶ホッチキス(後)

なんとか彼女の昼休みに間に合った僕は、学校のロビーで彼女と待ち合わせをして近くのうどん屋に昼食を摂りに行ったがまだ安心はできぬ。だって僕は大凶だから。ラッキーアイテムのホッチキスの芯を持っていないから。
 
彼女が案内してくれたうどん屋は、昼飯時とあって異常な混雑を見せている。例えば東京の人間は東京タワーになんて滅多に行かないように、香川の人間はうどんなんて滅多に食わないだろうなどと思っていたのだが、皆うどん大好きであり、ここはお前みたいな観光客が来るところじゃねぇ。オレらの日常の延長線上に存在するうどん屋なんだ。一見さんはすっこんでろ。とっとと食って席を開けろ。というようなオーラを皆全身から発しておりおっかないことこの上ない。
 
救いを求めるように横に座っている彼女を見ると、明らかに不自然な態度でうどんをすすっている。ちょっとまずい状況だ。一刻も早くここを出ようと思う。なんかチョー気まずい。とでも思っている風で、何が彼女にとってまずい状況なのか、まぁ、なんとなくわかったのだが、食事中僕に話し掛けてくるでもなく、まるで他人のような扱いを受けてしまい、やはり大凶。彼女の態度まで変わってしまった。はじき出されるように店を出ると彼女が「美味しかったでしょ」なんて悠長なことを言うので、「味なんてわかんないよ。食った気がしなかったよ」と正直な意見を述べると彼女はあからさまに不機嫌な顔になったけれども大凶だから仕方ない。おみくじの結果に免じて許しておくれよと心の中で彼女に謝罪し、別れようかなとか思ったりしたのも全て大凶の所為。
 
その後も大凶の被害を散々被ったのだが、あまりにも悲惨なことがありすぎて詳しく書くと莫大な文字数になってしまうし、莫大な文字数を使ってまで日記を書こうとは思わないので以下かいつまんで書くと、帰りの飛行機の時間を30分間違え、空港に30分前に到着した。ちょー余裕ある。時間を持て余してしまった。ちょーヒマ。なんて思ってたら既に出発時間で空港中に僕の名前がアナウンスされていたということと、羽田に到着して手荷物受け取り所で彼女にメールしようかと思ったら携帯がないことに気付き、機内に置き忘れてしまい発見されるまで1時間を要したこと。
 
実際は1時間以上待たされたのだが、自分で置き忘れた手前、早くせーよ! と、空港職員を急かすわけにもいかず、ヒマだなー。遅せーなー。そうだ。暇だから彼女にメールでもしよう。と、ポケットに手を入れてから携帯がないことに気付く呆れるような鈍感振りを発揮しているのは全て大凶の所為。帰り道、自宅マンション近くのコンビニでホッチキスの芯を購入した1時間後に、大凶の1日が終わった。
 
2004年11月15日(月)  大凶ホッチキス(前)
 
香川最後の朝はカプセルホテルで迎えた。カプセル内の小さなテレビから流れる今日の占い。獅子座は最下位。「何をやってもうまくいかない日。気分転換すらもうまくいきません」と、朝から何の慈悲も感じられない無情なことを言うアナウンサー。ばーか。占いなんて信じねーよ。いや、占いの結果が悪いから信じないのではなく、占いの結果が良くても信じないようにしてるんだから考え方がフェアでしょ。日頃から。だからいいの。最悪なんかじゃねーよ。「ラッキーアイテムはホッチキスの芯」て、ちっせーよ。意味わかんねーよ。
 
と、とりあえず香川最終日で彼女も学校に行ってしまったので特に予定のない僕はホッチキスの芯でも買いに行こうとカプセルホテルをチェックアウトし、高松の商店街をウロウロしていたが、やがてキャリーバッグが鬱陶しくなってコインロッカーに預けようと、高松駅のコインロッカーにキャリーバッグを入れ、600円投入し、よしこれで身が軽くなった。大凶から凶になった気分です。と、100円ショップにホッチキスの芯を買いに行こうとした矢先、彼女から昼休みに昼ご飯食べに行きましょうとメールが届く。高松駅から電車に乗り、彼女が通う学校の最寄駅に到着した瞬間に僕は気付く。ロッカーの鍵がないことに。
 
たしかにコインロッカーには600円投入した。そして重くて邪魔になるキャリーバッグをロッカーに入れた。そして僕は満足した。身が軽くなった僕はそのまま鍵を締めずにその場を去ってしまったのだ。なんたる愚行。なんたる失態。また駅に戻らねばならぬ。しかしここは高松。東京のように電車がひっきりなしに走っているわけではない。どうしようタクシー使おう。というわけで、タクシーを捕まえ、駅まで逆走する非生産的なこの行為。早くホッチキスの芯を手に入れなければ。
 
