オミズの花道
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『非・日常の快楽』
2002年12月07日(土)


金曜日は忙しかった。
何だかやっと12月という感じがしてきたなあ。


頼んでいた着物が仕立てあがって来たので着付け。
いやこれが中々にインパクトがあって好評であった。

お姉ちゃん方も黒服さんもママも沢山沢山誉めてくれた。嬉しい。
お客様にも好評で、沢山お声がかかっちゃったりしたのだね。感謝。



今年の頭まで着物は素人に近かったのだが、
最近は呉服屋に感心されるほどに上達した。

もともと私は広告デザイナーだったので、
普通の人よりは色に鍛えられているせいもあるのかも知れない。



この頃は自分で反物を探し出して来て、別の所で仕立てて貰う。

仕立ての価格に差が大きくあったり、腕の違いがある・・・というのもその原因だが、
大概の理由は気に入った物が別の所にあったりする、なんて理由が殆どだ。

殊に今回は『この帯が欲しい』と思って買った黒地の帯に合わせて、
別の店舗で見かけた反物を購入した。

反物の段階で、帯を買った所の呉服屋に持って行ったのだが、
それが妙に気に入ったらしく(笑)自分の所でも製造元に問い合わせて仕入れていた。

こういう勉強家で意欲的な呉服屋は、この景気と言えど生き残るよな。偉い。



帯は黒地と言っても細かい七色の模様と金糸が混ざったもの。
・・・・と、書くと派手そうに思うのだがそうでもなく。
お見せできないのが残念なくらい、上品で優雅で綺麗な帯だ。

この帯は不思議と他の着物にも良く合って、
前述の極妻仕立ての真っ白な着物に合わせると、
近寄りがたいほどクールな仕上がりになる。


今回は花浅葱色に牡丹の花が抑えた色で描いてあり、
絵の縁が虹彩仕立て(銀箔加工。でも色は金。)で入っている反物を選んだ。

八掛の部分(歩くとチラッと覗く部分)にも虹彩で牡丹が入っている。ちょっと粋。
この模様、後ろには柄が無いので後姿は無地のよう。帯が映えて丁度いい。


この着物は同じ寒色なのに、白い着物と違って不思議と柔らかくなる。
うん、中々に良い物になった。



私はミナミの皆と違って最初は呉服屋さんで着付けて貰うのだが、
呉服屋さんってばその時必ず私の着付けが終わるとカメラを構える。
なんでもファイルに残しておくそうだ。どうでもいいが何に使うのだろう(笑)。



さて、ミナミには『よねくら』という和風スナックがある。
着物のみならず芸奴姿のお姉さんも表に立っていて、ちょっと興味を惹く。

そこのお姉さん方はさすがに着物にはうるさい。
スーツ姿には目もくれぬが、こちらが着物を着ていると、
全身舐め回すように見られてしまう。



昨日は運悪くタクシーが通り過ぎるのを避ける為に立ち止まったら、
よねくらの前に立つお姉さんとバッタリ。

ドキドキしながら黙って歩けるようになるまで待っていたら、
『あら、それ・・・ええ取り合わせやね。どこで見立てたん?』と話しかけられた。
実に光栄である。

ちょっとだけ着物に関するお話を伺ったあと、お店へ向かった。


・・・・何だかさっきより胸を張って歩いている自分がいる。
頬に当たる風も、少し優しくなったようだ。




世間の人がどう思っているかは知らないが、
私はこういう華やかな部分を持つこの仕事が好きだ。


着物にも色々あるけれど、水商売の着物は日常生活では着れない物が多い。
派手な柄や色。所謂『玄人』の着る物だ。


だがこの仕事には、この姿勢が必要不可欠なのだ、としみじみ思う。



普通の格好をして酒を注ぐならば、高いお金を戴く資格は無い。
お客様が味わうのは、酒だけではないのだから。

いかに雰囲気に酔わせ、同じ酒だがここで飲むと美味い、と飲ませるか、だ。



良く人は水商売を称して 『色を売る』 だとか、『ステイタスを売る』 だとか言う。
色んな考え方やスタイルがあるから、きっとどれも正しいのだろう。



だが私個人としては、水商売とは 『非・日常を売る仕事』 だと思っている。



その非・日常の空間に、
お客様を引きずり込み、酔わすために、私達が存在するのだと思う。

その為には、
引退してからは着ることが出来ないであろう柄の着物も、必要なのだと思う。

そう・・・見た目を飾るのも、非・日常を成り立たせる手段の 『一つ』 。



この非日常に、男にとっても女にとっても麻薬のような物の存在があるのだ。
とても言い表し難く、灰色で曖昧な麻薬なのだけれども。






和服を着て出勤前のネオンの海を泳ぐ。


「よくぞ女に生まれけり」 
と、つくづく幸せを噛み締める瞬間だ。



好いた男の腕の中でくつろぐよりも、

どんな大物に口説かれている時よりも、

四肢にまで満たされた快楽を感じて仕方がない。




まさに至福の時。

女であることの喜び。

それを実感する。




女という生き物は、
これまた何とも摩訶不思議な生き物である。
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