オミズの花道
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『私の飲んだマズイ酒』
2002年12月01日(日)
土曜日の晩に、地元ぱぱ(もと有名人)から電話。
何だか荒れている。
『なんでお前は俺の傍におらへんのや!
こんな所で飲んでてもおもろないんじゃ!』
・・・・べりーべりーに酔っている。
繋がらない話をなんとか繋ぎ合わせて聞いていくと、私がかつて地元で勤めていた店がまた、ぱぱを怒らせたらしい。
もう、しょうがないなあ・・・・どうやったら怒らせることが出来るんだ。
あんな面白いオヤジ、そうそう居ないのに。
『お前が「私が辞めても顔を出してね」って言うから今まで我慢もしたけど、
もうええやろ!!あんな店二度といかんぞ!解ったか!』
私が一番胸の痛くなる言葉だ。
華やかな世界・・・・それこそ彼は最近まで、ススキノ、銀座、北新地、中州の一流クラブで飲んでいた人だ。
祇園の有名な芸者を囲って通いつめていた時期もある。
私が地元の店に勤めていた時に嗅覚でそれは掴めた。
彼は所謂『本当の飲み方』を知っている人だった。
(厳密に言うとどの飲み方も正しいのだが)
言葉が上手く見つからないが・・・時代を超えたお客様、とでも言おうか。
バブル期に『上客』なんて沢山居た。探すまでも無く向こうからやって来た。
毎晩何十万何百万ものゼニを落としながら飲む人なんて沢山居た。
だけど私はそれを見ながら感じていた。『これは酒を飲んでいるのではない。』と。
圧倒的な財力の前には常識なんて存在しない。
そんな事は無い!・・・そう言える人間が居たとしたなら、その人は本当の財力を目にはしていないからだ。
金を握った者が勝つ。
酒の上の席ではその構図が昼間よりも顕著に浮かび上がる。
現物を実際に目の前に積まれれば、人生観は変わるものだ。
私もその部分は受け入れている。
だが同時に、圧倒的な財力を前にしても、いくらそのゼニをばら撒いても、学べない奴は学べないのだとも思った。
彼等は 『酒の
せい
にして
人を
飲むだけ。』
当然の如く、そんな人達はこの不景気の波にさらわれて消えて行った・・・。
だが圧倒的な財力を持ちながら、尚且つ人としての常識や観念を捨てない人間も居る。
どんなにチヤホヤされても傅かれても、真実を見ようとする。
そんな人はこの波を乗り切り、今でもそれなりに過ごしている。
酒は酒と割り切りながら。
彼(地元ぱぱ)は後者の客と言っていい。
その代わりこういうお客様は掴むのに苦労する。
恐らく私のオミズ人生の中で、難易度が最も高かった人であろう。
とっかかりは向こうの一目惚れだったから若干有利ではあったが、彼にとっての私のポジションを、『
失いたくない人間
』に築き上げるまでが大変だったのだ。
色抜きの作業も大変だった。
彼の為に店との喧嘩も沢山した。
彼とも喧嘩を沢山した。
商売ではなく、だが商売精神は捨てず、本当の心でぶつかり合った。
私生活の時間も概念も、ある時期は捨てて彼と接した。
その甲斐あってか、今でも彼は私の傍を離れない。
地元からミナミは距離があるのに(そう。私は遠方だが通っている。)、
月に一度は飲みに来てくれている。
『俺を本当に接待出来るのはお前だけや。』そう言いながら。
私が地元を退く時も、私への義理で(詳しくは長くなるから書けない)地元で私の為に飲んでくれると約束してくれていた・・・。
それなのに・・・・。
私が地元に居る時も、1ヶ月で私の年収を飲んでいた程の客だったのに。
時代を景気を越えたお客様に、何て事をするんだ・・・。
『二度と行かない』
この言葉を聞くのが、私にとってはたまらなく辛い。
そのお店が可哀想だとかそんな事は思わないのだが、自分のしてきた事への何パーセントかが無駄にされた思いと、何よりもお客様がその言葉を発する気持ちを思うといたたまれない。
彼等が何の痛みも無く、その言葉を出していると思うのだろうか?
その言葉を受け流せる、すまないとは思わない、店側のその神経を疑う。
普通の人間関係なら許されるのかも知れないが、ビジネスである以上、その言葉を出させてしまうのは絶対に許されない。
金銭をキッチリ納めている以上、受け取っている以上、失格だ。
私はうんうん、と話を聞きながら、涙を流していた。
察したのか、ぱぱの口調が和らぐ。
電話を置き、休肝日だがワインを開ける。
眠りたいから、少し飲む。
マズイ酒だ、
そう思いながら。
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