タクシーに乗っている間、高松駅に電話して、ロッカーの鍵を締め忘れてその鍵を預かっていてほしいということを告げると、「コインロッカーは駅の管理ではなく、管理会社が管理してるので管理会社に連絡して確認取ってから管理会社の者が鍵を預けるという形になると思うので、まず管理会社に連絡」融通の利かなそうな駅員に立腹して電話を切る僕は本日大凶。誰も味方してはくれない。彼女からメール。「今どこにいるの? もうすぐ昼休みだよ」そんなことわかってるし、現に僕は彼女の学校の最寄駅に向かっていたのだ。大凶だったからこうやって引き返してるけど、大吉だったら今頃抱きしめてるよ。と、一人悶々としながら駅に到着した瞬間にコインロッカーに走り、ロッカーの中の安全を確かめ鍵をかけ、待たせていたタクシーに乗りこんだ僕は本日大凶。
 
2004年11月14日(日)  二十四の焼き栗。
 
高松からフェリーに乗り、瀬戸内海で淡路島の次に大きな島である小豆島に行った。彼女が「二十四の瞳映画村」を案内してくれるという。案内してくれるのはいいのだが僕は「二十四の瞳」を読んだことがなくて、いつか読もういつか読もうとは思っていた作品なのだが、今更二十四の瞳なんてという思いもあり、とうとう読まないまま小豆島に来てしまい、僕は何しに来たのだろう。きっとオリーブ園に来たのだろう。香川県の県花みたいだし。
 
ということで「小豆島オリーブ園」にも行ったのだが、園内に栽培されている約2000本のオリーブ全てオリーブ臭く、お世辞にも良い匂いとはいえない。よってその旨を彼女に伝えたら「連れて来るんじゃなかった」と残念な顔をして残念なことを言い出すのでここじゃなかった。僕はここに来たいのではなかった。瀬戸内海国立公園である「寒霞渓」に行ってロープウェイに乗りたかったのだ。ロープウェイに乗って山頂より谷あいを望みながら紅葉を眺めたかったのだ。
 
と、「寒霞渓」に行ったのだが、ロープウェイはたいした絶叫マシーンでもないのにディズニーランドのスペースマウンテン以上に行列ができている。ロープウェイよりも行列に絶叫した僕は、ロープウェイなんていいや。往復1250円もかかるし。山頂まで車で行けるんだから車で行こうぜ。ロープウェイなんて綱一本でトロトロ走る乗り物よりタイヤが四つもついてる青い日産マーチで山頂に行こうぜ。と、山頂まで車で走り、観光客に声を掛け、二人の写真を撮ってもらった。彼女は山頂で買った焼き栗の袋をずっと握り締めていて子供みたいだった。
 
その後、「小豆島ふるさと村」という場所で、肌寒い季節なのに小豆島の名物らしい手延べそうめんを食べて海辺を歩いて、愛を語って、愛を語っているのは僕ばかりで、彼女は僕を離したくないと思っているのではなく、焼き栗を離したくないと思っているらしく、ずっと握り締めていて子供みたいだった。
 
せっかくだから「二十四の瞳映画村」で文庫本を購入して、その日の宿であるカプセルホテルで読み始めたのだけど、これがまた面白く、どうして僕はこんなに素晴らしい文学作品を今まで読んでなかったんだと後悔しながら、作家の壺井栄独特であろう人間味豊かな表現に終始笑顔が絶えず、文字を追うたびに今日行った小豆島の風景が目に浮かび、もう一度行ってみたいなぁ。今度香川来たとき彼女をもう一度誘ってみようかなぁ。優しい彼女はきっと了承してくれるに違いない。焼き栗買ってあげるからと言ってみれば。
 
2004年11月13日(土)  ある温泉宿の風景。
 
「大丈夫。明日8時に起きるから。ちゃんと起こしてあげる。オヤスミ。ちょっと腕枕痛いからヤメテ」
 
プルルルル……。プルルルル……。
 
「おはようございます。お客様、朝食の準備ができております」
 
ガチャ。……。……。
 
「おいっ! おいこらオンナ! 起きろ! そして時計を見ろ! んぁぁぁ! コンタクトなんてどうでもいいよ! 今すぐ見ろ今すぐ!」
「おはよう。……。あら、もう9時」
「8時に起こすって言っただろ! 8時半に朝食でチェックアウトの前にもう1回温泉入ろうって!」
「あなたね、そうやっていつも他人のせいにして怒っているけど、たまには自分の力でなんとかしようと思わないの?」
「何寝呆けた頭で的確な苦言を呈しているんだよ! ほら、行くよ! んぁぁぁ! 浴衣がはだけてちょっと色っぽい!」
 
昨夜は香川琴平の温泉宿に宿泊して、酒を飲んで露天風呂に入って豪華な食事をたらふく食って、ガイドブックを開きながら一人でスルメをしゃぶりながらビールを飲んでいたのは、せっかく東京から四国までやってきて彼女とアバンチュールな夜を送ろうと温泉宿まで手配したというのに、彼女は彼氏よりもブラウン管に映るDr.コトーに夢中であって、2夜連続の2時間スペシャルなの。と、ビデオの予約くらいしてくればよかったのに、面倒臭いからと、僕が言うようなことを言ってテレビに夢中。退屈なので彼女の布団に潜りこむも、すぐさまはじき返される始末。CMの間だけ、ねぇー遊ぼうよぉーと甘えてくる。やってられない。眠くなってきたので明日早い時間に起こしてくれよ。露天風呂に入りたいからさ。ねぇ。ねぇって。おい。聞いてんの?
 
「大丈夫。明日8時に起きるから。ちゃんと起こしてあげる。オヤスミ。ちょっと腕枕痛いからヤメテ」
 
そして修羅場と化す朝を迎えることになる。
 
「は、は、鼻血出てきた! ね、ね、ねぇ、鼻血出てきたって!」
「わ、わ、ホントだ。わ、すげぇ出てる。た、助けて下さい!」
 
化粧の最中になぜか鼻血を出す彼女。ここぞとばかりに「世界の中心で愛を叫ぶ」の名セリフを引用する僕。今日はフェリーで小豆島に渡る。小さなレンタカーに乗って、彼女が準備した音楽をかけて、僕は二日酔いの頭痛に悩まされながら、彼女は左の鼻の穴にティッシュを詰めながら。
 
2004年11月12日(金)  Destination-TAKAMATSU.
 
昨夜未明から降り始めた大雨で気分が屈託、鬱屈。ナースステーションの窓を開け、まだ夜が明けぬ東京の空を見上げながら深い溜息、マイルドセブンの煙。午前4時。大きく背伸びをして、頭をクシャクシャと掻いて看護記録を記入する。患者が目覚めるまでまだ時間がある。患者の看護記録1枚1枚に「入眠中」「入眠中」「入眠中」と書いているうちに、それが自らの暗示となり、徐々に襲ってくる睡魔。僕はナースステーションの机に突っ伏し、午前4時の心地よい眠りの誘いに身を委ねた。
 
「お客様……お客様、到着致しました」
 
優しい声と優しい仕草で肩を叩かれ僕は目覚める。目をこすりながら窓の外を見るといつの間にか雨は止んでいる。Destination-TAKAMATSU.Flight-JAL1405.Gate-87.スチュワーデスの笑顔、僕の狼狽。いつの間にか雨は止み、東京の重くて暗い空は消え失せ、そこには高松の抜けるような青空が広がっていた。
 
夜勤明け、山手線、モノレール。朦朧としたまま搭乗手続きを終え、僕は5ヶ月振りの高松に来ていた。朝から何も食べていない。昨夜11時頃に看護婦さん達とインスタントラーメンを食べた。明日は本場の讃岐うどんを食べに行くんだと笑いながら。5ヶ月振りの高松、1ヶ月振りの彼女。彼女の肌は讃岐うどんのように白い。讃岐うどんのように白い腕は僕の腕に捲き付いている。
 
「久し振り」
「そうでもないわよ」
 
彼女はまるで昨日も僕と会っていたかのような素振りを見せるけれど、口元には1ヶ月振りの笑みが浮かんでいる。かけうどん140円。二人で280円。周囲は聞きなれない讃岐弁と、「あなたに貰ったネックレス、ちぎれちゃったの」という彼女の悲しい言葉。「あぁ……、あのピアス……明日つけるわ」妙によそよそしい彼女の素振り。僕達は遠距離恋愛なんだから、このようにネガティブに考えようと思えばいくらでも考えることができるし、幸福に浸ろうと思えば思う存分浸れることもできる。全て僕の匙加減。そして彼女のホルモンバランス。
 
「さて、そろそろキミのお母さんに挨拶に行かなくちゃ」
「じょ、じょ、じょ、冗談でしょ」
 
悪い冗談に素直に狼狽するキミの右手は讃岐うどん。
 
2004年11月11日(木)  ウンコにダイヤ。
 
今夜は夜勤。明日の9時半まで一晩中眠らずに働いて、急いで部屋に戻り洗濯物を取り入れてシャワーを浴びておめかししてお出掛けするのです羽田空港に。んで、飛行機乗って、何処へ行くかは明日の日記で書くけれど、問題は羽田空港である。
 
何が問題かというと、現在3回連続で空港の金属探知機にひっかかっているのだ。今回は万全だ。もう僕の身体には金属は残っていないと、堂々と金属探知機をくぐってもピーピーピー。なんでだよ。おかしいよ。ポケットの中身全部出したよ。ホントだよ。そんな疑わしい目で見るなよ。と、空港職員を睨むと、空港職員は冷静な口調で、「それでは鼻くそを採取して下さい」と、なんだこいつ。おかしいんじゃないか。なぜこんな公衆の面前で鼻をほじらなければいけないんだ。と、空港職員の話を無視していると、空港職員が腰にぶら下がっている警棒に手を当てたので、ヤバイ。殴られる。痛いのはイヤだ。オヤジにだってぶたれたことないのに! と、屈辱の中、公衆の面前で鼻をほじり空港職員に差し出すと、ピンセットで僕の鼻くそを金属探知機に入れて、なぜかしら。ピーピーピーと鳴っている。
 
「鼻くそから鉛が検出されました」
 
と、尋常な口調で空港職員が申すので、そんな馬鹿な。鼻くその中に鉛なんて入ってるはずないじゃないか。でも東京は空気が汚いので鼻くそに鉛が混入してもおかしくないかもしれない。っていうか絶対おかしいけどと、半信半疑で再度金属探知機をくぐったらピーピーピーと鳴らない。ということは本当に鼻くそに鉛が混入してたことになる。
 
という過去があったので、前回はキレイに鼻くそを処理し、万全の体勢で金属探知機をくぐったのだがピーピーピー。なんでだよ。おかしいよ。ポケットの中身全部出したよ。ホントだよ。そんな疑わしい目で見るなよ。鼻もほじったし。と、空港職員を睨むと、空港職員は冷静な口調で、「それでは耳くそを採取して下さい」と、なんだこいつ。おかしいんじゃないか。なぜこんな公衆の面前で耳くそ取らなきゃいけないんだ。と、空港職員の話を無視していると、空港職員が腰にぶら下がっている警棒に手を当てたので、ヤバイ。殴られる。痛いのはイヤだ。オヤジにだってぶたれたことないのに! と、屈辱の中、公衆の面前で耳くそを取り、空港職員に差し出すと、ピンセットで僕の耳くそを金属探知機に入れて、なぜかしら。ピーピーピーと鳴っている。
 
「耳くそから砂金が検出されました」
 
と、尋常な口調で空港職員が申すので、そんな馬鹿な。耳くその中に砂金なんて入ってるはずないじゃないか。でも東京はブルジョアとかセレブが多いので耳に砂金が混入してもおかしくないかもしれない。っていうか絶対おかしいけどと、半信半疑で再度金属探知機をくぐったらピーピーピーと鳴らない。ということは本当に耳くそに砂金が混入してたことになる。次はウンコにダイヤが混入してたらいいなと思った。
 
2004年11月10日(水)  精一杯の笑顔。
 
病院のナースステーションや休憩室にはたいていナース服のカタログが置いてあり、昼休みなどにこれいいね、これ可愛いねなどと看護婦さんたちが談笑しているのだが、この種のカタログは数百ページのページ数から成り立っているというのに、看護士用の白衣はたった2・3ページ程しかなく、しかもどれもデザインが似たり寄ったりで全然面白くない。よって、つまんねーのとか思いながら立て肘ついて面白くない顔で夜勤の最中にペラペラとページをめくっている面白くない僕。
 
しかしモデルの看護婦さん達は皆キレイである。キレイに白衣を着こなしている。まばゆい笑顔で可愛いポーズをとってスカート丈の短いピンクの白衣を着たりしている。しかもページをめくると、その看護婦がスリットやキャミソールをまとった、あられもない姿で載っており、さすがカタログ。白衣と同じモデルを使って下着の紹介までさせるとはグッジョブである。
 
と、えくぼが可愛い一人のモデルに注目し、白衣のページを見ながら、この女の子がー、この白衣着てー、こんな姿になる! この白衣の下にはー、こんな下着をつけている! と、一気に下着のページに移動して一人興奮しているところを看護婦さんに見られ、自分の人生という観点で見ると、減点10くらい。
 
しかし、この可愛い白衣を着たモデルは当然のことだけど看護婦ではなくモデルであって、看護婦はこんな気の抜けたような笑顔など浮かべていない。看護婦とは、なんかこう、笑顔の中にも殺伐としたものが潜んでいるのだ。スリットとかキャミソール1枚になってもちっとも色っぽくないのだ。と、僕は思っているということを、カタログ見ながらヘラヘラしてるところを発見した看護婦さんに告げると、
 
そんなことない。私を見なさい。この白衣。ちょーかわいいでしょ。似合ってるでしょ。あなたには見せられないけど、下着だってすごい気合入ってるんだから。ウフフ。ウベベ。グワバババ。と、最初はなんだか可愛かったけれど、後半から妙な笑い声を発し始めたので、ほらやっぱりね。素直に笑えない。殺伐としてる。つうか何かに獲り憑かれてると、早々にその場を離れ、病室に行き、精一杯の笑顔を浮かべてみた。
 
2004年11月09日(火)  魚肉ウィンナー。
 
来シーズンよりプロ野球パシフィックリーグへの参加が決まった楽天ゴールデンイーグルス。チーム名の由来はなんなのか知らんがイーグルである。鳥類である。と、考えてみたところ、パシフィックリーグには既に福岡ダイエーホークスという球団があることに気付いた。
 
あれれ、かぶってんじゃん。どっちも鳥類じゃん。ホークスって鷹でしょ。んでイーグルも鷹。タカ。あれ? どっちも鷹じゃん。うっそー。かぶってるっていうかまんまじゃーん。鷹と鷹はまずいだろう。二匹目のドジョウというか二番煎じというかそういう問題じゃないだろう。同じタカではいかんだろう。
 
ということを彼女に話したら、「バッカじゃないの。私野球のことはサッパリわからないけどホークスとイーグルの区別ぐらいわかるわよ。ちなみにヤモリとイモリの区別もわかるし。ホークスはアナタの言う通り鷹よ。タカ。でもイーグルは鷹じゃないわよ。鷹なわけないじゃん。このアル中浪費家。そんな当たり前のこと他の人には絶対質問しちゃダメよ。私が恥ずかしいわ。えとね、イーグルはね、コンドルのことよ」
 
さすが彼女。伊達に20年も生きちゃいない。ホークスとイーグルの区別ぐらい知ってて当然なのだ。イーグルはコンドル。そっか。そりゃそうだ。イーグルが鷹のわけないか。しかしここで新たな疑問が再燃。じゃあホークスの和訳は鷹。イーグルの和訳はコンドル。あれれ。ちょっとおかしい。なんで和訳がカタカナなんだ。実は彼女、間違ってるのではないかしら。まだ20年しか生きてないし。成功より失敗が多くて当然の年代なのだ。人間とはいくつもの挫折を経験して大人になっていくのだから。イーグルをコンドルと和訳しても、それは恥ずかしいことではない。
 
というわけでそれってちょっとおかしくないか。と彼女に訊ねると、「馬鹿ね。コンドルの和訳はイーグルよ。ちなみに魚肉を用いたウィンナーは、ウィンナーとは呼ばず、ソーセージと呼ぶのです」と、訳のわからない注釈を添えて、思い知ったかというような顔をして僕を諭すような口調で言ったのでそれでよしとした。
 
2004年11月08日(月)  思考の袋小路。
 
今月は新しいベッドを購入して新しいソファーを購入して週末に旅行に行く予定なので、もう自由に使える金がなくなった。潜在的な無一文である。やばい。やばいぞと、楽天市場を検索していたらオッシャレーなフロアスタンドが目に止まり、ややや、これ欲しい! でももうお金が無い。潜在的にない。でも欲しい。でも貯金おろしてまでは欲しくない。と、この貯金を「おろす」これはどういう漢字を使えばいいのだろう。
 
貯金を下ろす。貯金を降ろす。貯金を卸す。どれも不適切な気がする。よって楽天市場のショッピングを中断し、グーグルで「貯金を下ろす」で検索。1,310件検索できた。続いて「貯金を降ろす」で検索。1,030件該当。むむむ。なんだか拮抗している。しかし「貯金を降ろす」で検索したところ、下の段に「もしかして: 貯金を下ろす 」と注釈。お前は馬鹿だから「貯金を降ろす」と検索したらしいが本当は「貯金を下ろす」なんだよ。丁寧に教えてやったオレの名はグーグル。検索王グーグル。来年西武ライオンズを買収してグーグルライオンズと名乗り楽天イーグルスとIT企業対決してこます。と、楽天で思い出した。フロアスタンド探してるんだった。
 
と、再び楽天市場でフロアスタンドを検索。オッシャレーなフロアスタンドほど、値段も高い。ということはなんだ? 高尚な美的センスほど価値があるということなのか? ん? えっと、高いやつはオシャレで安いやつはヘタレというわけか? ヘタレということはないだろう。じゃあ何だ? ん? ほら始まった。僕は時々このような意味のない自問自答を始めてしまい、思考の袋小路に追い詰められ、後先考えずオッシャレーなフロアスタンドをカートに入れて着払いでご注文ありがとうございました。
 
2004年11月07日(日)  僕がファブリーズを使う訳。
 
昨日、文末にファブリーズのことについて少し触れたが、今日は文頭からファブリーズ。僕は昔P&Gで働いていたので、ファブリーズには深い思い入れがあるのですというどうでもいい嘘を吐きつつ。
 
さて、ファブリーズ。僕はファブリーズのどこが好きかというと、自己満足で終わってしまうというところが好きなのである。
 
例えばカーテン。CMでもカーテンにファブリーズしてるので、とりあえずカーテンに噴霧。ふむ。なんだかよくわからんがとにかくこれでキレイになったでござる。ついでにベッドにもシュッシュ。ふむ。これもなんだかキレイになったでごわす。と、「なんだかよくわからないがキレイになった」がポイントであり、このことをもう少し掘り下げると、「なんだかよくわからないがキレイになった気がする」という自己満足的な思考に辿りつく。
 
アタックのようにYシャツの襟の黄ばみが落ちるわけでもなく、ジョイのように油汚れが落ちるわけでもなく、カビキラーのようにカビが落ちるわけでもない。ファブリーズを噴霧することによって何が落ちるかというと、臭いが落ちるのである。
 
ニオイは布製品に吸収されやすく、しばらくすると再び空気中へとはき出されるそうだが、そもそも僕の部屋は際立って臭いわけでもなく、日常生活を営むには何の不自由もない臭いの中で生活しているのであり、ファブリーズなんて使う必要などないのだが、CMに出演している主婦女優達が、
 
お宅の部屋は臭いけど、よく考えてみたら私の部屋も臭いと思われているかもしらん。お宅の部屋はお宅が馬鹿にされるだけだからいいが、私の部屋は私が馬鹿にされるのでそれは我慢ならない。よって今すぐファブリーズを購入し、無臭の部屋で生活をしているという事実を知り合いの主婦連中に知らしめてやり、1人優越感に浸ろうと思うという、被害妄想を煽るような演技をするので、
 
あわわ。僕の部屋も臭いかもしらん。僕の知り合いには主婦連中など存在せず、部屋に訪れるのも彼女しかいない。しかし彼女は一度たりとも僕の部屋が臭いと言ったことはない。しかし彼女はキレイな顔して心もキレイだから僕が傷付くと思って僕の部屋が臭いということを隠しているかもしらん。そうやって隠すことが更に人を傷付けるということも知らずに。その点がまだ子供たる所以であると思う。まだハタチだし。よし、僕は僕のプライド、そして彼女の尊厳を遵守するために今すぐにマツキヨに赴きファブリーズを購入せしめん。と勇ましくマツキヨに赴いたがポイントカードを忘れ、ポイントが貯まらなければマツキヨで購入する意味がない。全くない。別にマツキヨが際立って安いわけじゃないし。他の店で買おう。と、何も購入せずに仏頂面でマツキヨを出た性格の悪い僕は部屋に戻り、自分のココロにシュシュシュとファブリーズ。
 
2004年11月06日(土)  横着なりのキレイ好き。
 
僕は牛丼よりもカレーライスよりもカビキラーが大好きで、浴室などは故意にカビを繁殖させ、馬鹿やのう。我が物顔で浴室を支配していると思っているだろうが、せいぜいそうやってシャンプーラックや風呂のフタ、ゴムパッキンやコーキングに張り付いておるがよい。盛者必衰の理をあらわすよ僕は。猛き者もついには滅びぬ。ひとえに風の前の塵に同じ、風呂の中のカビに同じでございますわよ!
 
と、CMに出てくるような主婦口調になってカビキラーを取り出し、すかさず噴霧。そのままカビを一網打尽にする過程を見ていたいけど、臭いがたまらんので換気扇のスイッチを入れてテレビのスイッチも入れてソファーに横臥する。
 
5分後、鼻歌交じりに浴室へ行き、カビキラーしたとこをシャワーで洗い流し、最近のカビキラーはすげぇよな。だってたった5分でカビを取っちゃうんだもんな。ミクロな泡の働きでカビの根の奥まで早く浸透するので、数分で効果が表れますわ。感動ですわ。
 
と、CMに出てくるような主婦口調でご機嫌になった僕は、再び部屋に戻り、少し黄ばんできたカーテンを一瞥したあと、布にシュシュッとファブリーズ。
 
2004年11月05日(金)  ゲームなんだもの!
 
昨日は鼻くそのことなんて書くつもりはなく、ゲームのことについて書こうとしたのだけど、鼻くそのことだけでかなりの行数を消費してしまったので、もう鼻くそホンリーで、って、今キーボードで「オンリー」を「ホンリー」って打ち間違えてしまったけど、鼻くそホンリー。なんか間抜けでいい感じだなぁ。鼻くそホンリー。つけたいなぁ。つけてみたいなぁ。いや、鼻くそじゃなくて、誰かにあだ名をつけたい。今日からお前は「鼻くそホンリーだ」って。切り裂きジャックみたいで格好いいじゃないか。と、また鼻くそのことを語り始めようとしている自分を制裁。経済的制裁。今日は財布に670円しか入っていない。
 
ゲームについて書く! 僕はゲームゲーム言ってるけれど、最近は大人になったのか、昔ほどゲームに熱中することもなくなった。先日購入した「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」これは原作が大好きで10回以上は鑑賞してるので、ゲームも買わないわけにはいかない。自分に課した義務である。ファンとしての義務である。で、もうクリアしちゃったんだけど、クリアを急いだのは訳があって、今月末、新作の「ドラクエ」が発売されるのである。
 
ドラクエ世代の僕は、いくらゲーム離れしているという現状があれど、買わない訳にはいかない。僕はドラクエで勇気と希望と魔法を学んだ。今では指先から炎が出せるのでライターなんていらない。でも新作ドラクエも早くクリアしなければいけない。だって12月には「メタルギア・ソリッド3」が発売されるんだもの! だもの! って興奮しちゃって変な言葉を使ってしまったが、興奮するに値するゲームなのである。やったことのない人にはわからないけれど、やった人はこの気持ち、察してくれると思う。
 
彼女は僕の部屋に来るたびに「もじぴったん」しようよー。なんて百年以上前のゲームを一緒に遊戯するよう強いるのだが、もし僕が小学生だったら、クラスで今ゲームなにしてんの? って訊ねられて「もじぴったんしてます」と言った日には確実にいじめに遭う。そのくらい昔のゲーム。というのは嘘で、僕の部屋の壁に掛けてあるコルクボードには彼女との「もじぴったん対戦表」が貼ってあって、現在15勝7敗。ボキャブラリーは僕が勝ってるはずなのに、ボキャブラリーが、っていうかボキャブラリーだけが求められるこのゲームに惨敗を喫している。だから僕はもじぴったんが嫌いである。もじぴったんで勝利したときの彼女の笑顔も嫌いである。
 
2004年11月04日(木)  休日と鼻くそ。
 
さて、久々の2連休、何をして過ごそうかしらー。と、そんなのもう決まってる。ゲームするに決まってんじゃーん。部屋から1歩も出ずに、先日チャリンコで池袋まで行って購入したプレステ2の「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」するんだい。だから誰も邪魔しないでー。と、早起きをして洗濯機を回しつつ、プレステの電源を入れて「ナイトメアー」を楽しみつつ鼻をほじりつつ、手元にティッシュがないときにでかい鼻くそが取れたりするものだから困ったなぁ。ティッシュなんてテーブルの下だよ。遠いなァ。
 
って、テーブルの下なんて手を伸ばせば届く距離なのに休日の僕は、そこに手を伸ばすことすら億劫で、そのくせ鼻くそをまるめてその辺りに放り投げるなんて真似はせずに、人差し指の先に鼻くそをつけたままコントローラーを握ってゲームを楽しみながら、くっそー、やりずれー、この鼻くそのお陰で左手の人差し指が使えねー。ちょー不便だ。あ、洗濯終わった。と、人差し指に鼻くそをつけたまま洗濯機まで行って、洗濯カゴに洗濯物を入れて、次の面クリアしたら干すもんねー。と、誰に対して善い訳してるのかわからないが、その間も人差し指に鼻くそはついたまま。再びベッドの上に戻ってゲームを始める。
 
畜生。さっき洗濯物取りに行ったときティッシュも取っとけばよかった。定位置に戻った僕は、再びテーブルの下に置いてあるティッシュを眺めながら途方に暮れる。駄目だ。もう乾燥してきてる。このままだとちょっとした動作で、人差し指から落っこちちゃう。汚ねーなー。早く、早くこの鼻くそを処分しなければ。でもこの面クリアするまで我慢しよう。と、傍から人が眺めていたら確実に殴られるであろう休日を僕は送っているのです。
 
2004年11月03日(水)  NYダウ終値101ドル高。
3日のニューヨーク株式市場では、所得減税や配当減税の継続を掲げているブッシュ大統領の再選が、板橋区の八百屋にプラスに働くとの見方から買い注文が、いっぱい酒を飲んだ翌日の職場の後輩の顔のように膨らんだ。
 
終値は、八百屋ならびに肉屋魚屋、カーッパカッパカッパのマークの河童寿司、焼肉牛角、あと本を売るならブックオフで構成するダウ工業株平均が前日比25円高いレタス275円と、10月6日以来の高値。レタス275円では、ワシントンでは支持されても板橋区の主婦層の支持は得られず、ブッシュ大統領は再選直後に窮地に立たされることになった。
 
ハイテク株の多い茄子ダック市場の総合指数も19円高い132円と、7月2日以来の水準になった。しかも茄子3本で132円ではなく1本で132円という高値に、板橋区のみならず近隣の豊島区、練馬区の主婦層からも批判の声が挙がっている。
 
一方、ブッシュ大統領の再選の一報を聞いた町村外相は、4日午前の参院外交防衛委員会で、「小泉・ブッシュ関係は思っていることを言いあえる仲で、緊密な信頼関係で結ばれている」と述べ、恋人同士でもそんな理想的な関係は難しいのに、おそらく町村外相は恋愛なんてしたことないだろうからそんな阿呆みたいなことを言えるのだろうと朝日新聞記者は語った。
 
ニューヨーク債権市場では、株高に加え、ブッシュ氏の政策が継続されれば財政赤字が長期化するとの懸念から、神奈川県相模原市のグリーンホール相模大野で、来年十八代目勘三郎を襲名する勘九郎が、名跡最後の錦秋特別公演を行う。ゲストはボストンで「敗北宣言」を行ったばかりのケリー上院議員。十七代勘三郎と親しいパレスチナ自治政府のアラファト議長はパリ郊外の病院に入院中であるため欠席。
 
2004年11月02日(火)  新札チャップリン。
 
銀行で金をおろしたら、千円札のデザインが変わっていて驚いた。世の中の流れに疎い僕は、お札が変更になったという、結構でかいニュースすら知らなかったことを恥じると同時に、千円札のデザインが夏目漱石からチャップリンに変更になったことに納得がいかなかった。
 
しかしなぜチャップリンなんだろう。なぜこんなテンテコなヘアスタイルを日本銀行は許したのだろう。おかしいよ絶対。外人だし。それじゃあ5千円札も外人かしら。ボブ・サップだったりして。デーブ・スペクターだったらいいな。1万円札はあれだね、ジョージ・ブッシュだよ。もう駄目だよ日本は。アメリカ国日本州だよ。何が駄目だって言われても具体的にはいえないけど、なんとなく駄目なんだ。僕くらいの年代の人は自分では何もしないくせに、なんとなく日本は駄目だとか言ってたらいいんだから。
 
まぁ千円札をチャップリンにした時点で確実に駄目なんだと思うけどな。絶対おかしいよ。と、首を捻りながらATMから新札を受け取り、チャップリンの新札を持ち歩くなんて日本男児の恥だと思い、コンビニでとろけるプリンを購入し、店員にチャップリンを渡すと、店員も今初めてチャップリンを見たらしく、しかもそれを新札だとは思わず、ニセ札と勘違いし、更にニセ札を使っている僕を犯罪者と勘違いし、しかもポケットから携帯を取り出そうとしただけなのに、拳銃かナイフを取り出そうとしたと勘違いし、もう勘違いオンパレード。奥の事務所みたいな所へ連行。
 
ばっかじゃねーの。これ新札だよ。まぁチャップリンはおたくも納得してないみたいだけど日本銀行が発行したんだからしょうがない。あと2・3ヶ月もしたらみんな使ってるよ。それなのに何だよ。僕を犯罪者みたく事務所へ連行して事情聴取まがいのことをされて。お前バイトのくせに。こいつはレシートいらないなって勝手に判断してレシート渡さないくせに。いや、いらないけどね。阿呆。早く縄をほどけ。冤罪だ。訴えてやる。
 
と、セブンイレブンの事務所で喚き散らしたところ、店長らしき人物が現れ、チャップリン札をしばらく眺めたあと、「確かにこれは新札だが、これはチャップリンではないよ。チャップリン外人だし。しかも蝶ネクタイをつけていない。これは宮沢賢治だよ」と、静かに諭す口調で言った。勘違いしてて正直スマンカッタ。
 
2004年11月01日(月)  そんな馬鹿な。
 
僕の彼女は付き合い始めの頃、私ウンコなんてしたことないわ。ウンコする人なんて信じられない。仮に私のお尻からウンコ出たとしても、きっと臭くない。きっとサナギのような形をしててアゲハ蝶とか孵化するような勢いで。なんて飄々とした表情で嘯いていたけど、彼女とはお付き合いを始めてもう1年近くになるが、未だにワタシウンコシナイと言い張っているので、そろそろホンキで彼女はウンコなんてしないのではないだろうかと思うようになっているはずがない。
 
僕の部屋にはテレビ、コンポ、エアコン、ハロゲンヒーターの合計4つのリモコンがあって、これら4つが仲良く肩を並べて鎮座しているという図を見たことがない僕は、テレビをつけて寒くなったからエアコンつけようと思ったらエアコンのリモコンが見当たらない。コンポの電源入れて同時にハロゲンヒーターの傍で暖を取ろうと思ったらハロゲンのリモコンがどこにあるかわからないという事態に、ほぼ毎日遭遇しているのであってこれはどうにかしなければいけない。抜本的に改革しなければならない。と、池袋のビックカメラに行って、大抵ビックカメラには何でも置いてあるので、きっとテレビ、コンポ、エアコン、ハロゲンヒーターの操作が1つのリモコンで操作できるリモコンがあるはずだと思い、書を捨てて町へ出てビックカメラに行って、その万能リモコンを購入しに行くわけがない。
 
そもそも僕の彼女がウンコする姿なんて、想像しようと思ってもちっとも想像できないあたりが、彼女ウンコしない論を立証する原因になっているわけであって、彼女も人の子、きっとウンコするはずだと強い意思を持って彼女が様式便所で踏ん張っている姿を想像するのだけど、そもそも彼女に関わらず、女性がウンコを踏ん張っている姿が想像できず断念。よって僕の中では彼女は勿論、アイドルならびに世の中の女性は全てウンコを排泄しないことになってしまったわけがない。
 

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